台東区立朝倉彫塑館

美術館

近代日本を代表する彫刻家・朝倉文夫のアトリエ兼住居

明治から昭和にかけて活躍した朝倉文夫は、日本を代表する彫刻家。みずから設計し完成させた建物は、彼のこだわりと美意識が詰まった独特の空間になっている。展示されている作品はもちろん、建築物として鑑賞するのも興味深い。

躍動感あふれる作品が並ぶアトリエ} 躍動感あふれる作品が並ぶアトリエ

美術学校卒業と同時に構えた活動の拠点

下町の人気エリア、「谷根千(やねせん)」にある「朝倉彫塑館」は、彫刻家・朝倉文夫のアトリエと住まいだった建物を一般公開している美術館。JR日暮里駅から徒歩5分、下町情緒が漂う住宅街の一角に、真っ黒な外観で不思議な雰囲気を醸す建物が見えてくる。1883年(明治16)、大分県に生まれた朝倉は、小さい頃から囲碁、将棋、俳句、剣術、柔道、いけ花などさまざまな分野にチャレンジし、好奇心旺盛な性格を見せていたという。19歳のときに実兄で彫刻家だった渡辺長男(おさお)を頼って上京。翌年には東京美術学校(現在の東京藝術大学美術学部)に入学し、本格的に彫刻を学び始めた。学生時代からその才能と実力を高く評価され、美術学校を卒業した1907年(明治40)、24歳のときにこの場所に150坪ほどのアトリエと住居を構え、活動の拠点とした。敷地の拡張や増改築を繰り返し、みずから設計した現在の建物は1935年(昭和10)に完成。このアトリエ兼住宅には、彫刻家としてのこだわりはもちろん、独特の感性が凝縮され、建築物として、芸術作品としても見どころは尽きない。

外壁を黒く塗ったのは汚れが目立たず、光線の反射により近隣に迷惑をかけないためとか} 外壁を黒く塗ったのは汚れが目立たず、光線の反射により近隣に迷惑をかけないためとか

天井高8mを超えるアトリエに自然光があふれる

朝倉彫塑館はコンクリート造のアトリエ棟と、木造の住居棟で構成されている。黒く塗られた重厚な外観とは対照的に、アトリエは自然光の差し込む開放的な空間。北側に天井まで届くアールを付けた窓を設け、安定した自然光を取り入れた。大きな作品の制作作業のため、電動昇降機が備えられている。室内には、肖像彫刻や動物彫刻などのブロンズ作品がずらりと並び、代表作である『墓守』や大隈重信の像も。最も大きな作品は高さ3.7mを超え、そのいずれにも表情が宿り、今にも語りかけ、動き出しそうなリアルさだ。ここを朝倉は自身のアトリエとしてだけでなく、若い門下生を指導する場としても活用していた。アトリエの隣の書斎では、天井までぎっしり並ぶ書籍に圧倒される。そのうち、洋書のほとんどが恩師だった東京美術学校教授で西洋美術史家・岩村透の蔵書。恩師の死後、古書店に売りに出されていたものを買い戻したというエピソードが残り、日本の近代美術を語るうえで貴重な資料になっている。

谷中霊園近くにある天王寺の墓守をモデルにした『墓守』} 谷中霊園近くにある天王寺の墓守をモデルにした『墓守』

2階分の高さまである書架には蔵書がぎっしり並ぶ} 2階分の高さまである書架には蔵書がぎっしり並ぶ

中庭を囲む日本家屋は居住ともてなしのための空間

池が大部分を占める中庭も、朝倉自身がデザインを手がけた。水の表情を楽しめるように工夫し、石の配置だけで1週間近く悩んだこともあったという。その中庭をコの字型に囲むのが、木造の住居棟。池の水に反射した光が室内まで届くのが美しく、庭を眺めながら時間を忘れて過ごす人が多い。アトリエ棟の3階部分にあるのが、来客をもてなすための大広間「朝陽(ちょうよう)の間」。神代杉の天井、松の一枚板で作られた床板、やわらかなオレンジ色の壁はメノウを砕いて塗ったもので、贅を尽くした造作になっている。

