別府をぶらり。ノスタルジックに浸かる!|花井悠希の「この街この駅このパン屋」


2023.02.03

Hanako.tokyo

ヴァイオリニストの花井悠希さんがお届けする、新しいカタチのパン連載。1つの駅、1つの街にフォーカスを当て、ここでしか出会えないパン屋さんを見つけていきます。「寒い、寒い」が口癖になってしまう季節。こうも寒いと、どうにも温泉が恋しい。そして温泉が恋しくなると、一度はこの街を思い浮かべてしまうのではないでしょうか?そう、「別府」です。今回の街…別府「別府駅」から散策スタート!駅前広場には、早速温泉に触れられるスポットが。浸すよねぇ。大分空港からバスに乗り、別府湾を眺めながらバスに揺られていると、1時間弱の旅もあっという間。別府に降り立つと、その瞬間にどこからともなく温泉の香りが。それだけでほかぁ…とした気分を届けてくれるのだから温泉は偉大です。「別府へいらっしゃい」と歓迎を受けている気分にしてくれますね(ポジティブ)。海岸線のバス停を降り、まっすぐ進めば別府駅に到着です。1軒目〈友永パン屋〉大正5年創業!無事にパンをゲットできて、マスクの下の顔はホクホクです。雨や日差し避けでお店には傘がスタンバイ(ありがたや…)。歴史を感じる店内が素敵。別府で出会う人におすすめのパン屋さんを聞くと、みなさま口を揃えて教えてくれるのが〈友永パン屋〉。調べると、駅から徒歩10分くらいの位置にあります。そうと聞けば、いざ出陣だ!足取り軽く向かうと店の前には人だかり。うわさには聞いていたけど、すごいぜ。
土曜日ということもあるのか、お店の前をぐるりと曲がり、ざっと30人ほどは並んでいました。整理券を受け取り、列の最後にイン。人気店ゆえにお店の方のオペレーションはばっちりで、列の長さの割にサクサクと順番がまわってきました。「バターフランス」バターの核心!まずは観察から。最高です!すぐ食べるか聞いてくれて、「食べる」と答えると焼きたてのものを渡してくれました。早速「バターフランス」をいただきます。一口食べたら、ふかーっと包まれる。なんですかこの心地よく抜ける食感は!ふわふわでもちもち、だけど空気が抜ける道は細かくて、はむっと大きく頬張るとふかーっと繊細に抜けていくのです。
柔らかくしっとりとした口当たりに、真ん中に位置するバターゾーン、塩気が効いた塩ゾーン、底のバターカリカリゾーン(ネーミングが雑)がそれぞれ炸裂してくるから、どうしよう私、錯乱しそう(危険)!バターカリカリゾーンの底にはじゃりっとした砂糖があり、カラメルのような甘さがニヤリとドヤ顔をするから、ああもう平伏しちゃうよね。恐れ入りました。左から「ワンちゃん」「チーズフランス」クリームパンは2種類あり、こちらは濃厚カスタード。「チーズフランス」この時代に100円代で買えるパンがあるなんて素晴らしい!ゆるいかわいさにつられた「ワンちゃん」は翌日に。冷えても生地がおいしいな。繊細な空気の抜けも健在です。そこにたっぷりのクリーム。甘さがしっかりでとろとろなクリームは懐かしさもありつつ、どこまでもクリームに柔軟に寄り添う繊細な生地は懐かしいだけには収まらない、〈友永パン屋〉のキャラクターが光ります。
「チーズフランス」は分厚い体、密度は高いのにふかふかでこれまた気泡が細かくて繊細な軽やかさがあります。「繊細」って何回言うんだと突っ込まれてしまいそうだけど、食べたらきっとあなたも言いたくなるはず。内側に閉じ込められたナチュラルチーズはクリーミー。ぬっとりと生地のそれとは違う歯切れと口溶けで全体を導きます。これは出来立てを食べたらさらに違う感想になりそう!他にも別府のパン情報をちゃっかりゲットしたので、駅前のなんとも惹かれる商店街(!?)で見つけたパン屋さんと合わせて、まだまだパン巡りは続きます。2軒目〈オニパンカフェ〉ノスタルジックな商店街に突如現れた、おしゃれなパン屋さん。温かみのある店内。スタッフの方も優しい。由布院に本店があるパン屋さんの別府店。こちらは天然酵母を使い、具材も自家製にこだわって作られたパンがいただけます。