円覚寺
寺域全体が史跡に指定される、約6万平方メートルもの鎌倉の巨刹
重層門の山門は神奈川県の重要文化財。1785年(天明5)、江戸時代に再建された。中央には伏見上皇勅筆の扁額がかかっている
JR北鎌倉駅の真横に立つ
大勢の観光客で賑わうJR鎌倉駅の1つ手前のJR北鎌倉駅は、豊かな緑に囲まれた小さな駅舎が「古都鎌倉」を感じさせる。そのJR北鎌倉駅の東口を抜けるとそこはもう円覚寺の境内だ。円覚寺は鎌倉時代に開山されたが、明治時代にJR横須賀線が開通したとき境内を横切るように線路が敷かれた。総門手前には国の史跡・名勝の指定を受ける白鷺池(びゃくろち)があるが、境内のこの池に架かる橋と参道に線路が走るという不思議な空間ができあがった。とはいえ、境内を通過するJR横須賀線というのも円覚寺ならではの光景なので、楽しみながら総門に向かおう。
JR横須賀線が横切る参道の先に総門があり、電車が通過する姿を見ることができる
この寺は、1274年(文永11)と1281年(弘安4)の蒙古による日本侵略「文永・弘安の役」で戦死した兵士たちを弔うために、1282年(弘安5)、鎌倉幕府8代執権・北条時宗が南宋の禅僧・無学祖元(むがくそげん)を迎えて建立した。円覚寺という寺名は創建時、大乗経典のひとつ『円覚経(えんがくきょう)』が出土したことに由来している。ところで円覚寺は「えんがくじ」と読み方がにごるのだが、「えんかくじ」と思っている人が少なくない。それは「覚」の字が常用漢字では「かく」としか読まないからなのだろうが、鎌倉では円覚寺以外にも本覚寺など「覚」をにごって読む寺がいくつかあるので間違えないようにしたい。
弓を横にしたような美しい屋根をもつ唐門
円覚寺は鎌倉独特の谷戸(やと)と呼ばれる丘陵地の谷に建てられ、主要建物が直線状に並ぶ伽藍(がらん)配置になっている。山門に入ると見えてくる仏殿は伽藍のちょうど真ん中辺り。仏殿には本尊・宝冠釈迦如来が祀られており、行事が行われるとき以外は拝観することができる。仏殿を少し上がった先には方丈がある。本来方丈は住職などの住む建物のことだが、現在円覚寺では各種法要、坐禅の会、毎年11月の文化の日前後に行われる重要文化財などを虫干しするための行事「宝物風入(ほうもつかぜいれ)」など、さまざまに利用されている。方丈の正門に当たる唐門(勅使門とも呼ばれている)の建築様式は日本古来のもので、扉や屋根に施された龍や雲、波濤(はとう)のレリーフは必見。円覚寺を訪れたならこの見事な彫刻は忘れずに見ておきたい。
仏殿に祀られるのは木造の本尊宝冠釈迦如来。天井の立派な『白龍図』は日本画家の前田青邨(せいそん)監修、守屋多々志(ただし)作
唐門(勅使門)。日本特有の建築技法・唐破風(からはふ)を用いた中央から左右に美しい曲線を描く屋根
創建当初から四季折々に美しい放生池
「佛牙舎利(ぶつげしゃり)」というお釈迦様の歯が祀られている国宝・「舎利殿」の手前にあるのが「妙香池(みょうこうち)」だ。もともと妙香池は捕獲した魚などを生きたまま放つ池・放生池(ほうじょうち)だった。この池は岩盤を掘り下げて造られており、周りにさまざまな樹木が植栽された。1932年(昭和7)、総門前の白鷺池とともに国の史跡・名勝に指定。2000年(平成12)には江戸時代の絵図をもとに、方丈の裏の心字池と一体となるように復元されている。
妙香池。左端の中央より少し上・向こう岸の露出した岩盤は、よく見ると虎の頭のようで、「虎頭岩(ことうがん)」と呼ばれている
鎌倉最大の梵鐘と弁財天を祀る弁天堂
山門から仏殿、方丈、妙香池などを見てまわり、最後に参道をはずれた仏殿脇の小道に入ると長い長い階段が続いていた。かなり急な狭い石段に一瞬躊躇したが、この先には国宝・洪鐘(おおがね)があるという。くじけそうな心を奮い立たせて140段以上ある石段を上る。上り切ると視界が開け、気持ちいい風に疲れも吹き飛んだ。右手にある茶屋からの眺めは見事で、眼下に東慶寺も見えている。階段を上がった正面は弁天堂だ。9代執権・北条貞時は洪鐘鋳造の際、2度の失敗ののち江の島弁財天に祈願し、3度目で成功。洪鐘の完成から「弁財天に祈ると願いが叶う」として、弁財天を円覚寺の鎮守として祀り、弁天堂を建立したといわれる。
長い急階段の先に洪鐘と弁天堂がある。弁天堂脇の茶屋からの眺望がすばらしい
弁天堂。御神体は「洪鐘大弁財功徳尊天(こうしょうだいべんざいくどくそんてん)」
お目当ての洪鐘は高さ259.5cmもある堂々たるたたずまいで、弁天堂の左手前に祀られていた。悠々としたシンプルな形の鐘なのだが、よく見ると乳首状の突起が美しく並び、ていねいな細工が施されていることがわかる。貞時が国家安泰を願って1301年(正安3)に寄進した名工・物部国光の鋳造、撰文は南宋出身の僧・西礀子曇(せいかんすどん)による。円覚寺には広い境内のあちこちに多くの寺宝が祀られていた。山門から徐々に上っていく壮大な空間をつくり出す伽藍配置も鎌倉ならではのもの。駅前と思って通り過ぎるにはもったいない、鎌倉時代にタイムトリップできる名刹だ。
スポット詳細
- 住所
-
神奈川県鎌倉市山ノ内409
地図
- エリア
- 鎌倉エリア
- 電話番号
- 0467220478
- 時間
-
[3-11月]8:00-16:30
[12-2月]8:00-16:00 - 休業日
- 無休(台風や雪の為、休みとなることもあり)
- 料金
-
【拝観料】
[大人]500円
[小中学生]200円 - 駐車場
- なし(近くのコインパーキングのみ)
- 電子マネー/スマートフォン決済
- 不可
- Wi-Fi
- なし
- コンセント口
- なし
- 喫煙
- 不可
情報提供: ナビタイムジャパン
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- 鎌倉臨済宗第二位のお寺です。1282年に北条時宗公により創建元寇の役で戦没した多くの御霊を弔う為に創建。ご本尊は宝冠釈迦如来です。火災で創建当時の像は頭部のみだそうです。
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- 神奈川唯一の国宝建築物
- 北鎌倉駅からすぐにある禅宗のお寺です。鎌倉時代の元寇で有名な北条時宗が開祖です。総門を抜け、階段を上ると立派な山門があります。神奈川県唯一の国宝の建築物舎利殿が有名ですが、別のお寺から移築された建物です。ただし、正月など限られた日以外は、門の外の遠くからしか見ることはできません。また、階段を上っていくと同じく国宝の鐘楼があります。ここからが富士山がきれいに見えます。
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