グリランド

眺めているだけでも迫力満点のボートだが、乗ってみると想像以上にダイナミックだ

強い風は覚悟のうえで。夏は爽快！ 冬は寒い！

十和田湖のウォーターアクティビティの代表格に、老舗のGURILANDが運営する「RIBツアー」がある (料金は大人4000円～、4歳以上12歳まで2000円～) 。RIBは「Rigid-hulled Inflatable Boat(複合艇)」の略称だ。大型のゴムボートにエンジンが付いているとイメージすると近いだろう。通常は海兵隊や日本の海上保安庁で使用される軍用、またはレスキュー用のボートなので、そもそもこのRIBに乗れること自体が貴重な体験だ。ボートは想像以上の迫力で発進する。受付で「強い風を受けますので、かなり寒いですよ」と言われたら「この日の体験は相当寒い」と判断し、防寒着を増やすか、迷彩柄のポンチョ(無料)を借りよう。陸上と湖上では、風を受けた際の体感温度がまるで違う。また相当な速さで走るので、荷物は極力置いていこう。スピードは出るがボートは安全。幼児から乗船可能なので、小さな子どもがいる場合は事前に相談してみよう。

集合場所となるGURILANDの店舗。宇樽部(うたるべ)キャンプ場の入り口手前にある

船着き場までは、全員でショートドライブ

予約していたツアー客が全員集まったら、車で乗り場まで連れて行ってもらえる。わずかな時間であるが、ボートのキャプテンが運転がてら観光案内をしてくれるのもうれしいポイント。なおこの観光案内は、乗船中の解説で登場する「十和田湖の神秘」に迫るヒントになっているので、聞き逃さないようにしよう。到着したら、スタッフの案内に従って乗船を。プロの目による安全管理のもと、重量バランスを見ながら座席が指定される。同行者と隣の席になれなくても、ここでのわがままは禁物だ。全員が乗り込んだら、いよいよボートが動き出す。加速するにつれて、モーター音が体にズンと響いてくる。最初は呑気な様子だった乗客も思わず手すりにしがみつく。湖畔で見ていたときには穏やかだった十和田湖の表情も一変し、乗船中は大自然の力強さを感じられる。ちなみにどんなにスピードが出ても、服が濡れることはないので、ふだん着で参加できる。

船着き場の様子。いくつかの種類のボートが停泊しているが、当日の乗客を見てキャプテンがより安全に運航できるボートを決める

キャプテンの解説で十和田湖の自然を観賞

キャプテンは、要所ごとにボートを停止させ十和田湖の見どころを解説。先ほどまでの激しい操縦が嘘のような穏やかな声で「晴れた日には穏やかな水面が鏡のようになり、山影が逆さまに映ります」「十和田湖は世界最大の二重カルデラ湖で、今いるこの中湖(なかのうみ)がいちばん深いところ。水深は約320m、日本3位です」と教えてくれる。そんな豊富な知識を聞けるのも、RIBツアーの楽しいところ。そしてキャプテンは西の山を指さし「あそこに見えるのが十和田湖の外輪山の最高峰、御鼻部山(おはなべやま)です。展望台があって、山の中央から右が青森県、左が秋田県です」と周囲の地理情報も解説。それを聞きながら県境にまたがる十和田湖の大きさを実感しているうちに、再びボートが動き出し、湖面を切るように疾走していく。

十和田湖が火山でできたことがわかる五色岩(ごしきいわ)。鉄分を多く含むため錆びて赤く見える。「サケの切り身のようですね」というキャプテンにみんな大笑い

十和田湖は特別自然保護区で、陸からだと足を踏み入れられない場所もある。ボートでならそこに近づくことも可能

そして「十和田湖の神秘」を目撃する

ボートは、ある洞穴の前で速度を落とす。もう何十年も前の話、「この十和田湖にキリストの像が沈んでいる」と、海外から捜索隊がやってきたことがあるそう。そのときは見つからなかったが、カヌーツアーをしていたときにGURILANDでスタッフが不思議な形の岩を見つけたのだとか。「あの洞穴を見てください！」キャプテンが促すと皆、順番に穴をのぞき「あっ！」と声を上げる。そこに何があるのかは、ぜひツアーに参加して確かめてほしい。「これを見ると、無事に戦地から帰って来られるという噂があるらしく、近くの米軍三沢基地から、今でも多くの米兵がツアーに訪れます」とのこと。十和田湖の近くには、キリストの墓伝説が残る新郷村もある。不思議なつながりに思いを巡らすのもまた一興だろう。ガイドの解説も楽しい、自然と神秘にあふれた十和田湖のRIBツアーは、空きがあれば当日申し込みでも参加可能だ。

不思議な形の岩がある洞穴。近くには修験者が使ったとされる鉄製のハシゴが残る。また、十和田湖畔にはここを見下ろすようにして礼拝堂が立てられているそう