如意輪寺(かえる寺)

境内の入り口で参拝客を待ち構えるリアルなカエル像

カエルであふれる寺は行基菩薩が開基の古刹

小郡ICから車で約10分、西鉄三沢駅から徒歩15分の福岡県小郡市の住宅街を進むと、緑に包まれた寺院が見える。通り沿いの「祈願所 如意輪寺 カエル寺・花の寺」と書かれた看板を入ると、ちょうど山門前だ。住宅地のすぐ奥に寺院の森が見える。春には桜の花が咲き誇るなど、地元の憩いの場にもなっている。山門をくぐって地蔵の石像が立ち並ぶ参道を歩いて行き、石段を上がり切った右手が本堂だ。如意輪寺は729年(天平元)、行基菩薩によって創建されたと伝わる。奈良時代からこの地に1200年以上もの間、法灯を受け継いできた地元でも由緒正しい寺院だ。宗派は真言宗御室派。本尊は平安時代作の如意輪観音立像。座像が一般的だが、立像は全国的にも珍しく、福岡県指定文化財になっている。交通安全や災難除けをはじめ人々が道を踏みはずさないよう見守っている道守地蔵尊の信仰もあつい。

地元では横隈観音という愛称でも親しまれる

境内のいたるところにカエルがずらり

如意輪寺の知名度をここまで押し上げたのは、境内に数え切れないほどのカエルの置物やオブジェ、おもちゃが飾られているから。境内には今にも鳴き出しそうなリアルなカエルの石像や、アニメのキャラクターのように愛らしく笑みを誘うカエルのオブジェが所狭しとひしめき合っており、住宅地のなかの寺は、連日カエルのオブジェを見にくる観光客で賑わう。本堂の横は、5000体以上のカエルの置物やおもちゃがびっしりと並んだ「かえる部屋」。実は、ここまでカエルであふれるようになったのは、住職が中国を旅したとき、骨董のカエルの置物を気に入って持ち帰り、寺に飾ったのが始まりだという。1体のカエルの置物が次々と仲間を呼んで、今のような数千体以上のカエルの置物やオブジェの集まる「かえる寺」ができあがっていった。

思い切りキャラクター化されたカエルのオブジェも多い

「かえる部屋」に上がってゆっくり見学しよう

カエルに願いを込めて験担ぎ

カエルは「無事帰る」「福帰る」など、昔から縁起の良い生き物として庶民に親しまれてきた。境内のカエルのオブジェも、験を担いだものがそろっている。カエルの口が大きく開いたオブジェは「くぐりがえる」。ユーモラスに笑ったカエルが開けた大きな口の中を、願い事を念じながらくぐる。「若がえる」「元気がかえる」「笑顔がかえる」ほか、「悪い事を良いほうにかえる」など、夢のような願いを聞いてくれる。また、手を取り合った2匹のカエルが仲睦まじい姿をしている「夫婦がえる」の横には、「夫婦楽しく楽しく」と書かれた札が立つ。温かな筆文字とイラストで、住職の手書きによるものだ。木漏れ日の差す境内のカエルを一つひとつ見ていくだけでも、楽しい時間を過ごせるだろう。

「くぐりがえる」の口をくぐるとご利益が。大人の方は体のサイズと相談しながら

参道脇の石像を眺めながら境内を散策しよう

参拝時にはカエルのお守りもチェックしよう

寺の授与所には、御札のほか、カエルにちなんだお守りも多い。まばゆいばかりの黄金色で作られた「大金運まもり」の表面には、ユーモラスなカエルのキャラクターがデザインされている。「お金がかえる」の縁起を担いで祈願されており、大きな金運が舞い込むだろう。カエルとともに如意輪寺を代表するのが「風鈴まつり」。6月から9月の暑い時期、境内にずらりと飾られた風鈴が風に揺られて、涼しげな音色を奏でる。風鈴は数え切れないほど参道の真上や両脇に吊されていて、ファンタスティックな夢の世界に迷い込んだよう。絵馬と同じく、風鈴を購入して願い事を書いて、境内に奉納もできる。カエルの置き物見物と合わせて風鈴祭りの時期に如意輪寺をぜひ訪れてみよう。

夏にはカラフルな短冊が揺れる風鈴のアーチがお出迎え