キトラ古墳
四神に守られた高貴な被葬者に思いを馳せて
国営飛鳥歴史公園・キトラ古墳周辺地区
キトラ古墳は、明日香村内に5つのエリアが点在する国営飛鳥歴史公園のなかのキトラ古墳周辺地区内にある。東南から西北へ延びる低丘陵の丘陵を削り出して造られた古墳だ。近鉄飛鳥駅からキトラ古墳への道・平田阿部山線はゆるやかな上り坂。道の西側には檜隈寺(ひのくまでら)跡前休憩案内所がある「見晴らしの丘」や史跡・檜隈寺跡、体験用の「五穀の畑」「農体験小屋」などが並び、移動中も美しい緑の風景を楽しめる。公園のため、ベンチや駐輪場、トイレなども数多く設置されており、晴れた日のピクニックにもおすすめだ。週末には海獣葡萄鏡(かいじゅうぶどうきょう)の鋳造体験や勾玉つくり体験(各有料)もあり、飛鳥らしい体験ができる。
丘陵から飛鳥の地を見下ろす、小さな円墳
キトラ古墳は、7世紀末~8世紀初頭頃に造られた円墳で、2段築成、下段の直径が13.8mと小さい。丘陵の斜面を削って整地をし、石槨(せっかく)を整えてから土盛を行うなどして墳丘部分を造ったと見られる。
古墳には、車道に隣接する「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」から続く遊歩道で向かう。古墳周辺と下部丘陵部は芝生で整備されており、丸くかわいらしい円墳の形状が遠くからでもよくわかる。遊歩道には、紙を置いて鉛筆で擦ると四神の浮かび上がる乾拓(かんたく)体験板が設置されており、自由に体験できる。
壁画体験館で四神を見よう
キトラ古墳は埋め戻されているため、外観のみの見学となる。そこでもっと詳しく内部を見ることができるのが、併設された「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」だ。
四神(青龍・白虎・朱雀・玄武)は、天の四方を司るという中国から伝わった霊獣で、守護の祈りを込めて壁面や鏡にモチーフとして用いられる。彩色壁画古墳の前例である高松塚古墳は盗掘で破壊されていたため、日本で4体すべてそろった四神壁画はキトラ古墳が唯一のものだ。
館内では年に数回、はぎとり修復された壁画が特別公開される。四神は期間中どれか1体の公開で、事前申し込み者が優先。空きがあれば当日受付もあるが、ぜひどの四神の公開かをチェックし、申し込みを。
キトラ古墳の豊富な遺物! 高貴な埋葬者は誰なのか
「キトラ古墳壁画体験館 四神の館」では、期間限定の実物壁画公開、高精細映像のほか、原寸大の石室模型、出土品などが展示されている。
残されていた人骨・歯牙からの分析によれば、被葬者は50~60歳代の男性。盗掘の際こぼれ落ちたと見られる銀製の刀装具の一部は、正倉院宝物に似た幾何学模様が刻まれている。当時は墓標を刻む文化がなかったため、古墳から被葬者名はわからないが、高位にのみ墳墓の築造が許された時代の終末期古墳であること、彩色壁画の緻密さ、副葬品の質から考えて、名のある人物だとされている。研究者から挙がっている推定被葬者は、天武天皇の皇子や、高官・百済王昌成、右大臣・阿部御主人など。さまざまな想像が膨らむ古墳だ。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン