冠稲荷神社

木々の緑と木漏れ日に映える美しい拝殿は、市重要文化財。1746年(延享3)建築、1799年(寛政11)改築

平安の古から人々を癒やし続けた鎮守の森

太田市を通る国道354号線沿いにある小さな森。入り口に立つ大鳥居をくぐった瞬間、外界の喧騒から切り離され、とたんに静ひつな空気に包まれる。木々の間を進み、まずは拝殿へ。朱色の鮮やかな装飾が木々の緑に映えて美しい。しばし、その美しさを鑑賞して参拝を済ませると、境内の散策へ。始まりは平安時代と伝わる冠稲荷神社は、伏見や豊川などと並ぶ「日本七社」といわれる由緒あるお社だ。縁結びの神様として名高く、多くの信仰を集めている。境内には、本殿・拝殿とともに市の重要文化財に指定されている「聖天宮(しょうてんぐう)」をはじめ、厳島社や八坂社・神楽殿、諏訪社、菅原社などが鎮座している。なかでも、「実咲社(みさきしゃ)」は、縁結びや子宝、安産、子育てなどの神様として広く知られる。参拝に訪れた人を迎えてくれる神狐さまに、人生が豊かになるような良縁に恵まれますように……そんな願いを込めて祈った。

静かな森の入り口に立つ荘厳な鳥居が訪れる人を迎える

1690年(元禄3)に再建された、三間社(さんげんしゃ)流れ造り建築の本殿。華麗な彫刻が施されている

1857年(安政4)に再築された聖天宮は、縁結び、夫婦和合、災難・ストーカー除けのお社。市重要文化財

縁結び狐、子宝狐、安産狐、子育て(初宮七五三)狐など、神狐が守る「実咲社」

良縁と子宝を叶える伝説が伝わる木瓜の大樹

実咲社の近くに繁る大きな木瓜(ぼけ)の木も、冠稲荷神社の見どころのひとつだ。500株もの木が集まって1本の大木のように生い茂っている。樹齢400年を超え、県の天然記念物に指定されている。この「冠稲荷の木瓜」には、縁結びと子宝の伝説が伝わる。その昔、子どもができずに悩んでいた女性が修験者から授かった木瓜の実を飲むと、良縁と子宝に恵まれたという。400年以上も、縁結びと子宝を願う人々を見守り、その願いを叶えてきた木瓜の木の周囲には、今もたくさんのおみくじが結ばれている。3月中旬から4月上旬には、木瓜は開花シーズンを迎え、真っ赤な小さな花で覆われる。桜の開花と相まって、辺りは華やかな色彩で満たされる。

「冠稲荷神社の木瓜」。開花シーズンには「春の花まつり」、実が実る9月には「木瓜の実収穫祭」を開催

心地よいカフェと自然にパワーをもらう癒やし時間

境内の散策を済ませたあと、併設されている結婚式場のカフェに立ち寄った。落ち着いた雰囲気のなか、座り心地のよいソファでくつろぐ。手作りの「ぱいしゅー」とアイスコーヒーをオーダー。さっくりとした生地に甘さ控え目のクリームをたっぷりからめていただく。軽い口あたりで何個でもいけそうなおいしさだった。メニューはほかにも「宮の森カレー」やキッシュ、ワッフルなどもあり、軽い食事も楽しめる。冠稲荷神社は、春には花、秋には紅葉も楽しめる、四季折々の自然の美しさが大きな魅力。心静かに過ごしたいとき、何度でも訪れて、時を忘れて自然と神狐さまの癒やしのパワーをチャージしたい。

サクサクの「ぱいしゅー」は、お土産にも喜ばれそう

秋には木々が色づき、色彩がいっそう鮮やかに。地面はイチョウの葉に敷き詰められて黄色い絨毯に