総曲輪通り商店街

富山市中心部のアーケード商店街、イベント広場では歓声が上がる

富山市中心市街地にある総曲輪通り商店街は、同市の顔ともいえる商業エリアだ。その賑わいと商店集積地としての歴史は130年近くあり、再開発で新たな賑わいを生み出す試みも、たゆまず続いている。

1953年(昭和28)に設けられ、1989年(平成元)に大改修したアーケードが延びる

総曲輪通り商店街は、西町と中央通りを含めた富山市の中心3商店街の中核的存在である。大和富山店が入る再開発ビル「総曲輪フェリオ」から西武百貨店跡を再開発した「ワクル総曲輪」(SOGAWA BASE)まで、長さ260mの通りに商盛会加盟専門店40店が並ぶ。床にグレーのタイルが敷き詰められた落ち着いた雰囲気のアーケード内は、11時から22時まで車の乗り入れが禁止され、安心してショッピングを楽しめる。賑わい創出の要は、277インチの巨大スクリーンを備え、ガラス屋根に覆われた広さ約1400平方メートルの全天候型イベント広場「グランドプラザ」だ。総曲輪フェリオ横にあり、冬季には特殊樹脂パネルを用いてスケート遊びを楽しめる「エコリンク」を開催し、シーズン中に約1万5000人が訪れる人気を呼んでいる。

休日には大勢の人で賑わうストリート。天候に左右されず買い物を楽しめる

「グランドプラザ」でスケートに興じ、歓声を上げる子どもたち。ほかにライブや飲食イベントなども開催される

通りには、若者やOL層をターゲットとしたセレクトショップをはじめ、雑貨、眼鏡、宝石店など多彩な店が並ぶ。地産地消をテーマに農家が直接販売する店として2010年(平成22)に開業した「地場もん屋総本店」は、新鮮な野菜や果物が割安で手に入ると人気を呼び、客足が絶えない。中央通りにつながる角地にある「ワクル総曲輪」(SOGAWA BASE)は、倉庫や市場をイメージ。1階に飲食店が集合し、富山県産の食材を楽しめる食のテーマパークとして話題だ。ほかにネット販売に注力して全国的な知名度を高めた「CRISPIN」(松井政治靴店)や、和牛のうまさを売りにしたハンバーガーショップ「SHOGUN BARGER」など、個性的な店も目をひく。また、1938年(昭和13)に創業し「Parade」の店名で全国に約50店舗を展開する靴専門のチェーンストア「ワシントン靴店」は、この総曲輪通り商店街が出発点だ。残念ながら創業1号店は通りから姿を消したが、ここから全国へ飛躍する夢を叶えた歴史は消えていない。

富山市近郊の農家が、新鮮な野菜や果物などを直接販売して人気を呼ぶ「地場もん屋総本店」

クラフトビールバー、カレー、パスタ専門店などの入る「SOGAWA BASE」1階フロア前

商店街の誕生は、1895年(明治28)にさかのぼる。一帯は富山城の外堀を埋め立てた場所で、浄土真宗大谷派と本願寺派の東西、両別院の門前町として発展を遂げてきた。昭和後期の最盛期には商盛会の加盟店数が100店に達したという。しかし、次第に郊外型のショッピングセンターなどとの競合が激化し、中心市街地の活性化が求められるようになった。富山市は2007年(平成19)、全国に先駆けて国から活性化計画の第1号認定を受け、同年中に大和富山店を核とする複合再開発ビル「総曲輪フェリオ」とイベント広場の「グランドプラザ」が開業する。さらに、2019年(令和元)には西武百貨店富山店跡が、分譲マンションと商業施設が入る複合再開発ビル「ワクル総曲輪」(SOGAWA BASE)に生まれ変わった。今後も複数の再開発計画が周辺を含めて進行中で、さらなる進化を模索する動きが続いている。

和牛パティが人気のハンバーガーショップなど、個性的な店を巡る街歩きもおすすめ