その微笑みに魅せられて!円空仏を安置した奈良「栃尾観音堂」


2018.11.10

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円空といえば、江戸時代の僧侶にして数多くの木彫を残した名仏師。円空の木彫は一般に「円空仏」と呼ばれ、その多くは東日本に残されていますが、意外にも奈良県天川村には複数の円空仏が伝えられています。今回はそのなかでも特に常時拝観可能となっている「栃尾観音堂」の円空仏をご紹介しましょう。
近畿地方では貴重!円空仏を群像で安置する栃尾観音堂
「円空(えんくう)」は江戸時代の修行僧。全国各地を行脚し、行く先々で一般に「円空仏」と呼ばれる木彫の仏像や神像を彫りました。その生涯において、彫った数は12万体にもおよぶとされ、現存するだけでも5000体以上の「円空仏」が確認されています。円空仏の分布は、北は北海道から南は三重県・奈良県にまでおよび、特に円空の出身地である岐阜県(美濃国)とそれに隣接する愛知県(尾張国)にはおびただしい数の円空仏が伝えられています。

そんな円空仏が4体の群像として安置されているのが、今回、ご紹介する「栃尾観音堂(とちおかんのんどう)」です。栃尾観音堂は奈良県天川村にあるお堂。国道309号線の「川合交差点」から車を15分ほど走らせると、進行方向の左手に案内板が現れます。橋を渡り、集落のなかを進むと、やがてご覧のようなお堂が見えて来ます。これが栃尾観音堂。日中はお堂への出入りも自由で、お堂の前には駐車場のほか、公衆トイレも設置されています。観光客には有り難い配慮ですね。
ガラスの向こうに安置された4体の円空仏
堂内には、ご覧のように、4体の円空仏が並んで安置されています。こちらの円空仏は大峰山で厳しい修行に明け暮れていた時代に彫られたものといわれており、近畿地方において、円空仏が群像として拝観出来るのは、ここ、栃尾観音堂だけ。それだけでも貴重ですよ。

安置されているのはガラス戸の向こう側ですが、間近からはっきりご覧いただけます。スイッチを押すと、灯りも点灯しますので、暗くて拝観しづらいときは灯りをつけましょう。
中央に安置されているひときわ大きな仏像は、聖観音菩薩立像。像高は137.0センチメートルです。
経年により、お顔に亀裂が入っていますが、微笑みをたたえたやさしい表情は円空仏ならでは。癒されますよ。
最初期の作例とされる護法神像と金剛童子像
こちらは聖観音菩薩立像の向かって右側に並んだ2体。右は護法神像で、左は金剛童子像です。
護法神像の像高は49.7センチメートル。その独特の風貌が円空仏らしさを表しています。円空はその生涯において数多くの護法神像を刻んでいますが、こちらの栃尾観音堂に安置されている護法神像は、その最初期の作例といわれています。栃尾観音堂の円空仏のなかでもっとも貴重な作品です。
その隣りの金剛童子像の像高は84.3センチメートル。こちらもやさしいお顔をされていますね。
こんな小さな仏も!大弁財天女立像と胎内仏
聖観音菩薩立像の左側に立つのは、大弁財天女立像。像高は85.7センチメートル。弁財天女とされるだけあって女性的なたたずまいを見せています。
聖観音立像の前には、ご覧のような小さな仏像も置かれています。これは聖観音立像の胎内から発見された胎内仏で、その横の小さな仏舎利などと一緒におさめられていました。こちらも珍しいものゆえ、お見逃しなく。
円空のお手植えと伝わる「円空銀杏」
お堂の裏手には、ご覧のような銀杏の大木が生えています。通称「円空銀杏」です。樹齢は320年以上で幹のまわりは5メートル、その高さは30メートル以上あり、円空のお手植えと伝わる貴重なものです。その真偽はさだかではありませんが、当地区において、それほどまでに円空が慕われている証であるといえるでしょう。

いかがでしたか?栃尾観音堂の円空仏がいかに魅力的か、おわかりいただけたでしょうか。秘仏としてまつられている円空仏が多いなか、常時、誰でも拝観させていただける栃尾観音堂の円空仏は貴重そのもの。栃尾観音堂を拝観し、円空仏の独創的な世界をご堪能ください。 

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