来迎院

寺院

大原の地に響きわたった仏教音楽「声明」の根本道場

平安時代初期、慈覚大師(円仁)によって創建された天台宗の古刹。のちに良忍(りょうにん)によって再興され、声明(しょうみょう)の道場として大いに栄えた。本尊は平安時代の作として重要文化財に指定されている。

寺院の山号「魚山(ぎょざん)」は、中国にあった声明の発祥の地の山の名前にならったものだ} 寺院の山号「魚山(ぎょざん)」は、中国にあった声明の発祥の地の山の名前にならったものだ

観光客で賑わうエリアを離れて

バス停・大原から横断歩道を渡り、呂川(ろがわ)に沿って漬け物や雑貨などのお土産品を扱う店が並ぶ坂道を歩くこと7分。「魚山橋」で道は三千院や勝林院に向かう道と、さらに奥へと続く道の二手に分かれる。多くの観光客は左手(三千院方面)に向かうが、そのまま直進すると道はやや急な上り坂へと変わっていく。しだいに三千院辺りの賑わいが遠くなり、それまであまり耳に入らなかった川のせせらぎや鳥の声がよく聞こえるようになるだろう。途中、休みを挟みながら約5分歩くと、木立のなかに門が見えてくる。先ほどの分かれ道から距離にすると300m程だが、こちらまで足を運ぶ観光客は比較的少なく、静けさのなかでゆっくりと参拝ができる寺院・来迎院である。

坂道ではあるが道は整備されていて歩きやすい。新緑、紅葉も美しい} 坂道ではあるが道は整備されていて歩きやすい。新緑、紅葉も美しい

中国から持ち帰った声明を伝える地

来迎院は仁寿年間(851~854年)に慈覚大師(円仁)によって、声明の修練道場として創建された古刹である。声明とは経文に音曲をつけた声楽で、後の今様、浄瑠璃、謡曲、民謡などの邦楽に大きな影響を与えている。円仁は中国(唐)に留学したとき、五台山(山西省)の太原(たいゆわん)を中心に五台山念仏(声明)が流行していたのを学び、帰国後、比叡山(延暦寺)にこれを伝えた。またここ大原の地形が、中国の太原と似ていたことから声明の根本道場と定めたといわれている。平安時代中期には、俗化した比叡山を離れた念仏僧が修行をする隠棲の地となり、一時衰退をするが1109年(天仁2)に良忍(聖応大師)によって再興され、勝林院とともに声明の中心となった。盛時には49の坊舎が立ち並んだといい、声明を修練する僧侶や貴族がこの地に集まり、妙音のこだまする里として隆盛を極めたという。

本堂へと続く階段。杉木立がすがすがしい} 本堂へと続く階段。杉木立がすがすがしい

大原の自然に包まれてたたずむ本堂} 大原の自然に包まれてたたずむ本堂

円満な相好で参拝者を迎える本尊

本堂に祀られる本尊は、薬師如来坐像、阿弥陀如来坐像、釈迦如来坐像の三尊仏で、いずれも平安時代の作として重要文化財に指定されている。さらに境内の奥には、良忍の御廟があり、三重石塔は鎌倉時代の作としてこちらも重要文化財に指定されている。森閑とした境内をゆっくりと巡ったあとには、さらに足を延ばしたいスポットがある。一度、門を出て杉木立のなかの山道を400mほど進むと、「音無の滝」と呼ばれる滝にたどりつく。良忍をはじめとする僧は、この滝に向かって声明の修練をしたといい、初めは声明の声が滝の音に消されて聞こえず、稽古を重ねるにしたがって、滝の音と声明の声が和し、ついには滝の音が消えて、声明の声のみが朗々と聞こえるようになったことから「音無の滝」と呼ばれるようになったという。静かな滝を眺めながら、朝な夕な、美しい声が響きわたった往時に思いを馳せてみよう。

本堂は靴を脱いで堂内に入り、すぐ近くでお参りすることができる} 本堂は靴を脱いで堂内に入り、すぐ近くでお参りすることができる

境内の最奥に御廟がある良忍は融通念仏宗の開祖として知られている} 境内の最奥に御廟がある良忍は融通念仏宗の開祖として知られている

来迎院の北側を流れる律川(りつがわ)の上流にあたり、山の中腹から白糸を垂らしたように静かに流れ落ちる「音無の滝」} 来迎院の北側を流れる律川(りつがわ)の上流にあたり、山の中腹から白糸を垂らしたように静かに流れ落ちる「音無の滝」

スポット詳細

住所
京都府京都市東山区泉涌寺山内町33 map map 地図
電話番号
0755618813
時間
9:00-17:00
休業日
不定休
[含翠庭拝観]成人の日
料金
[含翠庭拝観料]300円
駐車場
なし
※本山泉涌寺駐車場利用

情報提供: ナビタイムジャパン

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最寄り

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