日中線記念館
日中線にまつわる数々の資料を展示した記念館
日本の鉄道の歴史の一部を知ることができる
県道333号線を三ノ倉高原方面に走っていると、見通しのよい場所から赤い屋根が見えてくる。熱塩温泉にほど近い、県道から20~30m入ったところに建てられているこの建物が旧熱塩駅だ。この駅舎が「日中線記念館」で、日中線が廃線になる前の貴重な資料が残されており、建物は2009年(平成21)に近代化産業遺産に認定された。熱塩駅が建てられたのは1938年(昭和13)、当時としてはまれなヨーロッパ風の建物で、現在でも建築間取りとしては珍しいメートル法を採用して建てられている。当時の「待合室」「駅員室」を展示室として開放し、さまざまな資料を展示している。
明治時代から続いた鉄道建設の運動
日中線は栃木県今市市から会津若松市、喜多方市を通り、山形県米沢市に至る東北中央縦貫鉄道「野岩羽(やがんう)線」の一部区間として、この地方の教育や文化、経済発展に大きな役割を果たしてきた。鉄道建設の運動は明治時代半ばから始まったとされており、その念願が叶って、1936年(昭和11)に喜多方駅と熱塩駅間の11.6kmの建設にいたった。完成は1938年(昭和13)8月18日で、住民に歓喜の声をもって迎えられたという。その後も米沢駅までの延伸が計画されていたが、日中戦争の激化や第二次世界大戦への突入などで、鉄道の建設は止まってしまった。戦後再び建設運動が進められたが、社会情勢の変化や国鉄の再編が始まり、国鉄再建法により1981年(昭和56)に第一次特定地方交通線(廃止対象路線)に指定され、1984年(昭和59)3月31日で廃線となってしまった。この日は開通以来、沿線住民の足となって親しまれていたSLや日中線との別れを惜しんで、約2500人が熱塩駅を訪れたという。
資料として貴重な駅舎内展示室
熱塩駅が記念館として出発したのは廃線翌年の1985年(昭和60)だ。廃線時、駅舎は荒廃していたため、国鉄より譲り受けた喜多方市が原型を保ちながら修理し、現在にいたる。記念館に入ったら、まずは当時の「待合室」に入ってみよう。使い込まれたベンチも利用し、壁一面に新聞記事や運行当時の写真、もくもくと煙をあげて走るSLの写真などが展示されていて、日中線が住民の足として活躍していた当時の様子をうかがい知ることができる。隣の展示室では、駅や列車で実際に使われていたさまざまなものを見ることができる。駅舎やプラットホームを照らした電灯、列車に取り付けられていた行先表示板、単線区間で使われていた通票、当時の駅員の制服など、興味深い展示物が並ぶ。乗車券箱では、来館記念として喜多方までの切符を、当時使われていたデザインで購入できる(1枚100円)。ぜひ、購入しておきたい。
保存状態のよい除雪車と客車も見ておきたい
駅舎内の展示室を見たら、野外の展示を見にいこう。駅の改札を出ると右手に黒い車両が見える。雪国の鉄道では欠かせない除雪車だ。車両先頭部分で線路上に積もった雪をかき分けながら、左右側面に付いている羽のような部分で周りの雪を跳ね飛ばし除雪していく。この除雪車の奥には当時使用されていた客車も展示されている。ひもを編んで張られた荷物棚、使い込まれた木造の座席を見ると、昭和の時代にタイムスリップした感覚に陥る。駅舎の左手に行くと、当時の踏切が残されており、線路跡が舗装道路に生まれ変わっている。この道路を喜多方方面に進むと右手に転車台跡が見えてくる。この転車台は水をためて水の浮力で機関車を回転させる方式だったが、人力作業であったためあまり使われなかったといわれている。喜多方市街地のしだれ桜並木とあわせて、日中線の歴史をたどりに足を運びたい場所だ。
スポット詳細
- 住所
- 福島県喜多方市熱塩加納町熱塩字前田丁602-2 地図
- エリア
- 喜多方エリア
- 電話番号
- 0241245323
- 時間
- 9:00-16:00
- 休業日
- 月、12/29-1/3
- 料金
- [入館料]無料
- 駐車場
- あり(10台)
- クレジットカード
- 不可
- 電子マネー/スマートフォン決済
- 不可
- Wi-Fi
- なし
- コンセント口
- なし
- 喫煙
- 不可
- 滞在目安時間
- 0-30分
情報提供: ナビタイムジャパン