西野薬師堂・正妙寺

寺院

伝教大師作と伝わる十一面観音と薬師如来を守り継ぐ湖北の小堂

戦乱の世を超え、地域住民に大切に守り継がれてきた観音像が今も多く残る湖北エリアは、「観音の里」とも呼ばれる。西野薬師堂と正妙寺、隣接する小さな二堂のとっておきの仏像を訪ねてみよう。

写真左から、十一面観音像、薬師如来像。いずれも国の重要文化財} 写真左から、十一面観音像、薬師如来像。いずれも国の重要文化財

守り継がれた2つのお堂

西野薬師堂のルーツは泉明寺という名の天台宗の寺で、創建年や開山は不詳だが、この寺を訪れた最澄が十一面観音、薬師如来、十二神将の像を自ら刻み、安置したと伝わる。その後、天智天皇の第一皇子・大友皇子(おおとものおうじ)の血筋にあたる西野丹波守家澄が菩提寺として庇護した。湖北一帯は、織田信長と浅井長政による小谷城(おだにじょう)の戦いや信長の後継者の座をめぐって豊臣秀吉と柴田勝家が激突した賤ケ岳の戦いなど、幾度も大小の戦乱に巻き込まれた地。泉明寺の堂塔は焼失してしまったが 、仏像は地域住民によって救い出され、お堂の移転を経て守り継がれてきた。こぢんまりとした境内にはもう1つ、正妙寺という小さなお堂がある。現在、2つのお堂の拝観受付や清掃、お盆や正月のお供えなどは当番制で町内の住民が担う。堂内の拝観を希望するなら2日前までに電話予約が必要だ。

素朴なたたずまいの正面のお堂が西野薬師堂} 素朴なたたずまいの正面のお堂が西野薬師堂

十一面観音と薬師如来を拝む

最寄り駅はJR北陸本線の高月駅だが、徒歩45分ほどを要するため、琵琶湖畔のドライブを兼ねて車で向かうといい。扉を開けてもらってお堂に上がると、正面の須弥壇に伝教大師作と伝わる薬師如来像と十一面観音像が並び立つ。頭のうしろに円光(輪光)が光り、柔和な表情もどこか似ている。二体の仏像にはこんな逸話が語り継がれている。泉明寺の住持が病に臥せっていたある晩のこと。薬師如来と十一面観音が夢枕に立ち、「阿曽津郷の霊地に自生する桑樹を採りて箸となし、毎飯いただくべし。必ず病癒ゆるべし」と告げた。目が覚めた住持がすぐに使いの者に桑樹を採ってこさせ、実行したところ、たちまち快復したのだという。

向かって右の薬師如来は、薬壺をもたないことから阿弥陀如来だという説もある} 向かって右の薬師如来は、薬壺をもたないことから阿弥陀如来だという説もある

堂内向かって左側に安置されている十二神将の辰神} 堂内向かって左側に安置されている十二神将の辰神

堂内向かって右側に安置されている十二神将の巳神} 堂内向かって右側に安置されている十二神将の巳神

千手のみならず、千足を持つ観音様

西野薬師堂に向かって右手に立つのが正妙寺。かつて琵琶湖の大津波により湖底に沈んだ「阿曽津千軒」という集落の住人たちがここ西野をはじめとする7つの村に移住したといい、その折に救い出された観音像を安置するためお堂を建立したのが寺の始まりだ。堂内では、千の手をもつ千手観音ではなく、千手に加えて千の足ももつ「千手千足観音像」に注目。両脚の脇からそれぞれ19本の脚が扇状に伸びた珍しい観音像で、すべての人をあらゆる方法でどこまでも助けに来てくれるのだという。ほか、境内には長年人知れず小川の橋板となっていたというお地蔵様や、古墳群に関係するものとも考えられる「謎の珠石」、西野丹波守家澄ゆかりの「力石」も。知らなければ通り過ぎてしまいそうなほど素朴なお堂だが、間近で仏像とじっくり向き合い、観音の里の真髄に触れられる特別な場所だ。

西野薬師堂の境内に立つ正妙寺。拝観料は2堂あわせて500円} 西野薬師堂の境内に立つ正妙寺。拝観料は2堂あわせて500円

正妙寺の堂内に安置されている千手千足観音立像。現本像は江戸時代の作} 正妙寺の堂内に安置されている千手千足観音立像。現本像は江戸時代の作

写真左が西野薬師堂、右が正妙寺の御朱印。各200円} 写真左が西野薬師堂、右が正妙寺の御朱印。各200円

スポット詳細

住所
滋賀県長浜市高月町西野 map map 地図
電話番号
09089386369
時間
9:00-16:00(12:00-13:00は休み)
休業日
[4/1-11/30]月、火
※12/1-3月末は休館
料金
[拝観料]500円(2日前までに要予約)
駐車場
あり(8台)
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
不可
滞在目安時間
30-60分

情報提供: ナビタイムジャパン

アクセス

map map 地図

最寄り

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