野山北・六道山公園

江戸時代の家屋を再現した「里山民家」。里山の暮らしを体験できるイベントも開催している

狭山丘陵の豊かな自然と触れ合う

東京都と埼玉県にまたがる狭山丘陵は、武蔵野台地のほぼ中央に位置し、東西約11km、南北約4km。上空から見ると、まるで首都圏に浮かぶ「緑の島」のようだ。東京都の水がめの狭山湖と多摩湖の水源保護林を中心に、ゆるやかな起伏に富んだ丘陵地帯が広がっている。その西端にあるのが野山北・六道山公園。このほか狭山丘陵には八国山(はちこくやま)緑地や狭山公園など全部で5つの都立公園があり、これらが遊歩道や自転車道路で結ばれていて、丘陵全体が実質的に1つの公園ともいえるほど圧倒的なスケールをもつ。なかでも野山北・六道山公園は、都立公園では最も広い約204万平方メートル。都内とは思えないほど豊かな自然が残されており、子どもから大人まで世代を問わず楽しめる魅力的な公園だ。

コナラやクヌギなどの広葉樹が茂る園内で森林浴を楽しもう

狭山丘陵の最高地点から六道広場へ

広大な公園には数か所に駐車場が設けられているので、あらかじめ公式サイトなどで地図をチェックして、目的地の近くに車を停めて歩き出そう。狭山丘陵で最も高い標高194mの「三角点広場」へは、車だけでなく電車でもアクセスがしやすい。JR八高線箱根ヶ崎(はこねがさき)駅方面から7つの遊歩道が整備されており、「お伊勢山遊歩道」を行けば雑木林の上り道を歩いて30分ほど。また公園西口駐車場からは、浅間神社へとつながる237段の「富士山階段」を通り「お伊勢山遊歩道」に合流できる。「三角点広場」から東へ進むと、都立公園に隣接して「瑞穂町立文化の森 六道山公園」があり、高台に展望塔が立っている。塔の上からは、天気がよければ富士山や秩父連山、新宿の高層ビル群を見渡せる。六道広場は桜の名所として知られ、花見の時期はお弁当を広げる家族連れなどで賑わう。新緑の季節は丘陵全体が萌黄色に染まり、スミレやウバユリといった四季折々の花々が咲き、秋は紅葉が美しい。

標高205mの展望塔から360度見渡せる六道広場。ここから眺める夕日も絶景

展望塔から南側を見ると四季折々の狭山丘陵と、街並みの向こうに多摩丘陵を望める

昔懐かしい風景が広がる「里山民家」

六道広場から山道を南東へ15分ほど下ると、宮野入谷戸(みやのいりやと)という、山間のわずかな平地に水田が設けられた里山の景色が始まる。このように丘陵に平地が細長く食い込んだ土地のことを武蔵野では谷戸(やと)、または谷津(やつ)といい、水源に乏しく水田がほとんどない多摩地方では、小川が流れる狭い谷戸に米が植えられることが多かった。こうしたこの地方の原風景を再現したのが里山民家。狭山丘陵周辺に江戸時代に実在した農家の母屋を復元し、蔵や納屋なども造られている。広い土間と高い上がり框(かまち)がある木造の母家を見学しながら、昭和中頃まで続いていた素朴な生活様式に思いを馳せよう。里山民家は野山北・六道山公園の東西のちょうど中間地点にあり、近くの駐車場に車を停めて散策をしてもいいだろう。里山民家から須賀神社奥の院の鳥居を経て、六道山展望台へぐるっと回るルートも変化があって楽しい。

田んぼではボランティアの協力により古代米や餅米などが栽培されている

「里山民家」の見学時間は9:00-17:30(10-2月-16:30、年末年始休館)

自然のなかでのびのびと遊ぼう！

公園の東側には、インフォメーションセンターの併設された管理事務所がある。地図のほか園内のイベントや生きものについての情報を配布しているので、立ち寄ってみよう。公園東端の「冒険の森」と「あそびの森」には、アスレチックタイプの木製遊具が設置されている。ファミリーで遊ぶにはもってこいの場所で、休日には子どもたちの楽しそうな歓声が響く。公園を満喫したあとは、冒険の森のすぐ南側にある日帰り温泉施設「村山温泉 かたくりの湯」で汗を流すのもいいだろう。ここから西武拝島線・多摩モノレールの玉川上水駅などに路線バスが運行しているので、箱根ヶ崎駅方面から歩いてきた人は最後に天然温泉でリフレッシュして帰宅してはいかが。

大型のアスレチック遊具や展望デッキで遊べる「冒険の森」