鎌倉市農協連即売所

さまざまな色や形の唐辛子が種類豊富にそろう

誰でも気軽に立ち寄れる野菜市場

鎌倉駅東口から若宮大路に出て右折すること3分、下馬(げば)交差点近くに鎌倉市農協連即売所はある。発足したのは1928年(昭和3)。当時、外国人牧師のアドバイスを受けて、今では当たり前になっているヨーロッパのマルシェを模した、農家が集うスタイルで直売所をスタートさせた。はじめは鶴岡八幡宮の参道に出店したが、若宮大路のお茶屋さんの休憩所を経て現在の地に。今どきのおしゃれなテント下などではなく、ちょっと古ぼけた薄暗い建物のなかの簡易的な台の上に野菜が並べられているのだが、毎日、地元、都内問わず、有名レストランのシェフや地元客、観光客がひっきりなしに集まってくる。

レトロ感たっぷりの薄暗い入り口だが、中に入ると色とりどりの野菜が出迎えてくれる

雨の日でもやってくる常連客たち

鎌倉やさいってどんなもの？

鎌倉やさいには、京都の加茂ナスや丹波の丹波栗のような特別な品種があるわけではない。ふだん使いの見慣れた野菜から海外原産の珍しい野菜まで品種は多岐にわたる。こだわりの栽培方法は各自異なるが、鎌倉市と横浜市長尾台町の生産者が、安全安心、そして新鮮なものを直接お客さんに届けるのが鎌倉やさいだ。横浜市長尾台町が加盟しているのは、発足当時はまだ長尾台町が鎌倉郡に属していたため。立ち上げ時代の仲間が今もこの即売所に集まっているのだ。鎌倉やさいは葉物がどれも青々としているのも特徴のひとつ。実際、買って帰ってみるとふだん食べているものよりシャキシャキと歯切れも良く、味の濃いのがわかる。鎌倉やさいには懐かしい野菜本来の甘みやほのかな苦みが感じられた。

鎌倉の住民はふだん使いに即売所を使う

生産者たちの飾らない接客が魅力

即売所は「レンバイ」と呼ばれ、常連客に親しまれている。「レンバイ」には現在、21軒の生産者が加盟していて、4班に分かれて4日ごとにローテーションを組んで出店する。生産者にもよるが、野菜は朝8時頃から並び始め、閉店は野菜がなくなるか日没まで。1軒が出品する野菜はだいたい30種類くらいで、季節野菜のほか、プロの料理人たちに人気の西洋野菜もそれぞれのブースに所狭しと並んでいる。南アメリカ原産のバターナッツカボチャやイタリア原産のカリフラワーにも似たロマネスコ、コールラビや渦巻模様のビーツ、また唐辛子は辛くないものから激辛なものまで、都内のデパートなら高値の珍しい野菜もある。ふだん使いの野菜でも、採れたてのものを町のスーパーより手頃な値段で買うことができる。

お手頃価格の野菜の山は、1つ欠け、2つ欠け、歯抜けになっていくので、午前中には訪れたい

こだわりの野菜を求めて開店直後は多くの料理人で込み合うが、10時頃になると比較的ゆっくり見ることができる。「レンバイ」では、生産者の顔が直接見えるのもうれしいポイント。生産者によって得意な野菜が異なり、4グループのなかのお気に入りの農家が出店している班の日を目指して買いに来る常連客もいる。野菜を売る生産者には気さくに話しかけてみよう。手塩にかけた野菜を見る彼らの目はやさしい。見たこともない野菜や見慣れない名前の野菜も聞けばていねいに答えてくれる。きれいな色の珍しい野菜も料理法を教えてもらえるので、臆することなく買うことができた。

2班の秋本さん。わからないことは聞いてみよう

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