美の山公園

美の山公園から見た秩父盆地。武甲山や奥秩父の山々を一望できる

「関東の吉野山」と呼ばれる桜の名所

標高581.5mの蓑山は、秩父では珍しい独立峰。公園の展望台からは、下方に秩父盆地はもちろん、三峰山・武甲山・両神山の「秩父三山」や、遠く群馬県の赤城山までも遠望できる。なお本来の山の名は「蓑山」だが、近年は「美の山」と書くことも多い。美の山公園は、桜の名所にする構想のもとに1979年(昭和54)、南北1.2km、41万平方メートルの広さで開園した。ソメイヨシノやヤマザクラをはじめ50種以上約8000本が植えられ、春になると山が薄いピンク色に染まる。桜が終わってからも、5月にヤマツツジ、6～7月にアジサイ、秋は紅葉など、四季折々の色に包まれていつ訪れても美しい。

山頂の東側斜面に広がるアジサイ園。見頃は6月下旬～7月上旬

山頂の展望台から雄大なパノラマを満喫する

美の山公園へは路線バスがないので、アクセス方法は車かハイキングのどちらかになる。車なら、国道140号線(彩甲斐街道)から入る道が走りやすい。公園入り口の「エントランス広場」には展望台が3つあり、第1駐車場脇の「入口展望台」は南に、「東展望台」は東に、「山頂展望台」は西に向いて設けられている。展望台から眺望を楽しんだら、北へ700mほど石畳の道を歩いて「榛名神社」へも行ってみよう。途中には、真っ赤なツツジのトンネルがあるツツジ園地や桜の園芸品種を集めた「花の森」などがある。榛名神社前に屋根付きの木製展望台「パノラマデッキ」があり、ここからも雄大な秩父連山を望める。

緑の木立に包まれた頂上へと至る道路。駐車場は公園の南側にある

広場の奥にある「山頂展望台」からは両神山や奥秩父連山を見渡せる

ふもとからハイキングを楽しみながら山頂へ

歩いて公園へ行くなら、秩父鉄道の親鼻駅、和銅黒谷(わどうくろや)駅のいずれからも山頂へルートがあり、片道1時間半～2時間ほど登れば山頂に到着できる。途中は舗装されていない山道なので、ハイキングに適した靴を履いていこう。登りきって公園の展望台に立てば、風に吹かれて心地良いことだろう。エントランス広場にある売店は営業日が限られているが、自動販売機(冬期は販売休止)で飲み物を買える。お弁当は用意しておきたい。往路か復路のどちらかで、和銅黒谷駅の近くに鎮座する金運上昇で名高い「聖神社(ひじりじんじゃ)」を参拝するのも良いだろう。

公園にはお弁当を広げられるベンチやトイレも完備されている

宝石のようにきらめく夜景と幻想的な雲海

美の山公園は夜景が美しいことでも知られ、「日本夜景100選」に埼玉県で唯一選ばれている絶景ポイント。秩父市街の明かりを楽しめるのは3つある展望台のうち2つ。「入口展望台」からは武甲山と市街が正面に見え、「山頂展望台」からは秩父市街から皆野町まで見渡せる。夜の公園は外灯がなく暗いので懐中電灯は必須。また山頂は平地より気温が低いため防寒対策も十分にしておきたい。

「山頂展望台」からの眺め。公園には明かりがないため星空もきれいに見える

また近年は、雲海の眺望スポットとしても人気上昇中。秩父盆地をはじめ、皆野町まで展望を楽しめるのは独立峰ならでは。また、市街地や工場の明かりが反射して雲海が七色に輝く幻想的な風景に出合えることも。雲海は気象条件がそろえば1年中見られるが、なかでも春と秋に発生しやすく、最も確率が高いのは11月。特に前日に雨が降った好天の朝に出やすいとされる。太陽が昇ると消えてしまうことが多いので、できれば日の出前に公園に到着するようにしたい。

早起きして、朝日と雲海のコラボレーションを楽しもう