田島弥平旧宅

歴史的建造物

日本の近代化を支えた絹産業、その礎となった蚕種製造技術の改新の場

利根川の群馬県側と埼玉県側にまたがる境島村。この小さな地域が養蚕のもとになる蚕種(蚕の卵)製造技術により日本の近代化を支えた。2014年(平成26)には「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産として、田島弥平旧宅は世界遺産リストに登録された。

立派な表門が目をひく} 立派な表門が目をひく

換気システムを取り入れた蚕室構造の開発のイノベーション

明治時代に優良な蚕種を生産する養蚕技法「清涼育(せいりょういく)」を確立した田島弥平。彼が建てた家が今に残る。敷地は約4000平方メートル。江戸末期から昭和初期にかけての貴重な建物が現存する。
主屋は1863年(文久3)に建てられた瓦屋根の2階建て。蚕室として使われた2階の屋根には総櫓(そうやぐら)が付いており、換気の役割を果たしていた。温まった空気を外に出すとともに、新鮮な空気を2階の四方の窓から取り入れ、部屋の中を自然に近い状態にしていた。

住居兼蚕室の主屋と井戸(右)} 住居兼蚕室の主屋と井戸(右)

利根川の氾濫がもたらす養蚕の恵み

境島村は利根川の両岸にまたがる地域。氾濫にたびたび悩まされる一方、洪水で上流から運ばれてきた土壌が桑の栽培に適し、蚕病を防ぐ効果があったことから、蚕種製造業が盛んになった。
皇室で今も続く養蚕は1871年(明治4)から再び始まり、初期には弥平をはじめ境島村の人たちが奉仕にあがった。大正天皇の皇后、貞明皇后が弥平の家を訪れたのを記念して建てられた碑は敷地に残る。皇室への養蚕奉仕で知られるようになった境島村には、全国から多くの研修生が訪れるようになった。瓦屋根2階建ての住居を兼ねた蚕室の造りと「清涼育」は全国に広まった。

蚕のエサになる桑の保管や加工を行った桑場の中は展示室に} 蚕のエサになる桑の保管や加工を行った桑場の中は展示室に

庭に立つ貞明皇后行啓記念碑} 庭に立つ貞明皇后行啓記念碑

群馬県人初の世界一周、どんな旅だったか

田島弥平は1872年(明治5)、島村の有力な蚕種業者らとともに「島村勧業会社」を設立。養蚕業では日本初の蚕種の生産と輸出を手がける会社だ。当時、ヨーロッパで養蚕が盛んだったイタリア、フランスで蚕の伝染病がはやり、病気のない日本の蚕種の需要が急激に高まっていた時期だった。
弥平らは会社の規則に則って、製造された優良な蚕種を直接販売するため、1879年(明治12)12月、横浜から旅立ち、米国、英国、フランスを経由して2か月かけてイタリアのミラノに到着。持参した大量の蚕種はアルプスの洞窟に置きながら、その半分を販売したという。帰路はスエズ運河経由で翌年7月に帰国した。その後、1882年(明治15)まで、島村勧業会社の社員がミラノへ派遣された。彼らは当時の蚕種販売や生活の記録を日記に残している。

晩年の弥平が過ごしたと伝えられる別荘} 晩年の弥平が過ごしたと伝えられる別荘

周辺には見ごたえある建物多数

世界遺産、国指定史跡の田島弥平旧宅には現地ガイドがいて、詳しく説明してくれる。田島弥平旧宅周辺には幕末から明治初期にかけて建てられた、蚕種製造をしていた民家が残る。桑麻館(そうまかん)は弥平とともに島村蚕種業の指導者として活躍した田島武平の家。このほか、進成館、栄盛館、有鄰館、對青蘆(たいせいろ)といった屋号を持ち、いずれも田島弥平旧宅に見劣りしない建物である。

さまざまな種類の桑が植えられている島村見本桑園} さまざまな種類の桑が植えられている島村見本桑園

スポット詳細

住所
群馬県伊勢崎市境島村2243外 map map 地図
エリア
県央エリア
電話番号
0270615924
時間
9:00-16:00
休業日
無休(12/29-1/3は休業)
料金
[見学料]無料(見学は庭および桑場1階まで)
駐車場
あり(71台)
※駐車場から田島弥平旧宅まで徒歩約5分
クレジットカード
不可
電子マネー/スマートフォン決済
不可
Wi-Fi
なし
コンセント口
なし
喫煙
不可
滞在目安時間
30-60分
車椅子での入店
可(駐車場から田島弥平旧宅まで徒歩約5分)
乳幼児の入店
雨の日でも楽しめる
はい
備考
※電話番号は、田島弥平旧宅案内所に繋がります。

情報提供: ナビタイムジャパン

クチコミ

  • ボランティアガイドの説明を聞かないとわからない
    5.0 投稿日 : 2021.12.06
    前回訪問した時には時間がなく、ガイドさんの話を聞くことができず、またコロナ禍ということで、桑場の室内に入ることもできなかったため、正直この建物が世界遺産になっている意味がわかりませんでしたが、今回はガイドさんの説明を聞き、桑場の室内に入ることもでき、ビデオも見ることができたので、田島弥平旧宅の文化的価値がわかりました。屋根の上にやぐらがついた家は養蚕農家でよく見ることができますが、やぐらに依る換気...
  • なかなか知られていない世界遺産
    4.0 投稿日 : 2021.07.06
    関越自動車道本庄児玉ICを降りて伊勢崎方面へ向かう途中、田島弥平旧宅の看板があり、調べてみると世界遺産に登録されているとのことで行ってみました。旧宅入口の指示に従い、利根川沿いの島村蚕のふるさと公園駐車場に駐車して、桑畑を見ながら旧宅へ行きました。日曜日の世界遺産にもかかわらず、人はほとんどいなく、ボランティアガイドの方が熱心に説明してくれました。見た目は古い豪農の家のようですので、日本の養蚕技術...
  • 世界遺産の構成資産
    4.0 投稿日 : 2019.09.08
    世界遺産「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産になっていますが、富岡製糸場とは直接関係がないようです。蚕の近代的な飼育法を確立し、海外への輸出で財をなした田島弥平は渋沢栄一や西郷隆盛、そして天皇家(宮中でも養蚕している)とも関わりが強く、その旧宅には絹産業に関わる建物、機械類が残っていて、以前訪れた富岡製糸場や荒岩風穴での作業との関わりがよく理解できました。

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アクセス

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最寄り

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