陶芸家・市川孝さんに聞く、器とお茶の密な関係。『作りたいのは、おもしろいと気づくスイッチを入れる道具』


2022.05.03

Hanako.tokyo

近ごろ、お茶にまつわる道具を作る陶芸家が増えている。魅力に開眼した作り手の作品を通して、使い手が茶の魅力を知る。そんな世界を広げてくれる器づくりについて聞いてみた。京都・八瀬のホテル〈moksa〉に常設された茶車で、お茶を淹れる市川さん。蚤の市で手に入れた古い三輪車がベースの“茶ンリン車”。今後、イベントでも使われる。食事のための器から、お茶にまつわる道具、炉や蒸留器まで。食、茶、そして暮らしを楽しむための、あらゆる道具を作る市川さん。存在感ある佇まいと実用性を兼ね備えた作品は、知ればたちまち虜になる人が続出する人気ぶり。その市川さんを語るうえで欠かせないのが、道具一式を収めた移動式の茶箱・茶車だ。急須や茶杯など、白い器は磁器。焼締の器は滋賀の南部、甲南の土を使用。「ものを作るうえで一貫してあるのは、ゆらぎ。いい意味のいい加減さというか、作り込まず余白を残すことで、ほかの空間に持ち込んだときにもなじむんです」独立当初は「こころの旬」を大切に、器づくりから始めたという市川さん。2007年の、茶人・李曙韻さんとの出会いが大きな転機となる。「初めて台湾茶を飲んだとき、味わいの変化に驚き感激しました。そこから道具を作り始めましたが、李さんのお茶の自由さを知るほどに、のめり込むことに」。やがて大陸へと視点は広がり、茶器やその周りの道具づくりから茶車へ、そして茶も含めた植物を楽しむための器づくりへと進化する。「作りたいのは、おもしろいと気づくスイッチを入れる道具」。そこには世界を広げるきっかけになる作品が待っているのだ。〈moksa〉〈moksa〉は3月30日オープン。お茶、食、空間などのコーディネーションは福田春美さん。
京都府京都市左京区上高野山東山65
075-744-1001
1泊1名35,000円~(朝・夕食、サービス料込み)
全31室市川孝(いちかわ・たかし)1967年滋賀県生まれ。大学で彫刻を学ぶも陶芸の道へ。製陶所を経て森岡成好(もりおかしげよし)さんに師事。1999年独立。「植物と水と火の道具を通じ、暮らしを愉しむ心をくすぐりたい」(Hanako1207号掲載/photo : Norio Kidera text : Mako Yamato) 

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moksa
place
京都府京都市左京区上高野東山65
phone
0757441001
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moksa experience(ご朝食付)

¥23,250

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2024/05/10 チェックイン(2名1室)※1泊1名あたりの料金   更新日:2024/04/27

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