別府駅の高架下〈べっぷ駅市場商店街〉をうろうろさまよっているときにたまたま見つけました。お散歩した分だけこういう出会いがあるから、街歩きって楽しい。「塩バタークッペ」パリパリ、ペキペキな表面が楽しい。表面パリパリ。餃子の皮のような薄さの皮は「パリン」と軽快な音を立て、ペキペキと割れます。塩バターと名前がついているだけあって、全体の塩気が心地よい。表面のパリパリから内側へ進むと歯切れが良く、ふくよかな押し返しと共に塩気が出てきて、夢中でムシャムシャ。荒々しさのないグリッシーニのような、クセがなく小麦のドライな香ばしさが楽しめて、サクサクとテンポ良く食べてしまいました。地元の方に〈友永パン屋〉以外のおすすめを聞くと、少し駅から離れたお店を教えてもらいました。リコメンドしてもらったパンをねらい撃ち!3軒目〈あしながおじさん〉地元で有名な洋菓子屋さん。こんがりいい色!色とりどりのケーキが並ぶ洋菓子屋さんで、地元の方に人気なのがこちらの「スイートポテト」。私の中でパイはギリギリパンということでカウントさせてください(強引)!
帰りの車内に漂う香りがすごいといううわさは聞いていたのですが、うわさに違わぬこの香り。香りからして“おいしい”がダダ漏れです。「スイートポテト」さつまいもの繊維感がいきてます。パイのボートは2日経っても(やらかしました)サックサクで、温めればバターの風味がぷんぷん。時間が経っているのに(ごめんなさい)、なぜだか油っぽさは感じません。そこに黄金色したさつまいもフィリングが焼き芋のようなホクホクさを弾ませながらお芋の旨味をきゅっと届ける。サクサクボートが味の輪郭を縁取って、消えゆくその瞬間までバターの風味でしっかりお見送りしてくれました。4軒目〈おひげのぱんやさん〉「かぼちゃあんぱん」高鳴る瞬間!とろーりクリーム。あんパンも人気。「かぼちゃ好きなら、ぜひこちらの『かぼちゃあんぱん』を!」と熱烈な推薦をしていただきました。このまばゆい彩度の黄色、元気になりますね。餡子というよりは濃ゆいかぼちゃクリーム。もったり・まったり・のっそりの質感3段構えのクリームは、なめらかな口当たりなのに遠くの方でそっと囁くのです。かぼちゃの裏漉しされた繊維質たちが「ざらりざらり」と(「ざわわざわわ」のように)、かぼちゃ好きのポイントをしっかりおさえてきます。かぼちゃのまろやかな甘みからクリームのミルキーさが溢れ出てきて、しっとりとしたパン生地はというとクリーム達の守り神。寄り添い、クリームのキャラクターを守りながら1番の応援団長を務め上げておりました。別府駅に隣接した〈べっぷ駅市場〉。〈野田商店〉のとり天は、生姜の効いた甘めの味付けでついつい食べたくなる。温泉といったら!ホームにも湯けむりを発見。温泉の香りで歓迎されて(と思っている)、少しお散歩すると、気軽に立ち寄れる日帰り温泉があったり、硫黄の香りを強く感じたかと思ったら道の端で沸々と湧き上がっていたり、温泉の街にきた実感を至る所で感じられる街。心なしか別府は体感温度が少し高いような気がします(花井調べ)。〈べっぷ駅市場商店街〉には、おいしいお惣菜が並ぶ〈野田商店〉をはじめ、味のあるお店が昔の面影を残したまま立ち並び、ノスタルジックな景色に出会えるのも別府の見どころの一つ。THE温泉街といった景色とはひと味違う、生活のそばに温泉がある風景は別府ならではな気がします。駅のホームで見つけた「またお越しください」のメッセージを間に受けて、再訪を誓いました。花井 悠希 ヴァイオリニスト三重県出身。三重県四日市市観光大使。3歳よりヴァイオリンを始める。 2010年4月21日コロムビアよりデビュー。〈1966カルテット〉メンバー。http://columbia.jp/hanaiyuki/ 

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有限会社友永パン屋
place
大分県別府市千代町2-29
phone
0977230969
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