弥山
原始林に包まれた「神の山」が、宮島のもうひとつのシンボル
世界遺産「嚴島神社」の構成資産
宮島の中央部、嚴島神社の背後に、島の最高峰・弥山(標高535m)がそびえ立つ。山域には太古からの原生林が残り、「弥山原始林」(国の天然記念物)と呼ばれる。そして、弥山の山頂を含む嚴島神社の背後の山域一帯が、ユネスコ世界遺産「嚴島神社」の登録区域とされている。宮島といえば嚴島神社だが、世界遺産「嚴島神社」とは、朱塗りの社殿群だけを指すのではない。弥山は「神の島」宮島の中心として、古来、崇拝されてきた山だ。巨岩・奇岩が林立する山頂付近には、御山(みやま)神社と密教修験の堂宇が立ち並び、いかにも山岳信仰の聖地らしい趣がある。また頂上からの展望がすばらしく、かつて初代内閣総理大臣・伊藤博文(いとうひろぶみ)も、「宮島の真価は弥山頂上からの眺めにあり」と讃えた。宮島が「日本三景」とされているのも、この眺望ゆえともいわれる。その山上へは、「宮島ロープウエー」で山頂手前まで手軽に登ることができる。宮島を深く知り、いっそう楽しむためには、嚴島神社だけでなく、ぜひ弥山にも訪れたい。
密教修行の場としての歴史をもつ
ロープウエーで登り着いた獅子岩駅は標高433m。駅のそばには「獅子岩展望台」があり、ここからも瀬戸内海が眺望できる。弥山の山頂へはここから約1km、アップダウンのある山道を歩いて30分余りの小さなハイキングになるので、マイペースで行こう。山頂の手前には弥山本堂、弥山の守護神・三鬼大権現(さんきだいごんげん)を祀る三鬼堂、弘法大師修法の霊火を守る不消霊火堂(きえずのれいかどう)などが立ち並ぶ。これらは高野山真言宗大本山大聖院(だいしょういん)の諸堂だ。霊火堂の「きえずの火」は、806年(大同元)に弥山を開山した弘法大師・空海が護摩修行を行い、その際の火が現在にいたるまで絶えることなく焚かれ続けてきた霊火だという。その火で沸かされた大茶釜の霊水(湯)を飲めば万病に効くといわれ、また、その火は広島平和記念公園の「ともしびの火」の元火でもある。パワースポットとして注目されるばかりか、燃え続ける火は「燃え続ける愛の炎」につながるということで、「恋人の聖地」ともなっている。
眺望と巨石巡りを楽しむ
堂宇が並び立つ場所から石段道を登り、不動岩やくぐり岩などの巨石群を抜ければ、絶景の弥山展望台が立つ頂上はすぐそこだ。展望台からは嚴島神社を眼下にし、瀬戸内海の多島美のパノラマビューを満喫できる。弥山本堂や不消霊火堂が立つ場所から山頂展望台へは周遊ルートがあるので、絶景を堪能したあとは巨岩巡りを楽しもう。帰路はもと来た道を獅子岩まで戻ってロープウエーで下ればいいが、弥山の自然をさらに満喫するには歩いて下るのも一案だ。下山路は大聖院に下るか、紅葉谷公園に下るのが一般的。大聖院コースは古くからの参詣道で、延々と石段道・石畳道が続き、町石(ちょういし)や石仏、白糸の滝を見られる。紅葉谷コースは谷間を下り、途中で巨岩・奇岩を見られる。どちらもおよそ1時間30分でふもとまで下れるので、好みで下山路を選ぼう。宮島を堪能するには、できれば島内で1泊して、1日目は嚴島神社を中心に、2日目は弥山を中心にプランを組むなど、スケジュールに余裕をもって旅を楽しみたい。
スポット詳細
情報提供: ナビタイムジャパン