白鬚神社

国道161号線沿いに面する白鬚神社

琵琶湖に面した近江最古の社

JR湖西線の近江高島駅から南へ約2㎞。国道161号線に面した琵琶湖の雄大な景色が広がる場所に社殿が鎮座する。白鬚神社は近江最古の社で、地元では「白鬚さん」の名で親しまれている。創建以来2000余年の歴史を誇り、現在の社殿は豊臣秀吉の遺命によって、秀吉の息子・秀頼が片桐且元(かたぎりかつもと)を奉行として造営した。祭神の猿田彦命(さるたひこのみこと)は 導きの神として知られ、神社に祀られている姿が白髪で白い鬚を蓄えた老人であったことから社名の由来にもなっている。延命長寿のほかにも、縁結び・子授け・開運招福・学業成就・交通安全・航海安全など、さまざまなご利益を授けてくれる。

神社の背後の山から境内全体を見渡す

神社のシンボル的存在・湖中大鳥居

境内で本殿を参拝したあと、琵琶湖側に振り向くと湖に浮かぶ朱塗りの大鳥居が目にとまる。遠くに見える琵琶湖最大の島・沖島を背景にたたずむ姿は広島県にある世界遺産・厳島神社と見間違うような、絵になる風景。現在の鳥居は1981年(昭和56)に建立されたものであるが、室町時代の屏風絵「近江名所図」や白鬚神社の縁記絵巻にも湖中の鳥居が描かれていることから、この景色を一目見に昔から多くの人が神社に訪れていたのだろう。昼間の景色もすばらしいが、夕刻頃の光景がまた格別。ぜひ、さまざまな時間帯で大鳥居を眺めてほしい。

現在の鳥居は1981年(昭和56)に建てられたもの

本殿は重要文化財に指定

境内には著名な歌人が残した歌碑・句碑が多数

本殿・拝殿の背後にある石段を登った先にある歌碑は、源氏物語の作者・紫式部が詠んだもの。そこには「みおの海に　網引く民のてまもなく　立ちいにつけて　都恋しも」という歌が記されている。これは越前国主となった紫式部の父、藤原為時(ふじわらのためとき)に従って越前に向かう途中、三尾崎(白鬚神社のある岬)の浜辺で漁をする見慣れない光景に都の生活を恋しく思い詠んだものとされている。ほかにも俳聖・松尾芭蕉(まつおばしょう)が47歳のときに琵琶湖の美しい風景を詠んだ句碑など、著名な歌人が残した歌碑・句碑が境内には多数。じっくり参拝して歌に思いを馳せてみてはいかが。

紫式部が詠んだ歌碑

松尾芭蕉の詠んだ句が記された句碑