飛鳥山公園

木々が多く爽やかな空気に満ちた公園内の散策路

江戸時代に整備され都内有数の桜の名所に

JR王子駅の近くにそびえる小高い丘の、全域を占めるのが飛鳥山公園だ。春には桜の花が丘を淡いピンクに染める様子が、車窓からもよく見える。飛鳥山は鎌倉時代に飛鳥明神が祀られたことに由来し、当時の遺物とされる狛犬が残る。もともと松の木が生い茂っていたが、桜の名所となったのは、江戸時代に8代将軍徳川吉宗が1270本の桜を植え、庶民に解放したためだ。当時、ほかの桜の名所では禁止されていた酒宴や仮装、踊りなどが許されたので、江戸っ子たちは無礼講で楽しんだという。その様子は古典落語や錦絵にも描かれ、当時の様子を今に伝えている。明治に入ると、飛鳥山は上野、芝、浅草、深川とともに日本最初の公園に指定された。

運賃無料の「アスカルゴ」に乗って楽に山頂へ

四季折々の美しさを見せる園内を散策

山上へは徒歩でも行けるが、自走式モノレール「あすかパークレール」の利用がおすすめだ。「アスカルゴ」の愛称をもつ車両が斜面をゆっくりと上る。たった2分の行程だが、都電が行き交う駅周辺の眺めがいい。山頂駅の近くには、標高25.4mの公共基準点がある。

飛鳥山の最高地点を示す公共基準点と、飛鳥山山頂モニュメント

園内には600本の桜のほか、1万5000株ものツツジが植えられている。ふもとの線路沿いの「飛鳥の小径」は、1300株のアジサイで有名だ。秋にはモミジが色づき、四季折々の景観を楽しめる。木々の間を延びる散策路を行くと、あちこちに石碑が立っており、飛鳥山の歴史やゆかりの人物について知ることができる。

1737年(元文2)に建てられた飛鳥山の碑は、この地の歴史を物語る貴重な資料

児童エリアには親子連れがいっぱい！

噴水や野外ステージがあり、水遊びもできる多目的広場を見下ろしながら南東へ向かうと、お城のような大きな遊具を中央に配した広場に至る。この遊具には坂道やすべり台、らせん階段が設けられ、上からの眺めもよく子どもたちに大人気。周囲にも多くの遊具があり、なかでもゾウのすべり台がリアルで目をひく。

高さ7mを超える3階建てのお城の遊具

また、かつて「デゴイチ」の愛称で親しまれたD51形蒸気機関車や、戦後初めて造られた都電荒川線車両の実物も展示され、レトロなシートに座ったり、運転席でハンドルを握ったりして楽しめる。近くのデッキは、新幹線や在来線などの列車が走る様子を眺められる、鉄道好きにおすすめのスポットだ。

1943年(昭和18)に製造され、1972年(昭和47)に廃車となった蒸気機関車

ユニークなテーマをもつ3つの博物館

児童エリアの近くには3つの博物館が並んで建っている。紙の歴史や製法を紹介する「紙の博物館」、弥生時代の復元住居や江戸時代の花見弁当の模型がある「北区飛鳥山博物館」、実業家・渋沢栄一の生涯を年齢ごとに追うことのできる渋沢資料館だ。どれも興味深い展示で、見る者の知的好奇心を満たしてくれる。

古代から現代までの北区の歴史について展示する北区飛鳥山博物館

ユニークなテーマをもつ3つの博物館

渋沢資料館近くの柵に囲まれた区域には、大正時代に建てられた「晩香廬(ばんこうろ)」と「青淵文庫(せいえんぶんこ)」があり、どちらも重要文化財に指定されている。内部見学には渋沢資料館の入場券が必要。スタイリッシュな渋沢資料館の建物とは対照的に、これらの洋風建築はクラシカルで美しい。ぜひ合わせて見学したい。