点在する井戸を辿る!信州「まつもと城下町湧水群」めぐり


2020.11.27

トラベルjp 旅行ガイド

北アルプスを背景にした国宝松本城に代表される信州松本は、城下町の面影を残す街並みを歩く楽しみがあります。街なかには市内を囲むように流れる女鳥羽川、田川、薄川、奈良井川の伏流水による幾つもの湧水があり、それらを合わせた「まつもと城下町湧水群」は、「平成の名水百選」にも認定されています。ペットボトル片手にあちこちで見かける井戸を辿りながらぶらりと散策する「まつもと水巡り」3コースに出かけてみませんか。
水の生まれる街コース:水源からスタート
「水の生まれる街コース」のスタートは「源地の水源地井戸」から。松本駅から国道143号を進んだ美術館西交差点近くにあり、江戸時代から現在まで利用されている松本市の水源のひとつです。この湧水は、水量豊富で毎分150リットル湧出し、現在は井戸から揚水し、一度水槽で受けてから直接配水されています。硬く重めで、健康になりそうな水ですよ。
<源地の水源地井戸の基本情報>
住所:長野県松本市中央4-1-1
アクセス:JR松本駅から徒歩約15分
「源地の水源地井戸」から徒歩約7分、400年前から市民に親しまれる井戸「源智の井戸」は、城主小笠原貞慶の家臣・河辺縫殿助源智の持ち井戸だったことが名前の由来です。この井戸は水量も多く、水質も良いため、天保14年に著された『善光寺道名所図会』に当国第一の名水として称賛されています。当時の町のお酒はこの水を使い、歴代藩主も不浄なき旨の立て札を立てて保護してきました。
クセがなく硬さも丁度良く、紅茶や料理にと何でも合います。明治10年の明治天皇巡幸の折には御前水として使用されました。
<源智の井戸の基本情報>
住所:長野県松本市中央3-7
さらに竹専門店の店先にある「徳武の井戸」、可愛い金魚が泳いでいる「草庵の井戸」とめぐると、松本商人の町で蔵作りで統一された家並みの中町通りに出ます。ここまで所要時間約30分。中町通りの顔的存在が、旧宮村町にあった大禮酒造の母屋、蔵、離れの3棟を移築復元した蔵シック館です。その前庭にあるのが写真の「中町 蔵の井戸」で、昔懐かしい手漕ぎ式ポンプの井戸。地下25mから汲み上げています。
<中町 蔵の井戸の基本情報>
住所:長野県松本市中央2-9
水の生まれる街コース:中町通りから女鳥羽川沿いへ
中町通りから東へ、女鳥羽川にかかる鍛冶橋の近くに「伊織の霊水」があります。貞享3年(1686)重税に反対した農民一揆「加助騒動」の折に捕らえられた農民らの救済に尽力した武士・鈴木伊織のお墓の入口に湧出。平成17年に復元され、左は地下10m、右は地下30mから汲み上げています。鉱物的な重く硬い味ですよ。
<伊織の霊水の基本情報>
住所:長野県松本市中央4-8-2
「伊織の霊水」から東に50mほどにあるのが、日の出の泉「薬祖水」。茨城県の大洗磯前神社から分霊された大己貴命・少彦名命を祀る「薬祖神社」に湧き出る御神水です。古老の言い伝えによると、他の井戸が枯渇してもこの井戸は枯れなかったといいます。
<薬祖水の基本情報>
住所:長野県松本市中央4-9-64
女鳥羽川沿い、念来寺橋近くにあるのが「妙勝寺の井戸」です。このあたりは江戸時代から大正10年(1920)まで城下に時を知らせた旧念来寺があったところです。
江戸時代から庶民の生活用水として活用されていましたが、現在の妙勝寺を建てるにあたりいったん埋めて掘りなおした井戸です。
<妙勝寺の井戸の基本情報>
住所:長野県松本市中央4-9-13
時代とともに守られた水コース:古の旅人を潤した泉をめぐる
「時代とともに守られた水コース」は「槻井泉神社の湧水」からスタートしましょう。妙勝寺から女鳥羽川沿いを北へ進み清水橋近く、樹齢300年、高さ20m、圧巻のケヤキの木の下に沸く泉です。古来からこんこんと湧出し、この地のシンボルになった湧水で、平安時代には近くを官街道(山辺街道)が通っていて古くからの水場でした。この地域の地名“清水”もこれに由来しています。
神社前に水汲み場がありますが、赤い橋の下を覗くと清らかな水がとめどなく湧いているのがわかります。
