安達太良山
火山のパワーがみなぎる、智恵子が愛した「ほんとの空」の山
古くから親しまれてきた福島を代表する山
「阿多多羅山の山の上に 毎日出てゐる青い空が 智恵子のほんとの空だといふ」――高村光太郎の『智恵子抄』に亡き妻智恵子が愛した山として登場する安達太良山は、磐梯山と並んで福島を代表する山だ。福島盆地から郡山盆地までの広範囲から眺めることができ、智恵子の故郷・二本松市の阿武隈川にかかる高田橋には大きな山名板が掲示されている。東北道の安達太良SA下り線には安達太良山展望台もある。その標高は1700ⅿ。奥羽山脈に属し、磐梯朝日国立公園内に位置する。10のピークをもつ安達太良連峰(最高峰は箕輪山。標高1728ⅿ)のなかで最も親しまれており、ふもとから1時間30分ほどで山頂に立つことができる。
ロープウェイ利用で時間を短縮
最もポピュラーな奥岳登山口コースを紹介しよう。片道ロープウェイ利用で距離9㎞、標高差752ⅿ、所要5時間程度だ。登山口は岳温泉から車で15分。ロープウェイに乗れば10分で標高1350ⅿまで上がれる。ここから5分歩くと薬師岳パノラマパーク。歩くのが苦手な人もぜひここまでは来てほしい。福島市まで遠望でき、振り向けば「この上の空がほんとの空です」の碑の向こうに山頂も見える。あそこを目指して進もう。夏なら高山植物、秋には紅葉が目を楽しませてくれる。30~40分登って視界が開けたところが仙女平分岐。さらに40分ほどで山頂に立てば、磐梯山、飯豊(いいで)連峰、蔵王連峰までの絶景パノラマが待っている。
安達太良登山のクライマックス、爆裂火口へ
「乳首」を下りたら「牛の背」へ。いつも強風が吹いている広い稜線だ。15分ほど進むと左手に荒涼とした「沼の平火口」が姿を現わす。深さ150ⅿ、直径1.4㎞の爆裂火口で、中央の平らな部分が1900年(明治33)の噴火口。その際には硫黄採掘所で72人が犠牲になった。火口と反対側の斜面を約45分下ると「くろがね小屋」に出る。通年営業していて、源泉かけ流しの風呂が人気(建て直しのため2023年3月末に閉鎖予定)。小屋から先は林道(馬車道)と登山道(旧道)が交錯するが、どちらを通っても1時間40分ほどで登山口へ戻れる。ルートの最後には渓流の遊歩道があり、「奥岳の湯」の露天風呂で疲れを癒やすのも極楽だ。
安達太良登山を安全に楽しむために
安達太良山は初心者向きの山といわれるが、それはあくまでも「登山の初心者」という意味なので、軽いハイキング気分で訪れるのはやめたい。人気の奥岳登山道は長年の往来によって深くえぐられ、背の低い人や子どもは足が届かないほど段差の大きくなった箇所がある。ガレ場もあるので、靴はスニーカーではなく登山靴かトレッキングシューズが必要。視界が悪いときには山頂付近の開けた場所で登山道を見失いやすい。1997年(平成9)に4人が亡くなった事故は、霧のため立入禁止区域に迷い込んで火山ガスを吸ったために起きた。また、山の天気は変わりやすいので雨具(ポンチョ、レインスーツ、ザックカバーなど)も忘れずに携行したい。
スポット詳細
- 住所
- 福島県二本松市奥岳温泉 地図
- エリア
- 福島市・国見・二本松エリア
- 駐車場
- あり
情報提供: ナビタイムジャパン