桧原湖

桧原湖は火山性のせき止め湖として日本一の大きさを誇る

磐梯高原の観光の中心地

磐梯山周辺には、1888年(明治21)の磐梯山の噴火によってできた湖が4つある。桧原湖はそのひとつで、裏磐梯最大の湖だ。磐梯山の噴火で約20億tもの岩石が岩なだれとなってなだれ落ち、川水と混ざって泥流となり、当時ふもとにあった5つの村の11の集落に大きな被害をもたらした。山の東側に流れた泥流は川をせき止め、そのときにできた湖が桧原湖だ。そのため、湖は南北約10km、東西約2kmと細長い形になっている。せき止められた川は水位が上昇し、村を1つ飲み込んだ。湖面には当時村にあった神社の鳥居が見られ、噴火がいかに甚大なものだったかを物語っている。現在は磐越自動車道猪苗代磐梯高原ICから車で約30分と交通の便もよいため、裏磐梯のレジャーの中心地となり、カヤックやボート、釣りなどを楽しんだり、キャンパーやハイカーなど、湖周辺で余暇を過ごす人たちで賑わっている。

夏には湖でカヌーやボート、スワンボートなどを楽しむ人たちも多い

サイクリング、ハイキングなどで湖を探索しよう

湖岸には湖をめぐる約31kmの周遊道路が整備されており、周りの自然を楽しみながらドライブやサイクリングを楽しめる。噴火で湖沼群がいくつもつくられ、美しい自然を探索するのも桧原湖周辺の楽しみ方のひとつだ。湖周辺にある五色沼や中瀬沼、レンゲ沼などは探勝路も整備されている。そのなかの中瀬沼探勝路は数ある散策コースのなかでも手軽に探索を楽しめる約30分のコースだ。県道2号線沿いに小さな駐車場が造られていて、そこからブナの木立に囲まれた探勝路を10分ほど歩くと、中瀬沼を見下ろす展望台が見えてくる。磐梯山を望む沼の景色は初夏から夏季には青々とした緑が映え、それらが赤や黄色に色づく秋の光景も美しく、ハイカーに人気のポイントだ。この探勝路はレンゲ沼にもつながっているので、2か所を同時に散策することもできる。

中瀬沼と磐梯山を望む中瀬沼展望台。夏季は青々とした緑が美しい

湖から周辺の自然を楽しむ

桧原湖には、湖から周りの自然や景色を楽しめる遊覧船が運航している。磐梯山寄りの国道459号線沿いには桧原湖観光船の乗り場があり、予約せずとも大型観光船に乗船(大人1400円、小学生以下700円)できるのがうれしい。湖に浮かぶ島を巡る約35分のコースで、桧原湖の神秘的な眺めを楽しむことができる。運航は例年5月上旬から11月上旬で、新緑から紅葉にかけて周辺がいちばん美しくなる時期だ。観光船は磐梯山を背に湖の東側から悠々と進む。噴火で流れてきた岩の上に木々が生える「流れ山」など、岩がれきの勢いを物語る箇所が見られる。湖の南北のほぼ半分の辺りに「中ノ島」があり、ここがコースの折り返し地点。しばらくすると、木々がこんもり茂った月島や船の左側からは安達太良山が眺められる。船が折り返してからは、1階の展望箇所から目の前に磐梯山の雄大な姿が再び見られる。終盤に見えてくるのが「桜島」だが、こちらは桜と紅葉の時期に島周辺を回るそうだ。四季折々の美しい景色とすがすがしい風を感じながら、湖上のクルーズは年齢を問わず楽しめるので、ぜひ乗船してみたい。

桧原湖観光船の「あづま丸」。2階建てで、船体後方のデッキから雄大な景色を眺められる

1階の客席先頭に設えられた展望箇所。ソファに座ってぜいたくな気分で眺望を楽しめる

折り返し地点の中ノ島。磐梯山の噴火でここまで噴石が流れ出たといわれている

春になると桜が美しく咲くので「桜島」といわれている

冬でも楽しめる桧原湖

桧原湖周辺は夏季だけでなく、冬季も観光客で賑わう。積雪が多いため、湖周辺にはスキー場も多く、ウインタースポーツを楽しむ人たちが訪れる。冬には湖面が凍結するため、湖面を歩いたり、スノーモービルを楽しんだりもできる。桧原湖は日本でも有数のワカサギ釣りのメッカとしても知られている。夏にはワカサギ釣り専用の船が見られるが、冬には湖面に釣り人たちのカラフルなテントがいくつも並び、訪れる人の目を楽しませてくれる。

湖面に浮かぶワカサギ釣り専用の船は、屋形船のような形をしている