<槻井泉神社の湧水の基本情報>
住所:長野県松本市清水1-2
アクセス:JR松本駅から徒歩約23分
静かな住宅街から石畳の道を入った奥まった一角に「鯛萬の井戸」があります。松本で「鯛萬」といえば老舗レストランが有名ですが、ここはかつて、割烹料亭「鯛萬」があったところで、大正11年生活密着の井戸として深度30mまで掘られたことから呼ばれています。平成15年に鯛萬井戸公園として整備され、深度50mまで掘られた井戸は、県内の平均的な地下水の水質で、鉱物のような硬さがあります。
<鯛萬の井戸の基本情報>
住所:長野県松本市大手5-7-15
市街地に残る唯一の蔵元、銘酒「善哉」を造る善哉酒造の井戸が「女鳥羽の泉」。敷地内に数か所あった井戸のうち、一番美味しいと残された井戸で、地下30mから自噴。現在の井戸は昭和62年に整備され、お酒の仕込み水にも使われる水は空気がたくさん含まれているような軽い飲み心地です。
<女鳥羽の泉の基本情報>
住所:長野県松本市大手5-4-24
お堀の水をたどるコース:松本城北門からスタート
松本ホテル花月の隣、下町会館前に「東門の井戸」があります。このあたりは、かつて城の総堀南東に東門馬出があった場所。ここから北の総堀は、明治19年の水害により、総堀周辺の東半分が水に浸かったのを機に半分埋め立てられました。
その時、総堀跡から水が湧き出したことから、御嶽大神神社の敷地内にある公園の一角に作られた井戸が、写真の「北門大井戸」。城の北門脇にあることから名前がつきました。湧いている水は、少し甘味がありますよ。
<北門大井戸の基本情報>
住所:長野県松本市丸の内8-8
アクセス:JR松本駅から徒歩約15分
「北門大井戸」から西へ1分、裁判所裏手の通りから一段下った場所に「北馬場柳の井戸」があります。この井戸も総堀が埋め立てられ、その埋め立て地の中から水が湧き出していたことから作られました。江戸時代の城下町絵図にも同じ位置に井戸の印が付けられています。
旧町名が北馬場で、そばに大きな柳の大木があったことからその名がつきました。現在は柳の大木が朽ち、代わりに柳の若木が植えられています。飲んでみると、舌の上でトロリとして、かつ甘さを感じますよ。
<北馬場柳の井戸の基本情報>
住所:長野県松本市丸の内9-9
松本城の北不明門があったあたり、葵馬場があったことから「葵の井戸」と命名したかったのですが、先に他所に名前がついていたためあきらめて「松本神社前井戸」と命名されました。神社側とお城側の二つの井戸が向かい合った形になっています。
<松本神社前井戸の基本情報>
住所:長野県松本市丸の内10-10
お堀の水をたどるコース:お堀を見ながら大名町通りへ
松本城二の丸裏御門橋近くに「地蔵清水の井戸」があります。1585年頃小笠原貞慶が総堀内に武家屋敷を整備中に井戸を掘ったところ、地下の湧水と共に地蔵も一緒に沸き出たことからこの名で呼ばれています。
北門から二の丸御殿跡を通り、松本城正面入り口、大名町通りへと向かいましょう。
<地蔵清水の井戸の基本情報>
住所:長野県松本市丸の内9-33
大名通り沿いには「大名小路井戸」や「大名町大手門井戸」があります。市役所大手事務所前にあるのが、平成21年に整備された一見五角形のような写真「大名小路井戸」。このあたりはお城の三の丸だったところで、元禄年間にはお玉の池を水源として木管を埋め、早くから城下町に水道が引かれていたといいます。
<大名小路井戸の基本情報>
住所:長野県松本市丸の内1-1
最後は「辰巳の御庭の井戸」で休憩。松本城の辰巳門と城主の辰巳御殿があった所です。小さな公園にきれいな冷たい水が湧き出、水路にせせらぎとなって流れる様に癒されますよ。
<辰巳の御庭の井戸の基本情報>
住所:長野県松本市大手4-80-6 

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松本
place
長野県松本市深志
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