景信山

山頂から相模湖の向こうに丹沢の山々を望む。天候に恵まれれば富士山も見える

景信山への最短ルートは小仏バス停から

JR中央線の高尾駅南口から小仏(こぼとけ)行きバスに乗って約20分、道幅が狭くなり人家がなくなった先の終点、小仏バス停が登山のスタート地点。渓流の南浅川に沿って、舗装道路を西へと歩き始めよう。この道はかつての甲州街道で、江戸と甲州を結ぶ交通の動脈だった。1888年(明治21)に甲州街道が高尾山の南側を通る現在のルートへ移されると賑わいは失われ、今では静かな登山路になっている。この先は頂上まで片道約1時間の簡単なコースだが、お店は頂上で茶屋が週末と祝日のみ営業しているほかは1軒もないので、必要なものがあれば高尾駅前のコンビニで買っておこう。

高尾駅からのバスが到着する小仏バス停。広場には公衆トイレもある

尾根道を1時間ほど登って眺望の良い山頂に到着

小仏バス停から舗装道路を10分ほど歩くと、道がS字にカーブした先に景信山への登り口の標識が見えてくる。階段になっている登り口を上がりきったら、杉林のなかを木の根が大きく張り出したり、小石の転がる道が始まる。一見急坂でハードそうな道に見えるが、頂上までは尾根道を登るだけのシンプルなコースで、初心者でも道に迷う心配はない。

景信山への登り口を示す標識(写真左)。木々に覆われた細い階段を上って行く

所どころ切り通しになっている道をしばらく進むと、森はおもに南斜面に杉林、北斜面に広葉樹が広がっていることに気づく。登り口から50分ほどで、景信山頂上・小下沢(こげさわ)・小仏バス停への三差路に到着。小下沢への道はその先の八王子城跡へと続いている。ここから景信山頂上へは15分ほど。頂上の手前にトイレがある。

急坂を登りきると、杉林と広葉樹に挟まれたゆるやかな尾根道が続く

山頂は四方から集まってきた登山客の憩いの場

景信山は標高727m。頂上はわりあいに広く、眺望が良い。西に富士山、東に都心の高層ビル街やスカイツリー、東南には海ほたるや横浜ランドマークタワーまでもがぐるりと見渡せる。すぐ下方には高尾山とそこへ続く尾根が延びている。高尾山から陣馬山への縦走路上ということもあり、ここでひと休みしている登山客も多く、ベンチとテーブルがたくさん置かれて賑わっている。茶屋では名物のうどんなどの食事ができるが、営業は土・日曜と祝日のみ。なお景信山の名前の由来は、戦国時代に北条氏の重臣で八王子城の守備を担っていた横地景信が出城をおいたからとか、八王子城落城の際に景信がここを通って奥多摩へ脱出したからとか、さまざまな説がある。

山頂でランチタイム。平日は茶屋は営業していないので、お弁当を持参しよう

江戸時代の五街道のひとつ、甲州街道を歩いて下山する

頂上から先は、小仏峠を通って下山するコースを紹介しよう。「高尾山・小仏峠」と書かれた標識にしたがって下り始める。幅が広くて歩きやすい登山道を30分ほど下ったところにある小さな広場が小仏峠で、かつての甲州街道の要衝だ。1880年(明治13)に明治天皇が山梨巡幸の際にひと休みした記念碑が建っている。

小仏峠に建つ「明治天皇小佛峠御小休所阯及御野立所」と書かれた碑

小仏峠から右へ下れば相模湖、左に下れば出発地点の小仏バス停へ、まっすぐ行けば高尾山だ。ここでは左の狭くて急な下り道をとる。10分ほど下れば渓流に沿って車が通れる幅の道になり、やがて舗装道路が見えてきたら小仏のバス停まではもうすぐ。頂上での休み時間も合わせて、出発してから3時間ほどで戻ってこられる。

渓流に沿って旧甲州街道を下る。春は新緑、秋は紅葉と四季折々の風景が美しい