黒島天主堂
潜伏キリシタンの信仰が息づくレンガ造りの教会
黒島の中央にそびえる信仰のシンボル
黒島港から東南に向かって30分ほど歩くと現れるレトロなレンガ造りの教会が、カトリック長崎教区の黒島教会だ。黒島天主堂と呼ばれることが多く、潜伏キリシタンの信仰の歴史を刻む黒島で、今なお信者の祈りの場となっている。レンガ造りをメインに、木造、切妻造、瓦葺きの建築方法を生かした設計の三廊式バシリカ型教会堂だ。間口15m、奥行32.6mで、同じく明治に建てられた国内の教会に比べても規模が大きい。まず、バラ窓が目をひく正面や、ブラインド・アーケードや装飾目的のみのブラインド・アーチが設けられた壁面をもつ外観を楽しもう。四角錐の形をした屋根のある鐘塔が見下ろす入り口から内部に入ってみると、柱列によって3つのスペースに分けられた三廊式(身廊部と2つの側廊部)の落ち着いた空間が広がっている。
神父と信徒の血と汗で完成した世界遺産
1998年(平成10)に国指定重要文化財となったのを皮切りに、2007年(平成19)に世界遺産暫定リストへの追加が決定。2016年(平成28)に世界遺産の国内推薦候補となった。レトロな雰囲気の教会および聖堂で、外観はロマネスク様式のシンプルなデザインを採用。世界文化遺産「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」の構成資産のひとつ「黒島の集落」にそびえる明治期の天主堂だ。黒島のほぼ中央に建てられた、島民のカトリック信仰の結晶である。内部空間のリブ・ヴォールトによる天井様式の完成度は、高く評価されている。歴史的に高い評価を集める黒島天主堂は、1897年(明治30)に赴任したフランス人のマルマン神父が創建。神父の指導を受けながら島民の信徒たちは献金や奉仕に励み、1902年(明治35)に聖堂が完成したといわれている。
工夫を凝らした建築技法の見どころ
アーケード、トリフォリウム、クリアストーリーの三層構造で構成された身廊部や、天井のリブ・ヴォールトは黒島天主堂の精華だ。特に天井は、貧しさのため上質の材木が手に入らなかった黒島の信徒たちのアイデアで、豪華に見える蝙蝠(こうもり)天井とも呼ばれる様式を採用したうえ、櫛目引きと呼ばれる技法を使っている。1902年(明治35)の完成当時、レンガ造りの教会は全国に17棟しかなかった。4番目に古い黒島天主堂は、長崎にある国宝の大浦天主堂と同じ三層構造となっている。建築技術の水準が高くなかった当時は単層構造が主流だったことを考えると、最先端の技術を使った教会といえるだろう。また、レンガ造りに使用されたレンガの数は40万個ともいわれていて、そのほとんどが島外から取り寄せたものである。
手先が器用だったマルマン神父
マルマン神父は、資金調達のために一度フランスに帰国している。滞在中、現在天主堂に飾られているステンドグラスやアンジェラスの鐘、聖人像などの多くを購入して持ち帰ったといわれている。また、手先が器用だったマルマン神父は、天主堂の内部にある説教壇や洗礼台、シャンデリアを製作したと伝えられている。豪華な造りの天主堂だが、もともと堂内は畳敷きだった。現在、礼拝椅子のあるフロアは絨毯敷きだ。また、祭壇の床には有田の松尾窯業作の磁器タイルが貼られているほか、基礎部分には黒島特産の御影石が使われているなど、長崎らしいユニークな建材が選ばれている。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン