大阪市中央公会堂

赤レンガに白の花崗岩でアクセントをつけた大正期の名建築

大正期のネオ・ルネッサンス建築様式を今に伝える

レトロな歴史的建造物が立ち並ぶ中之島界隈にあって、シンボル的な存在が1918年(大正7)に建てられた「大阪市中央公会堂」だ。現在も文化や芸術、社会活動の場として活用される現役の公共施設ながら、壮麗な赤レンガの建物をひと目見ようと訪れる人はあとを絶たない。北浜の株式仲買人だった岩本栄之助氏が「誰もが利用できる場所を」と、私財を投じて建設し、大阪市に寄贈したもので、設計には東京駅などを手がけた建築界の重鎮・辰野金吾氏が関わったことでも有名。ネオ・ルネッサンス様式を基調にしつつ、バロック的な壮大さを加味した意匠が特徴で、各部屋もステンドグラスやシャンデリア、階段や扉にいたるまで、当時の技術の粋を凝らした圧巻の建物だ。

かつて来館者を迎えていた南側出入り口。「雨天のための公衆のために」と、長いひさしを設けたと伝えられる

ガイドツアーに参加して特別室へ！

通常、自由に見学できるのは地下1階の「展示室」と「自由見学エリア」のみ。しかし、ガイドツアーに参加すれば、多彩な芸術が集結した「特別室」も見学できるので、これを利用しない手はない。ガイドツアーで見学できる3階の「特別室」は、創建当時は貴賓室として使われた貴重な空間。明治の洋画家・松岡壽(まつおかひさし)氏が描いた日本神話の世界が天井や壁面を彩る。窓に配した鳳凰がデザインされた華やかなステンドグラスも美しく、その壮麗さに誰もが嘆息するというのも納得だ。(ガイドツアーは各日2回開催10:00～10:30/11:00～11:30、「ベーシックコース」30分ガイドツアー500円、「ランチ付きコース」30分ガイドツアー＋ランチ付きコース2500円。※要予約、不定期開催)

特別室の天井画は、伊邪那岐(いざなぎ)と伊邪那美(いざなみ)が国造りのために天の沼矛(あめのぬほこ)を授かる場面が描かれる

華やかなステンドグラスの向こうに中之島のビル群が映る

自由見学OKな地下1階フロアで創建当時の歴史に触れる

予約なしに自由に見学できるのが、地下1階のフロア。外壁にも使われている赤レンガをはじめ、創建当時の椅子などが見られるほか、展示室では公会堂の約100年間の歴史に触れることができる。戦後はヘレン・ケラーやガガーリンがここで講演を行ったこともあったそうで、当時のゆかりの品を見ることも。また、レストランもあり、レトロモダンな空間で小休止するのもおすすめだ。そして、地下1階事務室ではオリジナルのグッズも販売され、来館の思い出に購入するのもおすすめ。

展示室は岩本氏ゆかりの品や近代大阪の名建築物の資料などを展示。事務室ではオリジナルグッズを販売

館内には絢爛豪華なホールも健在

ほかにも館内には、数多くの著名人による講演会や国際的な一流アーティストによるコンサートなどが行われた歴史あるホール「大集会室」や、宮殿の大広間をほうふつとさせるヨーロピアンスタイルのホール「中集会室」、木目調の温かみのある「小集会室」など、100年もの歴史と多くの意匠が詰まった特別な空間も存在する。ただ、現在も現役で稼働している公共施設のため、各集会室の見学は不可。どうしても見学したい人はコンサートや講演会などのイベントに参加するのがおすすめだ。

大集会室はモダンなシャンデリアや金箔に覆われた舞台縁など、細部まで創建当時の姿にこだわった重厚で荘厳な雰囲気が漂う

アーチ状の高い天井が印象的な中集会室。シャンデリアは創建当時のもの