白鳥庭園

中部地方の地形に見立てた名古屋最大級の日本庭園

熱田神宮のすぐ近くに、本格的な日本庭園がある。中部地方の地形をモチーフにした「白鳥庭園」。四季折々の美しい景色に魅せられ、リピーターの観光客も多いという名古屋屈指の癒やしスポットだ。

園西側の高台から望む白鳥庭園の全景

熱田神宮最寄りの地下鉄名城線熱田神宮西駅から徒歩約10分の白鳥庭園。住宅街を抜け、堀川に架かる橋を渡れば北門が近いが、庭園のコンセプト上、ぐるりとまわって正門からの入園をおすすめしたい。有料駐車場はどちらの門側にも用意されている。ここはもともと江戸時代から続く貯木場だったが、1989年(平成元)に開催された世界デザイン博覧会のパビリオンとして日本庭園を整備。その2年後に現在の形として開園した。敷地面積は約3万7000平方メートルと、日本庭園としては市内最大級。築山が「御嶽山(おんたけさん)」、水の流れが「木曽川」、池が「伊勢湾」など、中部地方の地形に見立て、源流から大海までの水の物語をテーマにした池泉回遊式日本庭園となっている。

「御嶽山」にある雄滝からの水の流れを表現している

正門から入り、しばらく歩くと御嶽山に見立てた築山に登る道がある。ここの雄滝が水の源流となり、園内をほぼ右回りに流れていく。その流れに沿って散策するのが理想だが、所どころに橋が架かり、気の向くまま園中央にある茶室「清羽亭」や汐入亭、芝生広場に立ち寄るのもいい。園内は滝、渓谷、水郷など、「白鳥八景」としておおまかに区分けされ、それぞれに異なる顔を見せてくれる。滝や巨大な岩がつくり出す源流風景や清流の音も楽しめる渓谷風景、また春の桜や秋の紅葉など、一年を通じて四季折々の風景を楽しめるため、定期観覧券を購入するリピーターが多いという。美しい緑や花々を被写体に、カメラの腕前を上げるのにも最適なスポットだ。

下流の「伊勢湾」に見立てた、中の池の風景

園中央にある2つの施設、まず茶室「清羽亭」は、京都数寄屋大工と尾張大工による、自然素材を生かして造り上げた本格的な数寄屋建築となっている。外観は水辺に白鳥が舞い降りる姿をイメージ。内部は茶会や歌会などに利用できるが予約制のため、予約なしで訪れる場合は清羽亭の露地へと足を運び、千利休の教えに基づいた二重露地の構成など、細かな外観にも目を向けて楽しみたい。また、汐入亭は「茶寮汐入」として、気軽にお茶やお菓子、軽食を味わいながらくつろぐことができる。おすすめのメニューは、自分で点てる抹茶と日替わりの干菓子がセットになった「お点前セット」だ。汐の満ち引きを表現した水辺の景色を見ながら自分で点てる抹茶は、格別な味がすることだろう。

左が和室、右の離れが椅子席になっている茶室「清羽亭」

汐の満ち引きを表現した、汐入亭を囲む「汐入の庭」

「茶寮汐入」のお点前セット

美しい景色に心を奪われてしまうが、水琴窟にも注目したい。水琴窟とは、手水鉢(ちょうずばち)などの近くに瓶(かめ)を埋め、水滴の音を反響させて外に心地良い音を聞かせる仕掛けのことで、日本庭園によく見られる。白鳥庭園の水琴窟は大中小3つの常滑焼の瓶が埋められ、音色も3通り楽しめる全国的にも珍しいもの。園を一望できる西側の高台付近にあるので、忘れずに立ち寄り耳を澄ませたい。

音色を聞き分ける穴が3つある水琴窟