小澤酒造

江戸時代創業の蔵元で、奥多摩の名水が生んだ美酒を味わう

東京の奥座敷として知られる御嶽(みたけ)渓谷沿いにある、1702年(元禄15)創業の蔵元。多摩川に面した自然あふれる庭園で食事やきき酒を楽しめるほか、酒蔵見学も行っている。

「澤乃井(さわのい)」の酒銘で知られる小澤酒造。季節限定商品を含め30種類ほどの日本酒を製造している

青梅市にある小澤酒造は、東京で古くからの伝統を守っている9軒の蔵元のひとつ。「澤乃井」の名で知られる日本酒は、300年以上にわたって奥多摩の地酒として親しまれてきた。JR青梅線沢井駅から徒歩5分ほど、車なら圏央道の青梅ICから約40分。青梅街道に面して北側に本社と酒蔵、南側に清流ガーデン「澤乃井園」がある。地名の「沢井」が示すように、清涼な水が沢となって流れる名水郷として知られ、昔も今も変わらず奥多摩の豊かな自然のなかで酒造りを行っている。

多摩川の遊歩道沿いにある「澤乃井園」。新緑や紅葉など四季折々の風景を楽しめる

多摩川のほとりに広がる「澤乃井園」は、渓谷散策やハイキングの途中に気軽に立ち寄れる休憩スポットとしても人気。軽食コーナーや売店があり、購入したものを開放的なテラス席や川沿いの東屋で食べることができる。うどんやそばのほか、名物のおぼろ豆腐や味噌コンニャクといったおつまみメニューもあるので、量り売りの日本酒とともに味わってみよう。また、園内の「ままごと屋」(前日までの予約制)と「豆らく」(予約不要)では、自家製豆腐や湯葉を使った料理を味わうことができる。

園内の売店には日本酒のほか、自家製豆腐やワサビ漬けなどのお土産がそろう

築約100年の日本家屋で本格的な豆腐や湯葉料理を楽しめる「ままごと屋」

売店の隣には2階建ての建物があり、1階は「澤乃井ガーデンギャラリー」、2階が「きき酒処」になっている。「きき酒処」では、常時10種類ほどのお酒が用意されていて、気軽に飲み比べをできる。大吟醸や3年以上熟成させた「蔵守(くらもり)」、新酒の季節なら「しぼりたて」や「一番汲み」など、おちょこ付きで1杯200～500円(おかわりは100円引き)と手軽に楽しめるのがうれしい。また「きき酒処」へと続く階段の下には、酒の仕込みに使われるのと同じ清水が湧き出す泉があるので、こちらも味わってみよう。

カウンターで注文したお酒を、多摩川を一望する店内で味わうことができる

小澤酒造では無料の酒蔵見学を行っている(予約制。スケジュールなど詳細は公式サイトで要確認)。お酒が好きな人や日本酒の造り方に興味のある人は、ぜひ参加してみたい。直径約1mの酒林(さかばやし＝酒屋の看板としてスギの葉を球状に束ねたもの)が吊り下げられた玄関を入ったところが、創業当時から残る「元禄蔵」。外気温の影響を受けにくい蔵内には、お酒を貯蔵するホーロー製のタンクがずらりと並んでいる。

木造の天井や梁が歴史を感じさせる「元禄蔵」。夏は外より涼しく冬は暖かい

さらに奥には、発酵が終わったもろみを搾って液体と酒粕に分ける上槽室(じょうそうしつ)、明治時代建造の「明治蔵」などが続く。東京では小澤酒造だけで造られているスギのおけを使った「木おけ仕込み」(季節限定)、古酒「蔵守」の熟成セラーなど、貴重な酒造りの様子も見学できる。なかでも必見なのが、裏山に幕末に掘られた「蔵の井戸」。奥多摩の山々の厚い岩盤を通って湧き出るミネラル分の多い中硬水で、蔵から約4km離れたところにある軟水の「山の井戸」とともに、銘酒「澤乃井」を生み出す源泉となっている。

秩父古生層の岩盤を約140m掘った「蔵の井戸」。水温は一年を通して約15℃に保たれている