八日市・護国地区の町並み
漆喰装飾が華やかな商家や町家が並ぶ、歴史情緒あふれる町並み
江戸後期から明治にかけて木蠟の生産で栄えた商家や町家が現存
愛媛県の南西部にある県内有数の観光地、内子町。江戸から大正にかけて木蠟や和紙の生産で栄えた歴史をもつ。なかでも人気なのが「八日市・護国の町並み」だ。戦国時代、曽根氏の菩提所である護国山高昌寺を中心に集落が形成され、主要街道に面する宿場・在郷町として発展。江戸時代後期から明治時代にかけて木蠟の生産で栄えた。木蠟はハゼノキの実から採る蠟のこと。蒸して搾った生蠟(きろう)は和蠟燭や鬢付け油に、漂白した白蠟(はくろう)は光沢剤や化粧品などに使われた。近隣地域で採掘された土を使用した黄色みを帯びた漆喰壁や、建物と建物の間の路地「せだわ」の風景が特徴で、約600mの街道沿いに町家や製蠟業者の屋敷が当時のまま軒を連ねている。町全体での保全活動が実り、1982年(昭和57)には、四国で初めて国の重要伝統的建造物群保存地区に選定。93棟の特定伝統的建造物と3件の国の重要文化財があり、現在でも地元の人の努力によって愛され、保存されている。
独特な建物の意匠や路地空間を見つけるのも町並み散策の醍醐味
八日市・護国の町並みへは、JR松山駅から内子駅まで特急で約25分、そこから歩いて約20分。車の場合は、松山ICから内子五十崎ICまで約25分、そこから車で5分ほど。町並みの北側、高昌寺のそばにある町並駐車場(80台)1回300円に駐車して、ゆるやかな坂を下りながら散策するのがおすすめだ。坂を少し下って行くと、右手に町並みの入り口を示す看板が見えてくる。通りに足を一歩踏み入れば、まるで明治時代にタイムスリップしたかのような気分になるだろう。
散策の際は、町並保存地区の特徴である、建物の意匠や路地空間にも目を凝らしてみよう。ほとんどの建物が切妻造の2階建てで、淡い黄色の漆喰で塗り込められた重厚な大壁や平入りの造り。家々には、懸魚(げぎょ)、鏝絵(こてえ)、出格子(でごうし)、鳥衾(とりぶすま)、虫籠窓(むしこまど)といった建物装飾が凝らされており、変化に富んだ景観を創り出している。家と家との間をのぞけば、大壁や石積みと相まって独特の路地空間を生む「せだわ」が見られる。
国指定重要文化財の上芳我(かみはが)家住宅、本芳我家住宅、大村家住宅は必見
まず訪れてほしいのが、町並みの中核的な施設「木蠟資料館上芳我邸」だ。国内最大規模の製蠟業者だった本芳我家の筆頭分家「上芳我家」の屋敷を資料館として公開しており、4327平方メートル(1300坪)の広大な敷地には、最盛期に建てられた居住施設と木蠟生産施設あわせて10棟が現存。そのすべてが国の重要文化財に指定されている。邸内には、木蠟生産の工程を紹介した展示棟もあり、豪商の暮らしと製蠟業について知ることができる。
上芳我邸から歩いて3分のところにある「本芳我家住宅」と「大村家住宅」も見逃せない。どちらも国の重要文化財に指定されている。本芳我家住宅は、木蠟生産で財をなした豪商の屋敷で、芳我家の本家。1889年(明治22)に建てられた建物にある贅を尽くした意匠、漆喰を使った鏝絵、懸魚、海鼠壁、弁柄(べんがら)の出格子などは必見である。大村家住宅は、寛政年間(1789-1801年)に建てられた民家で、内子で木蠟生産が盛んになる以前の古い町家の形式。江戸時代後期から明治期の町家の状況がわかる貴重な建物だ。隣接する本芳我家住宅と大村家住宅の建物を見比べるのもおもしろいだろう(本芳我家住宅、大村家住宅ともに邸宅内は非公開)。
カフェや手仕事の店など見どころ満載の町並み。足を延ばせば内子座にも
本芳我家住宅と大村家住宅から歩いて2分の場所にある「町家資料館」にも立ち寄ろう。内子町に現存する最古級の町家を利用した資料館で、江戸時代の町家の特徴である、摺り上げ式の蔀戸(しとみど)や大戸(おおど)を全面的に開放できる造り。内部では昔の民具を展示しており、当時の生活様式を学ぶことができる。無料で公開されているので休憩スポットにも最適だ。町並みには、町家をリノベートしたカフェも多いので、町並み散策に疲れたら町家資料館やカフェに腰を下ろせば、伝統的な建物の雰囲気を肌で感じることができるだろう。手仕事職人が技を振るう工房やお店でお土産探しするのも楽しい。町並保存地区は坂道の途中で終わるが、そのまま坂道を下って交差点を右に曲がり、本町通りを行けば「商いと暮らし博物館」や「内子座」へとつながっている。見どころ満載の町並みから続く内子の町歩きを、じっくりと堪能してみては。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン