劉家荘

名物はなんといっても焼鶏(写真は一人前)

マスコットキャラがお出迎え

神戸の中華街は横浜の中華街とは毛色が違い、食べ歩きに適した店が多く、気軽に異国情緒を味わえるというのが特徴。とはいえ落ち着いて食べられる店も少なくない。劉家荘はそういう店のひとつで、看板料理は焼鶏と呼ばれる鶏料理だ。ほかにも、ラーメンなどの麺類や点心等の定番アラカルト、さらには豪華なコース料理までメニューは非常に幅広い。席数は1階にカウンターが4席、2階に18席、3階に12席の計34席で、店はいつも盛況。店の入り口上ではオリジナルのマスコットキャラがお出迎えしてくれる。店自体はメインの大通りと元町商店街の間に位置するので地元以外の人にはわかりにくいが、ユニークなマスコットキャラを目印に探し当てよう。

鶏のマスコットが目印だ

名物はローストチキン「焼鶏」

焼鶏は制作過程や外見から、揚げた鶏肉料理だと勘違いしがち。作り方は、特製スパイスを擦り込み1日寝かせた鶏を一度油で揚げ、そのあとに専用の蒸し器で蒸すという手間とヒマをふんだんにかけたもの。蒸すことにより揚げ物とはまったく異なる意外な食感に仕上がる。劉家荘が「中国ローストチキン」と称するこの焼鶏は、焼豚の鶏版--といえば少々乱暴な言い方かもしれないが、スパイスのしみ込んだジューシーな風味が絶品。特に骨の付いた肉は鶏の風味と歯ごたえのある食感が癖になる。焼鶏は北京料理の前菜として出てくる手の込んだ一品。これだけでも十分なボリュームがあって満足度は高い。ちなみに焼鶏は冷えているのが普通の状態で、冷たいがゆえに作り置きを出されたと勘違いするお客さんもまれにいるそうだが、非常に回転の早い店なので焼鶏はできたそばから売れていく。作り置きということではないのでご安心を。

焼鶏は丸ごと1羽(3300円)でも注文できる。テイクアウトも可能だ

水餃子をはじめとした豊富なメニュー

劉家荘において焼鶏と双璧をなすメニューが水餃子(6個入り690円)。劉家荘の水餃子は餡に鶏ミンチを使用しており、水餃子という料理法と相まってサッパリとした味わい。さすが鶏を知り尽くした劉家荘だ。特筆すべきは2019年(令和元)12月に神戸の有名料理店から移ってきた料理長が材料を吟味しつつ作るシェフの気まぐれメニュー。週または月替りで変わるメニューは店の黒板に書き出される。期間は定めず仕入れ優先で新たなメニューが開発されるため、意外な出合いがありそうだ。広東料理を極めた料理長が作る同メニューは大変好評で、そのときどきに手に入る新鮮な食材がメニューのレパートリーを徐々に広げている。コロナ禍による緊急事態宣言の頃には食材業者が寿司屋へ卸すはずだった海鮮類を用いたメニューが提供されたそうで、ここにも状況に応じて対応していく劉家荘の柔軟さが表れている。

もう一品なら水餃子がオススメ

本場からも地元からも愛される劉家荘

劉家荘は1987年(昭和62)6月、現在の店主の父にあたる人物が同地で店を開いた。以来、地元に愛される店として定着。インバウンドでごった返していた頃は焼鶏を食べに本場中国から大勢の観光客が訪れて好評を博したという。劉家荘の本格的な焼鶏が本場中国人の舌にも受け入れられたかたちだ。また、コロナ禍の外出規制の影響で南京町自体が閑散としていたときにも劉家荘はふだんどおりに満員御礼。おもに地元華僑の方々が食べに来られていたという。劉家荘が地元に愛されているのがわかるエピソードだ。そんな劉家荘の盛況ぶりには南京町近隣の中国料理店も驚きを隠しきれなかった様子で、偵察に来る店員さんもいたとか。豊富なメニューと地元客をガッチリつかんだ自慢の味で、劉家荘は今日も賑わっている。

決して広くはないが明るい店内

南京町と元町商店街の間に位置する