
東海エリアの米どころ、濃尾平野の北端に位置する「高賀山」。岐阜県関市と郡上市の境界線にあり、美濃と飛騨を隔てているこの山は、秋の情緒と大展望が味わえる山。10月下旬~11月中旬に訪れると、登山道の途中に紅葉のシャワーが降り注ぎ、山頂に到達すれば、木曽の御嶽山や白山の大展望が広がります。また下山後に寄れる「モネの池」の紅葉も密かな楽しみ。秋が深まるシーズンに、ぜひ一度挑戦してみてはいかがでしょうか?
前半は地味だけど味がある!信仰の山「高賀山」へ
今回紹介する「高賀山(こうかさん、標高1224m)」の登山口があるのは、岐阜県関市。もしかしたら、あの有名な"モネの池"がある板取川の裏山と言った方が分かりやすいかもしれません!
国道256号線から新高賀橋を渡り、高賀の森公園へ。舗装路の終点近くにある駐車場が登山口になっています。ここから高賀山山頂までは往復約4時間~5時間半の行程です。
まず前半は、どこか修験道を思わせる静謐な杉の道。登山道の近くには、岩がゴロゴロと転がっており、苔がむしています。何ということはない景色ですが、どこか雰囲気があります。
その理由は、この山に秘められた伝説にあるかもしれません。実はかつて平安時代に高賀山は魔物退治の舞台となった場所。穏やかでありながら、なぜか緊張感も感じる道は、エキサイティングです。
また魔物退治の舞台となったこの場所は、いつしか山岳信仰の対象になり、多くの人が登拝しました。中でも江戸時代に、有名な文化人・円空が訪れ、麓の高賀神社に数々の円空仏を残してからは、円空ゆかりの地として一躍有名に!
今でも円空との関係を思わせる史跡が、登山道の各所に残っているのも密かな見所です。
溢れるほどの紅葉シャワーが美しい!高賀山の中腹を歩く
高賀山の前半は緩やかですが、3合目くらいから8合目にかけては急な坂が続きます。道は危なくないものの、中々体力を要するため、マイペースで進みましょう!そして、疲れたら少し立ち止まり、ふと周囲を見渡してみるのがオススメです。
すると周囲には鮮やかな紅葉のシャワーが降り注ぎます!太陽の光に照らし出され、キラキラと輝く様は、まるで宝石のような美しさ。赤・黄色・オレンジと溢れる色彩も見事ですが、一瞬一瞬で濃淡が生まれ、進むごとに表情を変えるため、飽きることがありません。
特に紅葉のレイヤーができると、シャッターチャンス!前ボケや後ろボケ、紅葉同士の色彩のコントラストなど。自分のビビっとくる景色を探して、カメラを構えてみてください!
こうやって夢中で写真撮影をしていると、いつの間にか結構進んでいた!なんてことも!?坂が辛い区間だからこそ、山の魅力に没頭して忘れちゃいましょう(笑)
そしてようやく6合目付近へ。このポイントが、高賀山の紅葉のハイライトです!透き通った青空に、オレンジ色が映え、何とも心洗われる風景が広がっています。
見れば見るほどに、引き込まれる!そして、葉の一枚一枚が美しい。これこそ高賀山が作り上げる錦秋の世界です。
樹林の先には大展望!「御嶽山」を見渡すパノラマに感動
8合目へ至る前、ここが一番の急登で体力を要するところ。景色も単調なため、精神的にもキツいところですが、それを乗り越えると、山頂へ向かう稜線へと到着します。
そして、その先には北アルプスの主脈がお出迎え!秋のシーズンには、標高3000m近い山々はすでに冠雪しています。実はこの高賀山、周囲に高い山がないため、日本屈指の高峰を数々望むことができるのです。
あとは緩やかな稜線の道を歩いていきます!展望はあったり、なかったり。しかしながら、少し道に変化が出てくるため、冒険心がくすぐられて楽しいです。サクサク落ち葉を踏みしめる感覚を楽しみながら山頂を目指しましょう!
山頂間近、一瞬、大展望が得られる地点があります。ここではぜひ立ち止まってみてください!美濃の山並みが重層的に連なり、その先には日本に21座しかない標高3000m峰の「御嶽山」がどっしりと佇んでいます。
平面的なパノラマに見えるかもしれませんが、ここまで山並みが端正に揃うのは珍しく、このスケール感と雄大さは唯一無二と言えます。
山頂からは日本屈指の高峰群!下山後は秋の"モネの池"へ
登山開始から2時間半から3時間半で、「高賀山」の山頂へとゴール!先ほどまで樹林帯の稜線を進んできましたが、山頂周辺は360度展望が開けているのがポイントです。
また立地も最高!北西には3県を隔てる霊峰・白山(標高2702m)と周囲の両白山地。真北にはうっすらと北アルプス(標高3000m前後)の峰々が見え、東には中央アルプス(標高2700m前後)の山塊が広がります。
中でも、岐阜にありながら「白山」をこれだけくっきりと眺められる山は珍しく、この雄大な山容を眺めたくて登るという人も!
手頃な里山でありながら、しっかり山岳絶景を味わえる。そういう意味でも、満足度が高く、初心者ハイカーにお勧めしたい名山と言えるでしょう。また標高差は800mあるので、本格的な登山へのトレーニングにも最適です。
それでは山頂でお昼ご飯を食べながら、山ならではの爽快なパノラマを心ゆくまで満喫しましょう!
最後に下山後の楽しみとして一つ紹介したいのが、岐阜が誇る絶景「名もなき池(通称モネの池)」!睡蓮咲く夏のイメージが強いですが、実は高賀山が紅葉最盛期となる時期には、池を囲うもみじが鮮やかに色づきます。
他の時期とは一味違う、神秘の池の表情を覗いてみてはいかがでしょうか?
紅葉と大展望に癒される!秋の「高賀山」登山
標高1200m程と手軽ながら、山の魅力を思いっきり味わえる美濃「高賀山」。特に秋には、山腹で鮮やかな紅葉シャワーを浴びることができ、心洗われる秋の風情を感じながら、クライマックスに日本を代表する高峰の大パノラマが味わえます。
このストーリーは唯一無二なので、ぜひ一度、この秋挑戦してみてはいかがでしょうか?
