東京「メソポタミア」世界最大の民族がつくるクルド料理レストラン


2021.05.21

トラベルjp 旅行ガイド

チグリス川、ユーフラテス川が流れるメソポタミア地域に起源を持つクルド人。国を持たない世界最大の少数民族といわれ、4,500万人以上が世界中で暮らすなか、東京の十条周辺には多くのクルド人が暮らしています。そして、「メソポタミア」は家庭的なクルド料理をいただける全国でも希少なレストラン。コロッケのようなキョフテをはじめ、シンプルに素材の味を生かした料理は食べやすく、同時に旅気分も味わえると評判です。
異国情緒に胸が高鳴るレストラン
メソポタミアがあるのは十条駅の目の前。実は十条のすぐ北の川口市、蕨市にかけての一帯には2,000人近いクルド人が暮らしているといわれ、クルド人の居住域を意味するクルディスタンをもじって、ワラビスタンと呼ばれているほど。
日本初のクルド料理レストランを謳っているだけあり、空間全体がクルド文化一色。深い群青色に染まった店内に、赤や緑など鮮やかな原色を連ねたカバーが映える傍ら、壁には赤・白・緑の三色旗に生命や明かりを象徴する太陽が描かれたクルド人の旗が飾られています。
少しでもクルドについて知ってほしいという想いから、壁にはクルド文化や歴史に関する写真や装飾品を展示。
クルド人に関する史跡はトルコやイラン、シリアなど広域にわたり、その一帯に現在もクルド人の多くが暮らしているのです。
多くがイスラム教を信仰する一方、キリスト教やユダヤ教、ゾロアスター教を選ぶなど宗教観は寛容な様子。
複数の宗教が混合したクルドの民族宗教といわれるヤジディー教では、孔雀を聖なる動物として崇めるなど、新しいことを知れば知るほど興味の扉が開かれていき、店内を隅々まで見渡したくなるはず。
多数メディアに出演しているワッカスさん
オーナーのワッカス・チョーラクさんはトルコ出身のクルド人。大学でクルド語を教えながら、クルド語辞典を日本で初めて編さんするなど、日本とクルドの架け橋として活動中。
「移民や難民という印象が強いクルド人ですが、クルドの豊かな歴史や文化をぜひ知ってもらいたいです」と、流ちょうな日本語でクルドについて色々と教えてくれます。
遊牧生活で発展したクルド料理
遊牧民という歴史的背景から羊肉に関する料理が多め。特にローストした料理を意味するケバブでは、羊のもも肉やひき肉、心臓など多くの部位が使われ、さらに羊肉以外にも鶏肉のケバブがあります。
そしてランチセットにも登場する人気メニューが「キョフテ」。肉料理の一種で、牛のひき肉にスパイスや玉ねぎを加え、カラッと揚げたコロッケに近いもの。
スパイスの香ばしさに食欲もそそりますが、珍しいのが外側の衣。ブルグルという小麦粉を使用し、クスクスのような弾力があり、噛めば噛むほど素材それぞれの旨みが口内に広がります。
そして、クルド人に欠かせないのがヨーグルト。食事の一品だけでなく、スイーツや飲み物にも登場する万能な食品です。
ヨーグルトスープは、さらっとしたヨーグルトにミントとキュウリが加わったもの。さっぱりとした味わいはキュウリのシャキシャキ感との相性が良く、微かにミントの香りが鼻孔をくすぐるという、夏の時期や味が濃い食べ物と一緒にいただきたい、そんなメニューです。
クルド文化はスイーツやドリンクにも
数種類のクルド料理を味わえるメソポタミアセットや、野菜をふんだんに使うベジタリアン料理のほか、スイーツも充実。
「バクラワ」は、ピスタチオをパイ生地で包んだペイストリー。はちみつをたっぷり浸み込ませた生地は、しっとりとした柔らかさで、自然の優しい甘味に自ずとにんまりと笑みがこぼれます。
伝統の銀細工が施されたカップでいただくコーヒーは、一口ずつゆっくりと味わいたいもの。ピスタチオを焙煎した「クルドコーヒー」には、胃腸を整えるカルダモンやシナモンなど香辛料がブレンドされ、芳醇さが引き立ちます。
コーヒーのほか、チャイや手作りヨーグルトドリンク、そしてジュースもザクロ、あんず、さくらんぼと珍しい果物を使ったものが多数。
アルコールも注文でき、カクテルにはザクロジュースをジンで割った「ヘナール」、さくらんぼジュースとジンの「インジャーズ」、あんずとオレンジ2種のジュースをジンで割った「ファーテマ」など。その珍しい名前に興味がそそられます。またビールとシシケバブがセットのほろ酔いセットという日本らしいメニューもあり、仕事帰りに頼む人が多いのだとか。(東京都の緊急事態宣言にともない、酒類の提供は終日中止)
食べることは知ること
クルド人は世界で最も古い民族の1つといわれ、そのためクルド料理は周辺の西アジア料理やトルコ料理とも類似しています。食文化とは1つの土地に収まるのではなく、国を超えて交流・影響し合うもの。メソポタミアという広範囲なエリアで培われたクルド料理だからこそ、店名の「メソポタミア」がしっくりと馴染みます。
多くの人が集まる東京は日本各地に加え、海外出身者も多数。和食だけでなく、馴染みがない多国籍な料理がいただけるのも東京ならではの情緒、味なのかもしれません。ワラビスタンでシルクロードより伝来した古代文明に想いを馳せてみてはいかがでしょうか。 

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クルド料理 メソポタミア
place
東京都北区上十条1-11-8 3F
phone
0359488649
opening-hour
11:00-23:00
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