湯野上温泉
ひなびた雰囲気と渓谷美を味わいながら源泉かけ流しの湯に浸かる
茅葺き屋根の駅舎には足湯が
湯野上温泉の正確な開湯年は不明だが、由来には諸説あり、1つは奈良時代、縄張り争いで傷つき湯治をしていたサルに村人が握り飯をやるとサルが手をあわせて拝んだとする説。もう1つは猟師に弓矢で射られたサルが、源泉で傷を癒やして元気になったとする説。いずれもサルが関わっていることから、別名「猿湯」と呼ばれる。もっとも今は、サルより「茅葺き屋根の駅舎」のイメージの方が強いだろう。会津西街道の宿場町で茅葺き屋根が軒を連ねる国の重要建造物群保存地区「大内宿」にちなみ、同じく茅葺き屋根で会津鉄道会津線の「湯野上温泉駅」の駅舎が建てられたのは2002年(平成14)。「東北の駅百選」に選定され、2005年(平成17)には日本鉄道賞の特別賞を受賞している。駅舎の隣には広々とした温泉の足湯が設けられ、誰でも無料で利用できる。
雄大な大川渓谷の眺望
会津鉄道と国道121号線に沿って流れるのが大川こと阿賀野川だ。湯野上温泉に来たらこの雄大な景色を見ずには帰れない。有名なのは、湯野上温泉駅から車で約5分のところにある「塔の岪(とうのへつり)」。大川羽鳥県立自然公園(おおかわはとりけんりつしぜんこうえん)のいちばんの景勝地で、国の天然記念物である。百万年もの歳月をかけて凝灰岩が侵食、風化されてできた絶景で、奇岩怪石が塔のようにそそり立っていることからこう名付けられた。ちなみに「岪(へつり)」とは同地方の方言で「危険な崖」を意味する。また、駅のすぐ近くの渓谷にも絶景スポットが。それが「夫婦岩」だ。こちらも長年の侵食により、ひとつの岩を縦にバッサリと切ったような奇妙な形をしている。まるで夫婦のように寄り添っていることからこう呼ばれ、夫婦円満のパワースポットとしても知られている。
雰囲気や人数、目的で選べる温泉宿
湯野上温泉に温泉街が整備されたのは明治時代とされる。ただし、現在は宿の多くが交通量の多い国道121号線沿いにあり、浴衣姿で温泉街をそぞろ歩くといった風情は残念ながらない。その代わり、雰囲気や人数、目的などで選べる温泉宿が約20軒あり、「湯野上温泉観光協会」の公式サイトなどで検索できる。たとえば創業1890年(明治23)と古い「清水屋旅館」は、昭和レトロな雰囲気が漂う自家源泉の宿。「洗心亭(せんしんてい)」は、自然林に囲まれた日本旅館で、春の新緑や秋の紅葉を愛でながら川マスの温泉蒸しなどの料理を楽しめる。「すずき屋」は、デトックス効果が期待できる砂風呂が自慢の民宿。「藤龍館(とうりゅうかん)」はすべての部屋に源泉かけ流しの貸切風呂があり、誰に気兼ねすることもなくいつでも湯をひとり占めできる隠れ宿だ。一人旅、カップルや夫婦での旅、家族旅行、さまざまな用途で、自分好みの一軒を見つけてほしい。
すべての宿が源泉かけ流し
湯野上温泉は、どの宿を選んでもお湯は源泉かけ流しだ。基本の泉質はアルカリ性単純温泉。数ある泉質のなかでも格段に刺激が少なく、無味無臭のため、小さい子どもからお年寄りまで安心して楽しめる温泉だ。皮脂を溶かすアルカリ性なので美肌の湯とされ、湯野上温泉では昔から肌のただれに効くと伝えられる。泊まるのが難しければ、いくつかの宿で日帰り入浴を行っているので、ぜひ立ち寄ってほしい。今回利用したのは湯野上温泉駅からすぐそばの民宿「えびす屋」。こちらは、渓谷にせり出した男女の露天風呂が自慢貸切風呂もあるので、家族での利用も可能だ。どの貸切風呂からも、絶景スポットの「夫婦岩」を眼下に眺めることができる。雄大な渓谷美を愛でながら、源泉かけ流しの湯を心ゆくまで堪能してほしい。
スポット詳細
- 住所
- 福島県南会津郡下郷町大字湯野上 地図
- エリア
- 大内宿・南会津エリア
- 電話番号
- 0241682818
- 備考
- 電話番号:0241-68-2818(湯野上温泉観光協会)
- 泉質
- 単純泉(低張性弱アルカリ性高温泉)
- 効能
- 美肌、アトピー性皮膚炎、神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、運動麻痺、関節のこわばり、打ち身、くじき、慢性消化器病、痔疾、冷え症、病後回復期、疲労回復、健康増進
- 泉温
- 54.2℃
- 源泉数
- 7
- 湯量
- 約3000リットル/分
- 共同浴場数
- 0
- 日帰り温泉施設数
- 1
情報提供: ナビタイムジャパン