唐招提寺
鑑真が残した今もなお輝く天平の甍(いらか)を訪ねて
南都六宗のひとつである律宗の総本山
苦難の末、唐から海を渡りついに来日を果たした鑑真は、まず東大寺で5年を過ごし、その後新田部(にいたべ)親王の邸宅跡地を譲られて戒律を学ぶための修行の道場を開いた。南都の官大寺や藤原氏の氏寺などの巨大寺院とは異なり、鑑真の私寺として始まったこともあり、当初は講堂や経蔵、宝蔵などを数えるのみだった。本堂の金堂は8世紀後半に鑑真の弟子により完成したといわれる。そのようにして始まった寺だが災害を免れ戦火からは遠く、奈良時代建立の金堂、講堂が残り、大変貴重な伽藍となっている。本物の天平がここにはまだ残っているのだ。
苦難をしのび、鑑真和上像を参拝する
鑑真は742年(天宝元)に遣唐使船で唐を訪れた日本の僧を通じて、「仏教の正式な授戒の師」として朝廷から招聘を受けた。渡日を決意し実行してから12年間に5回渡航に失敗。そのなかで次第に視力も失うこととなってしまった。753年(天平勝宝5)、6回目にしてついに日本の土を踏み、東大寺での5年を経て、残りの5年を自身の寺、唐招提寺で過ごし、天皇をはじめとする数多くの人々に授戒した。「鑑真和上坐像」は毎年6月の開山忌舎利会(かいざんきしゃりえ)の際に3日間だけ公開され、参拝することができるが、旅人にとってありがたい存在なのが開山堂に安置されている御身代わり像。奈良時代の技法を忠実に踏襲した模造の像は毎日拝観することができる。
鼓楼や蔵などの堂宇をていねいにまわる
壮大な金堂や講堂は奈良時代にさかのぼる建造物だが、唐招提寺にはほかにも見るべきところは多い。小型でしょうしゃな2層の建物、鼓楼。毎年5月には中興忌梵網会(ちゅうこうきぼんもうえ)の重要な舞台となる。梵網絵はうちわまきで知られており、ハート型の宝扇が鼓楼の2階から撒かれる様子は奈良の晩春の風物詩でもあった。昨今の事情により規模が縮小されてしまったが、宝扇は売店でいつでも購入することができる。2つ並ぶ宝蔵と経蔵は校倉造りの建物で、南の経蔵は唐招提寺創建以前、新田部親王邸の米倉を改修したものと伝わり、この校倉造りが日本最古と伝わっている。校倉造りの扉にがっちりと止められている古式ゆかしい海老錠も見ておきたい。
もうすぐ御影堂の修復も完了
唐招提寺といえば東山魁夷の障壁画を思い浮かべる人もいるだろう。奉献された画は鑑真和上坐像の安置されている御影堂の宸殿に飾られている。平成の大修理もいよいよ竣工が近づいてきており、特別公開の知らせが待ち遠しくてならない。御影堂には供華園という花園があり、鑑真の故郷中国揚州から送られた瓊花(けいか)の花が春に香り高くほころぶ。ガクアジサイに似た品の良い花は御廟のそばでも見ることができ、参拝者の目を楽しませている。御廟に向かう小径の両側には苔が広がり、雨あがりの美しさは例えようもないほど。このように唐招提寺は西ノ京の宝石のような寺。じっくりと時間を取って訪れて天平の残り香を胸いっぱいに吸い込んでほしいものだ。
スポット詳細
- 住所
- 奈良県奈良市五条町13-46 地図
- エリア
- 平城京跡・西ノ京エリア
- 電話番号
- 0742337900
- 時間
- [拝観時間]8:30-17:00(受付は16:30まで)
- 料金
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【拝観料】
[大人・大学生]1,000円
[高校生・中学生]400円
[小学生]200円
【新宝蔵】
[大人・大学生]200円
[高校生・中学生・小学生]100円 - 駐車場
- あり(150台)
- クレジットカード
- 不可
- 電子マネー/スマートフォン決済
- 不可
- コンセント口
- なし
- 喫煙
- 不可
- 滞在目安時間
- 30-60分
情報提供: ナビタイムジャパン
クチコミ
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- 思ったよりコンパクトな世界遺産
- 近鉄西ノ京駅から歩いていける所で、大きな金堂をはじめ奥にある鑑真和上御廟まで、コンパクトに配置されていて、奥まで行く途中には一面きれいなコケに魅了されます。盲目になりながらも6度目でやっと渡日を果たして、修行の場を開いたことを本の中で習いますが、ここに来てみると実在を肌で感じます。
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- 大迫力の3体の仏様
- 平日の夕刻だったせいなのか、静かで観光客も少なかったです。そのせいだけではないでしょうが、静謐で厳かな感じのする寺院でした。金堂はその建物の大きさや柱の立派さ、そしてお祀りされている大きな三体の仏様に圧倒されます。特に左にいらっしゃる千手観音立像は、ほれぼれするほどに美しく神々しい。ずっと見ていたくなり、見てました。そんなわけで肝心の鑑真和上様を拝む時間がなくなり、ちょっと後悔。
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- 歴史的建造物
- 静謐な感じでいいのですが、宗教施設としてのアクティブな感じはなく、歴史的建造物という感じですね。その点は同じ西ノ京の薬師寺は好対照ですね。若い頃は唐招提寺のほうを評価していましたが、年とってからむしろ薬師寺のほうが好きになりました。
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