うさぎのち毒ガス跡、ときどきラピュタ(瀬戸内・大久野島)


2015.02.20

LINEトラベルjp 旅行ガイド

瀬戸内海の広島県竹原沖に浮かぶ大久野島を語るとき、枕詞のようについてまわる二つの言葉、それは「うさぎ」と「毒ガス」。
今でこそ国民休暇村に指定され、数百匹もの野生のウサギを目当てにやってくる観光客も多く、平和この上ない島ですが、戦争中は日本軍がここで戦闘用の毒ガスを製造していたことで、地図にも書かれていない、平和とは正反対の島でした。
今でもこの島に来ると、その陽と陰の両面をみることができます。
船を降りると、まずはうさぎ軍団がお出迎え。
大久野島には、JR呉線の忠海(ただのうみ)駅から徒歩5分ほどの忠海港から船に乗って約12分で到着します。
大久野島の港に降り立つと、いきなりウサギさんチームの大群が。
大久野島にいるウサギは700匹とも800匹とも言われていますが、この桟橋付近と大久野島ビジターセンター付近、そして島の中心となる休暇村付近に比較的数多くいるようです。
大久野島にやってくる観光客の大半がうさぎとのふれあいを目的にしているため、彼らは非常に人間慣れしていて、こちらが近づいて行くと、彼らも逃げずに近寄って来ます。ただし餌を持っていないことがわかると、すぐにあっさりと去っていきます。現金なものです。
こんなふうに大久野島は、平和で微笑ましいうさぎの楽園、といった第一印象からはじまります。
隠されていた事実を語る、毒ガス資料館
うさぎたちと戯れながら桟橋からゆっくり歩いて約15分、島の南側の海岸沿いに出て、大久野島ビジターセンターが見えてくると、その向かいに大久野島毒ガス資料館が現れます。
大久野島では、1929年から極秘に毒ガス製造が行われ、1945年に太平洋戦争が終わるまで続いていました。戦時中の大久野島は地図から消され、また戦後も化学戦の実態は慎重に秘匿されていたため、日本軍が毒ガスを製造していたということは、1984年に報道がなされるまで、ほとんど知られていませんでした。
毒ガスを製造する過程で犠牲になった多くの人々など、その後明らかになった痛ましい事実を後世に伝えるため、関係者からよせられた当時の資料を展示し、建設されたのがこの毒ガス資料館です。
ビジターセンター、毒ガス資料館を過ぎると、見えてくるのが島の中心、休暇村大久野島。ここから先は人もうさぎもグッと少なくなりますが、大久野島の陰の部分、戦争施設跡はここから先が本番となります。
廃墟と化した毒ガス貯蔵庫跡
休暇村大久野島を過ぎると、休暇村関連の施設がしばらく海岸に沿って続くものの、なんとなく荒涼とした雰囲気になってきます。
そんな中、休暇村の裏手あたりにまず現れるのが、三軒家毒ガス貯蔵庫跡。トンネルのような穴が並ぶコンクリートの建物の中には猛毒で皮膚がただれる、びらん性毒ガス「イペリット」という、説明を聞くだけでも恐ろしい毒ガスが貯蔵されていたそうです。
そしていくつか残っている貯蔵庫跡の中でも最も大きいのが長浦毒ガス貯蔵庫跡(写真)。終戦後、残った毒ガスを火炎放射器で焼いた跡としてコンクリート内部の壁が黒々と焦げついています。
崩壊の危険性があるため、残念ながら中は立ち入り禁止ですが、その廃墟っぷりは、長崎の軍艦島に通じるものがあります。
廃墟と化した毒ガス貯蔵庫跡
そのまま島の北部に進み、少し高台に登ったところにあるのが、北部砲台跡。
毒ガス工場とは別に、この島は芸予要塞の一角として日露戦争の頃から海上保安のための砲台がいくつも設置されていたそうです。山肌をくりぬいて作られた赤いレンガ造りの弾薬庫が並んでいます。
北部砲台から登りの階段となっている遊歩道をしばらく進むと、島の頂上付近の広い敷地に中部砲台跡が現れます。
大久野島の砲台跡は、全国の砲台跡の中でも最も完全な形を残しているらしく、たしかにレンガの弾薬庫がずらっと並ぶさまは壮観で、朽ち果てた感じはありませんでした(写真)。
和歌山にある友が島には及びませんが、この大久野島にも天空の城ラピュタの世界観がある、と言われることがあります。夏場のもう少し緑が多い時期になって、こうした戦跡の壁が苔むし、蔦も絡まってくると確かにそんな雰囲気になるのかもしれません。
大久野島を代表する廃墟、発電所跡
中部砲台のすぐ近くには展望台があって、島の頂上部から瀬戸内の景色が一望できます。このあたりに来ると、うさぎ軍団が再び目立つようになってきます。彼らも観光客の多いところがしっかりわかっているようです。
展望台からは桟橋方面へと下る道がありますので、急いでいる場合は北部砲台へ戻らずに、そのまま桟橋まで行くことができます。
長い坂を下ったところ、桟橋の手前にあるのが、発電所跡(写真)。ここも毒ガス工場を操業するための発電を行っていた関連の施設です。短いトンネルを抜けると、コンクリートと鉄骨だけになった姿で、今もなお残っています。
そんな凄惨な建物の前でも、何匹かのうさぎが餌を食べたり、飛び跳ねたりしているのが、軍艦島や友が島など、他の廃墟の島々とは違う、この大久野島の大きな特徴です。
一周して初めてわかる、大久野島のシュールな魅力。
このように大久野島一周を天気予報風に表現すると、うさぎのち毒ガス跡、ときどきラピュタ(砲台)、ところによりまたうさぎ、という感じの、とてもシュールな島であることがわかります。
一周約4.3キロという小さな島ですので、ゆっくり歩いても2時間ほどで一周できます。また、休暇村のレンタサイクルを利用すればもっと手軽に回ることができますが、中部砲台や展望台に行くのであれば、途中、階段もありますので徒歩の方がいいでしょう。
うさぎだけではない、大久野島のもう一つの側面もぜひご覧いただきたいと思います。 

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大久野島〔第二桟橋〕
place
広島県竹原市忠海町
no image
大久野島毒ガス資料館
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3.5

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place
広島県竹原市忠海町大久野島
phone
0846263036
opening-hour
9:00-16:00

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