にんべん 日本橋本店

店内に入ると、出汁のいい香りに包まれる

戸板にかつお節と干し魚を並べた商いからスタート

ユネスコ無形文化遺産に登録されている和食に欠かせないかつお節専門店といえば、まず名前が挙がるのが「にんべん」だ。初代・高津伊兵衛は三重県の出身。現在の野村證券日本橋本店がある辺りに戸板を並べてかつお節や干し魚類の商いから始め、1704年(宝永元)には小舟町に鰹節問屋を開業。商号を現在でもおなじみの「カネにんべん」に定めた。当時、江戸では珍しかった上方の上等なかつお節を扱うとともに、現金掛け値なしの商売を貫徹し、大いに繁盛したという。その後、大名御用達や、昭和に入ってからは三井家・岩崎家の旧財閥、渋沢栄一家などにかつお節を納入。戦後は百貨店などへの出店を開始する一方で、かつお節と昆布の出汁に醤油を加えた「つゆの素」、削りたてのかつお節の風味が長持ちする「フレッシュパック」などを開発。食卓で欠かせない調味料として愛用されている商品を世に送り出した。

創業300年を超える日本橋でも有数の老舗。現在は商業施設に店舗を構える

「削り場」直送の限定商品

現在の日本橋本店は2010年(平成22年)、日本橋の商業施設「コレド室町」開業と同時に新店舗として開業。ふくよかな出汁の香りが漂う店内では、つゆの素、フレッシュパック、だしパックや炊き込みご飯の素などの定番商品とともに、出汁がテーマのお菓子類やかつお節削り器などの雑貨も販売。贈答用とともに家庭用のお得なパッケージ商品がそろっているので、くまなくチェックしてみたい。店内に併設された「日本橋削り場」で削り、袋詰めした「本枯鰹節削りたて」が購入できる。また、かつお節ができるまでの工程と見分け方を学び、実際に削り体験ができる「鰹節教室」を不定期に開催している。

ユニークな新商品を次々と生み出し、その種類の豊富さに驚く

「本枯鰹節」を削る様子をガラス越しに眺められる「日本橋削り場」

左から、削りたてをパックした「本枯鰹節削りたて15g」273円、「だしを愉しむとり五目ご飯の素」864円、本格的な出汁を手軽にとれる出汁パック「薫る味だし かつおと昆布6袋入り」615円

引きたての出汁メニューを味わえる「日本橋だし場」

店内に併設する「日本橋だし場 本店」は、「日本橋削り場」で削ったばかりのかつお節を使った出汁メニューをテイクアウト中心で提供する店。出汁そのものをシンプルに味わう「かつお節だし」、トマトやクリーム仕立てのかつお節だしや、ランチタイムには月替わりメニューの「だしスープ」を販売。炊きたてのご飯に削りたての本枯かつお節をたっぷりかけた「かつぶしめし」、あさり、鶏五目など日替わりの炊き込みご飯や弁当類もあり、ランチタイムには行列ができるほどの人気スポットになっている。購入した商品は、店の前にスタンディングで味わえるスペースがあるほか、テーブルと椅子を備えた施設内のフリースペースなどで食べることも可能だ。

「かつお節だし」を中心とした出汁メニューや弁当類を販売

左から、「かつぶしめし」(Sサイズ100g)150円、毎月内容が変わる「だしスープ」360円、出汁そのもののおいしさを味わう「かつお節だし」(レギュラーサイズ110㎖)100円

※高津伊兵衛の「高」は、はしごだかです