花の窟神社

偉大なる日本の神々の母が眠る神社へ

日本書紀にも記され、日本最古の神社といわれる花の窟神社。2004年(平成16)に世界遺産に登録された「紀伊山地の霊場と参詣道」に含まれる、歴史ある神社だ。熊野古道散策の際にぜひ立ち寄りたい。

圧倒的な存在感を放つ花の窟神社の御神体

美しく雄大な七里御浜の海岸線を望む「花の窟神社」。熊野古道の「浜街道」上にあり、鬼ヶ城や獅子岩などの観光名所からも近く、一年を通して多くの観光客が訪れる古社だ。
参道の入り口前には熊野や花の窟にちなんだ土産を販売する道の駅熊野・花の窟「お綱茶屋」があり、その先に境内の入り口となる鳥居が建つ。「日本最古」と刻まれた石碑にも歴史が感じられる。まずはここで一礼し、境内へ。松などの大樹に囲まれた境内には凛とした空気が漂い、自然と気持ちも引き締まる。途中には稲荷神社があり、商売繁盛や産業全般の神として崇められている。またその隣には龍神神社も鎮座。こちらは開運や金運アップの神、黄金龍神が祀られているので、どちらも参拝しよう。

鳥居をくぐった先には、本居宣長が花の窟神社を詠んだ歌碑もある

幾重にも連なる鳥居の先にある稲荷神社

花の窟神社の歴史は太古の昔にさかのぼる。日本神話で神々の母とされ、人間の寿命を司る黄泉津大神(よもつおおかみ)のイザナミノミコトが、火の神・カグツチノミコトを産んだ際に火傷を負って亡くなり、ここに葬られたと伝えられる。境内の最奥、参籠殿の先にある高さ45mの巨大な岩座がご神体。天に向かってそそり立つ岩には圧倒的な迫力があり、神々しいムードだ。岩座には波の浸食によってつくられた無数の穴があり、真ん中には高さ6mの大きな「ほと穴」の前に拝所が設置されている。玉垣の中に敷き詰められた白石に上がって参拝する際は、靴を脱ぐのがルールなので気をつけよう。また、イザナミノミコトの御陵に面して、カグツチノミコトの御陵も鎮座。こちらは高さ18mの巨岩、王子ノ窟(おうじのいわや)が御神体だ。いずれも安産や商売繁盛、縁結びなど多くのご利益があるといわれている。

御神体の前で存在感を放つ、カグツチノミコトの御陵

ほかにも境内には、御神体の岩座から落ちてきたといわれる丸い岩がある。この岩には神が宿るとされており、近年ではパワースポットとしても知られている。体の痛い部分を触ってから石に触れると痛みが治る、とも伝えられており、隣にある手水舎の水をかけ、両手で触れながら願いを念じる人も多い。さらに花の窟神社では、毎年2月2日と10月2日に「御綱掛け神事」が行われる。イザナミノミコトの子である7つの自然神を表して、7本の綱を束ねた約170mの大綱を、御神体と境内にある松の御神木にわたす神事だ。大綱には太陽の神、月の神、大海原統治の三神を表す幡縄「三流の幡」が吊るされ、大勢の人々の手渡しによって、御神体へと引き上げられていく。御綱は御神体の上で結ばれると、人々の手によって国道42号を超えて七里御浜へと引かれ、合図によって挽いたり戻したりしながら御神木にかけていくのだ。御綱に触れると神とつながることができるといわれることから、毎年多くの人が参加している。機会があれば、参加してはいかがだろう。

しめ縄と神札がかけられた丸い石

参拝を終えたあとは、社務所で御朱印(500円)を授かることができる。2020年(令和2)の日本書紀編纂1300年を記念した御朱印もあり、通常の御朱印と合わせて授かっていく人も多いそうだ。また、さまざまなお守りも販売されているので参拝記念にぜひ。近くには世界遺産の鬼ヶ城や、獅子岩もあるので一緒に訪れたい。

御神体が描かれた記念の御朱印