岩船寺

寺院

当尾にたたずむ三重塔と、四季折々に咲く花の寺

奈良との県境に近い京都府南部の木津川市。奈良時代から鎌倉時代にかけ、静かな山里で真の仏教を求める僧たちの心をとらえた寺院があった。今も、境内はアジサイをはじめとする季節の花に彩られ、人びとの心を和ましてくれる。

山門を額縁風にして望む色鮮やかな三重塔} 山門を額縁風にして望む色鮮やかな三重塔

奈良仏教の僧侶が修行の場とした古刹

岩船寺へは、JR加茂駅からコミュニティバスで約15分。山門までの参道では、野菜や漬物を売る当尾(とうの)名物の吊り店が目を楽しませてくれる。寺の創建は、聖武天皇の勅願で行基が阿弥陀堂を建てた729年(天平元)。東大寺や興福寺で学ぶ者たちが、修行の場を求めて移り住み、最盛期には広大な境内に39の坊舎が立ち並んだ。ところが、1221年(承久3)、承久の乱の兵火は境内の大半を焼き尽くした。その後の復興を経て、明治の廃仏毀釈期に真言律宗の寺院となり今にいたる。また、1936年(昭和12)に、先代の住職が美しい寺を取り戻そうとアジサイを植えたことから、今では30種5000株の花で境内が染まる「関西のあじさい寺」としても知られている。

本尊の阿弥陀如来が祀られている本堂。1988年(昭和63)の再建} 本尊の阿弥陀如来が祀られている本堂。1988年(昭和63)の再建

重量感に満ちた平安仏・阿弥陀如来坐像

本堂に足を踏み入れると、仏像の大きさはもとより、その距離が近いことにも圧倒される。おおらかで包容力に満ちた本尊の阿弥陀如来坐像は、高さ約3m。1本のケヤキの大木から彫り出された10世紀を代表する仏像だ。「平等院の阿弥陀如来坐像より約100年も前に制作されました。こういう大きな仏様は、平和な時代にはあまり作られません。不安が大きいほど仏様も大きくなるのでしょう。仏像制作には、今でいう公共事業のような役割があったのかもしれません」と植村海宥(かいゆう) 副住職。さらに、本堂には植村幸雄(こうゆう)住職がおられることもあり、タイミングが合えば、平安時代から人びとの切実な思いを受け入れてきた仏様についての説明を聞かせてもらえる。

阿弥陀如来を囲む四天王像は鎌倉時代の作} 阿弥陀如来を囲む四天王像は鎌倉時代の作

平成の修復で建立当時の色彩が蘇った三重塔

境内の奥の高台に、ひときわ印象的な姿を見せる塔は高さ約18m。鮮やかな色彩は2003年(平成15)に復元された。平安時代、仁明天皇が真言宗の高僧であった智泉をしのんで建立した宝塔が、もともとの形だとされている。智泉は、弘法大師(空海)の甥にあたり、岩船寺の礎を築いた人物だ。現在の塔は、室町時代の建立と考えられている。

深い緑に覆われた三重塔。秋には初層内部が特別公開される} 深い緑に覆われた三重塔。秋には初層内部が特別公開される

山門から額縁風に望む姿も美しいが、間近から見上げる姿もすばらしい。屋根の四隅で、全身全霊を込めて垂木をしっかりと支えているのは隅鬼(すみおに)。魔除けのためとされ、この三重塔のように、各層の四隅、計12体も設けられている例は少ない。

ふんどし姿のユーモラスな木彫りの鬼} ふんどし姿のユーモラスな木彫りの鬼

当尾の里ならではの石仏や石造物

平安時代末期の東大寺焼討ちからの復興の担い手として、優れた石工が集まったといわれる当尾(とうの)の里。岩船寺の境内にも、文化財に指定されている石仏がある。「石室不動明王」は、2本の柱と屋根、不動明王を刻んだ奥壁を、まるで積み木のように組んだ珍しい形。僧侶が眼病で苦しんでいたところ、夢に不動明王が現れ、眼病平癒のための修行に入る。無事に病が癒えた僧は、そのことに感謝し不動明王を建立したと伝わる。

石室不動明王は鎌倉時代の作。重要文化財に指定} 石室不動明王は鎌倉時代の作。重要文化財に指定

また、山門の参道脇には、石風呂が置かれている。この地で疫病が流行った先に体を清めたとも、修行僧が日々身を清めたとも伝わる。参拝後は、浄瑠璃寺までの約2kmを石仏巡りをしながらハイキングを楽しみたい。

現在のバスタブとほぼ同じ形の石風呂は、鎌倉時代の作} 現在のバスタブとほぼ同じ形の石風呂は、鎌倉時代の作

スポット詳細

住所
京都府木津川市加茂町岩船上ノ門43 map map 地図
電話番号
0774763390
時間
8:30-17:00
[12月-2月]9:00-16:00
休業日
無休
料金
[拝観料]大人500円、中・高生400円、小学生200円
駐車場
なし
※周辺駐車場を利用(有料)
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
あり(KYOTO Wi-Fi)
コンセント口
なし
喫煙
不可
滞在目安時間
0-30分

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • 素敵な雰囲気!!
    5.0 投稿日 : 2020.09.10
    京都府木津川市加茂町岩船にある真言律宗の寺院です。 事前に訪問した浄瑠璃寺も同じ真言律宗の寺院でした。このエリアは当尾の里と呼ばれ、奈良県と京都府の県境の山中にあり、平安時代の終わり頃は多くの修行僧らが集まる仏教信仰の聖地だった場所で、岩船寺と浄瑠璃寺を結ぶ道は「石仏の道」と呼ばれ石仏がたくさんあります。その「石仏の道」は歩きのみの山道で、距離は2.4km(50分)と案内にありました。非常に...
  • アナウンスあり
    4.0 投稿日 : 2020.07.13
    アジサイにはまだ少し早い時期に行きました。本殿に入るとご住職?がマイクで仏像の歴史などをわかりやすくアナウンスしてくださり。勉強になりました。平等院建立以前の仏像があります。
  • 三重塔をいろんな角度から楽しめるのが良い。
    5.0 投稿日 : 2020.03.21
    あじさい寺。興福寺一乗院の末寺。キービジュアルと言える三重塔をいろんな角度から楽しめるのが良い。行基作である阿弥陀如来坐像、なんとも面白い普賢菩薩騎象像などの重要文化財。人里離れてるので思い切り鐘を撞けるのもいまや貴重ですね。35品種・5,000株のあじさいも見てみたい。

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アクセス

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最寄り

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