恩賜箱根公園

湖畔展望館2階バルコニーは芦ノ湖と富士山とを一望できる絶景ポイント

箱根離宮の建設と変遷

1884年(明治17)、当時日本に招かれていたドイツ人医学者ベルツの進言により、離宮を箱根堂ヶ島に建設する計画が伊藤博文によって建議された。箱根離宮は1886年(明治19)年に完成。現在の「湖畔展望館」の場所に、3000平方メートルにも及ぶ西洋館と日本館が建てられた。箱根離宮は皇室の避暑や保養だけではなく、各国の賓客をもてなす場としても使われていた。しかし1923年(大正12)の関東大震災により西洋館が大きく被災し取り壊され、日本館も半分の規模に。さらに1930年(昭和5)に起きた北伊豆地震で日本館の多くが壊れ、1886年(明治19)の完成当時に比べ、規模は7分の1までに縮小された。箱根離宮は1945年(昭和20)に神奈川県に下賜され、1946年(昭和21)から恩賜箱根公園として一般に公開され利用が始まった。

中央園路は箱根離宮の時代から使われていたメインの通路だ

中央園路を上り切った場所には門があった。湖に向かう通路左手の林のなかに、今もなお当時の門の柱頭が遺されている

まずは中央広場を目指して散策を

湖畔展望館のある中央広場は公園で最も標高が高い場所にある。中央広場までのアクセス路は複数あるが、駐車場横の中央門から延びる「中央園路」を使うといい。最初は階段が続くが、ほどなく坂道になり、湖側に歩を進めると芦ノ湖の絶景が目に飛び込んでくる。芦ノ湖と富士山を一望できる場所としては「湖畔展望館」と「弁天の鼻展望台」がおすすめ。恩賜箱根公園は、箱根エリアでは唯一「関東の富士見100景」のひとつとして選ばれている。湖畔展望館の1階には箱根離宮の歴史を紹介する展示室がある。

箱根離宮の西洋館をイメージさせる湖畔展望館。前庭には当時の西洋館の礎石が残る。広大な建物だったことがわかる

視界がより開けている弁天の鼻展望台。芦ノ湖と富士山、駒ヶ岳方面まで見渡すことができる

園内をくまなくまわるなら

一筆書きで巡ることはできないが、中央園路から中央広場に上り、離宮時代そのままの景色が残る「二百階段」を途中まで下りて往復、さらに北側の「ヒメシャラ林」を目指し南へと下るのがおすすめだ。「弁天の鼻展望台」からは中央広場に戻り「塔の鼻広場」に向かうゆるやかな下りルートと、急な坂を下る健脚向けの「湖畔路(自然探勝路)」を進むルートがある。塔の鼻広場は箱根離宮の時代から残る広場で、弁天の鼻展望台ほど視界は開けていないが、箱根町方向から箱根園方向までを見ることができる。塔の鼻広場からは少し急な道を下り「湖畔の広場」を経由し「草花の丘」へ。草花の丘からは3分もかからず駐車場に戻る。時間が許すなら、さらに「藤棚広場」まで足を延ばすといい。「かながわの橋100選」に選ばれている「芦川橋」はここにある。このまま湖畔沿いの歩道で元箱根まで歩くこともできるし、駐車場まで戻って国道1号を渡り、箱根旧街道の杉並木を通って元箱根まで歩くのもいい。元箱根までは徒歩10分強の距離だ。

箱根離宮時代の面影を残す二百階段。苔むした景色も美しい

「藤棚広場」近くでは、深い谷間にいるような景色を見ることができる