萩城下町

なまこ壁が美しい菊屋横町

日本の歴史に燦然と名を残す毛利家の名城「萩城」

戦国時代、西日本で勢力を誇る112万石という大大名だった毛利家だが、関ヶ原の戦いで西軍総大将を務め敗戦したことから減封。新たな居城として築いたのが萩城だった。1604年(慶長9)に毛利輝元が未完のうちに入城しているが、正式な完成は1608年(慶長13)。以来約260年間、萩は長州藩の城下町として繁栄した。日本海に向かって突き出した指月山に天守が造られた山城。三方を海が囲む要害として優れていたため選ばれた地だ。山麓には居館と政庁として本丸・二の丸・三の丸の平城を設け、連なる東側に城下町を建設した。1873年(明治6)発布の廃城令で壊され、現存は石垣や堀のみとなっているが、春には桜が咲き誇る美しい指月公園として整備されていて、萩観光に欠かせないスポットとなっている。

まっすぐに延びる小径は当時と変わらない

当時の町筋そのままに城下町の面影が残る堀内地区

萩は当時の雰囲気を色濃く残す日本有数の城下町で、旅番組やテレビCMのロケ地としてもたびたび登場する。大河ドラマ『花燃ゆ』の舞台であったことも記憶に新しい。2015年(平成27)7月には、世界遺産「明治日本の産業革命遺産」の構成資産のひとつ「萩城下町」として登録されたが、これは「萩城」「旧上級武家地」「旧町人地」の3要素から構成されるもの。このうち萩城の三の丸にあたる旧上級武家地は「堀内地区」とも呼ばれ、藩の諸役所や上級藩士の屋敷があった場所だ。武家屋敷が立ち並び、往時の面影をとりわけとどめていて、「古地図でそのまま散策できる」といわれるほど古い町並みをきれいに残す。町角から侍が現れてもおかしくないような風景のなかを歩けば、まさにタイムスリップしたような気分になれる。

堀内地区は旧萩城三の丸にあたる

歴史的見どころが満載の萩城城下町

一方、「萩城城下町」とも呼ばれる旧町人地は、旧上級武家地の東側、萩城の外堀を渡ったところから碁盤の目状に広がっている。城の総門から東の延長上にある呉服通(旧御成通)には、豪商の江戸屋・伊勢屋・菊屋が並んでいた。3つの横町にそれぞれの商家の名がつけられている。最も有名なのが純白のなまこ壁がひときわ目をひく「菊屋横町」。「日本の道100選」にも選ばれ、天気の良い日には太陽の光が壁に反射しまぶしいほど白く輝く。幕末の風雲児・高杉晋作の誕生地や、第26代総理大臣の田中義一の誕生地も残っている小道だ。対照的に「江戸屋横町」は黒板塀が続き落ち着いた雰囲気。中・下級の武家屋敷が残り、青木直弼の旧宅、高杉晋作や伊藤博文らが学び遊んだとされる大きな天狗の面がある円政寺もある。必見は木戸孝允の旧宅。明治維新に尽力した「維新の三傑」のひとりで、薩長同盟を結び、桂小五郎の名でも知られる。江戸に出るまでのおよそ20年間暮らした家には、幼少期の書を表装した掛け軸や写真などが展示されている。

木造瓦葺き2階建の木戸孝允旧宅

古民家カフェやお土産店巡りも楽しめる

歴史的な名所・旧跡だけではなく、有名な陶芸品「萩焼」をはじめとしたお土産店、古民家をリノベーションしたカフェなど、ふと立ち寄ってみたくなるスポットもいっぱいある。着物がレンタルできるカフェもあるので、和服姿で情緒ある町並みを散策しながら記念撮影すれば、旅の良い思い出を作れるはずだ。ゆったり説明も聞きながら巡るには人力車もおすすめ。また、町歩きを始める前に新スポットの「萩・明倫学舎」を訪れるのも一考。藩校跡に1935年(昭和10)年に建てられた日本最大の木造校舎で、2014年(平成26)3月までは実際に小学校として使われていた。2017年(平成29)3月に萩の歴史・文化・自然を紹介する施設としてオープンし、「世界遺産ビジターセンター」や「幕末ミュージアム」を併設。あらかじめ知識を得ておけば、散策はもっと楽しくなるはずだ。

景観を楽しみながら散策しよう

黒板塀の風情ある小径

藩の財政整理や岩国吉川家との交渉に尽力した旧佐伯丹下家屋敷