入り口からは想像できないほど奥行きがある。右の白い建物がアトリエ棟} 入り口からは想像できないほど奥行きがある。右の白い建物がアトリエ棟

ウメをはじめとした庭木が四季折々のたたずまいを見せる} ウメをはじめとした庭木が四季折々のたたずまいを見せる

さらに驚かされるのが、屋上庭園。現代でこそ珍しくないが、昭和初期の鉄筋コンクリート建築における屋上緑化の貴重な例に数えられている。ここは門下生たちに園芸を指導した場所。植物を育てることを通して自然と親しみ、感性を磨かせる教育方針であったといわれている。硬いイメージがある彫刻家だが、ネコ好きでも知られ、愛らしいネコの作品も多い。芸術家であり教育者、普請道楽で愛猫家。四季折々のたたずまいとともに、さまざまな顔をもつ彫刻家の人柄と感性に興味は尽きず、何度も訪れたくなる場所だ。

東京タワーと東京スカイツリーの両方が見える屋上庭園。冬の晴れた日には富士山が見えることもある} 東京タワーと東京スカイツリーの両方が見える屋上庭園。冬の晴れた日には富士山が見えることもある

スポット詳細

住所
東京都台東区谷中7-18-10 map map 地図
電話番号
0338214549
時間
9:30-16:30(入館は16:00まで)
休業日
月、木(祝日の場合は翌平日)
料金
[入館料]一般500円、小中高生250円
※障害者手帳提示者及びその介護者は無料
※特定疾患医療受給者証提示者及びその介護者は無料
※療育手帳提示者とその介護者は無料
※精神障害者福祉手帳提示者とその介護者の方は無料
※毎週土は台東区在住・在学の小、中学生とその引率者は無料
駐車場
なし
クレジットカード
可(VISA、MasterCard、JCB、AMEX、DISCOVER、Diners Club)
電子マネー/スマートフォン決済
可(Suica、PASMO、QUICPay、iD、nanaco、WAON、楽天Edy、Apple Pay、PayPay、楽天ペイ、LINE Pay、メルPAY、d払い、auPAY、ALIPAY、WeChatPay ゆうちょpay)
Wi-Fi
あり(Taito City Free Wi-Fi/一部のみ使用可能、館内使用不可)
コンセント口
なし
喫煙
不可
英語メニュー
あり
平均予算
【昼】1-1,000円
滞在目安時間
30-60分
車椅子での入店
可(1F一部のみ)
乳幼児の入店
可(保護者同伴)
雨の日でも楽しめる
はい(雨天時は屋上庭園閉鎖)

情報提供: ナビタイムジャパン

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クチコミ

  • 朝が来た
    5.0 投稿日 : 2022.04.03
    東博、都美など上野界隈美術館巡りの時間調整弁以上の価値があります。上野公園界隈から徒歩20分程度。入館料500円。各種カード支払可。靴を脱いで入館します。靴下の着用必須。トイレは純和風で正しく便所。入室時退室時は横にスライドさせます。日曜午前訪問。アトリエから外の風景1ヶ所、屋外庭園は写真撮影可能。屋上から東京スカイツリーなど見渡す360度のパノラマ風景が絶景です。
  • 建築物鑑賞ファンにとって 何度 訪問しても 飽きることはないかも知れません
    5.0 投稿日 : 2020.12.12
    建築物鑑賞ファン必見の建築物です。国登録有形文化財としては[アトリエ棟][住居棟][アトリエ棟][東屋]の4ケ所が指定されており、[旧アトリエ棟]を除く 3ケ所が見学スペースになっています。[東屋]は入口左手にあり 写真撮影可能ですが それ以外は写真撮影禁止となっています。 [アトリエ棟]の天井高は8.5mもあり 大きな彫像を含むスラリと並んだ《朝倉文夫》の作品を鑑賞できます。 《中庭》が[ア...
  • 素晴らしい建物です。
    5.0 投稿日 : 2020.02.22
    作品も素晴らしいですが、建物が圧倒的でした。是非天気の良い日に訪れて下さい。お天気なら、屋上に上がることができます。中庭の池も圧巻でした。保存が大変だと思いますが、是非残して頂きたい遺産です。

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アクセス

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