京都「アサヒビール大山崎山荘美術館」で谷崎文学の着物を見る


2018.11.09

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大阪と京都の境に位置する天王山。「アサヒビール大山崎山荘美術館」は豊かな樹々と調和するように佇んでいます。平成30年12月2日(日)まで開催の展覧会「谷崎潤一郎文学の着物を見る」では、谷崎作品と同時代に建築された美術館で、作品に描かれた華やかな着物が再現された展示が行われています。秋には紅葉に染まる山荘で大正・昭和の美に魅せられる世界に溺れてみませんか?
山崎と谷崎潤一郎の関係
“天下分け目の天王山”この言葉を耳にしたことがある人は少なくないでしょう。ここぞという勝負事を表す時に使われますが、「アサヒビール大山崎山荘美術館」はその天王山に抱かれた麓にひっそりと佇んでいます。
関西の実業家・加賀正太郎が大正から昭和にかけて情熱を傾けて別荘として建築した美術館の本館部分「大山崎山荘」は、1996年に修復され、安藤忠雄氏設計の新棟を加えた美術館として開館されました。空間の個性を活かした展覧会が開かれ、他にはない建築とアートが出会う美術館ということができます。
平成30年9月15日(土)~12月2日(日)までは展覧会「谷崎潤一郎文学の着物を見る」を開催。谷崎は山崎を舞台とした作品『蘆刈』や加賀氏との繋がりが窺い知れる作品も著しています。そして、美術館に一歩足を踏み入れれば広がる「大昭ロマン」の世界。谷崎文学の世界の中へと引き込まれていきます。
谷崎潤一郎の美意識と女性の装い
谷崎潤一郎の小説に登場する女性たちの装いは、現代でも女性の“艶”を感じさせるものです。でも、着物の用語を知らなければイメージがつきにくいもの…今回の展示は作中の文章だけではなく、モデルになった女性たちの写真や挿絵、時代風俗なども手がかりにアンティーク着物で登場人物たちの装いが再現がされています。
大正12年に発表された『肉塊』からはダンスホールの女性。
“肩だか頸(くび)だかわからない部分に黄色いクリスタルの珠を繋いだ頸飾りを巻いているのが、ちつと在来の日本服には見られない婀娜(あだ)っぽい風情を加へている”
婀娜っぽいとは今風に言えば色っぽいということ。当時流行したアール・ヌーヴォーの着物にロングネックレスが合わせられた姿はまさに色っぽさが感じられます。
女性たちの華やかな着物姿が見どころでもある代表作『細雪』。四姉妹の三女・雪子が岐阜へ見合いを兼ねた「蛍狩り」へ出かける時の衣装を再現。色白で清楚な一方で気位の高い面がある作中の雪子のイメージと重なる装いになっています。
展覧会「谷崎潤一郎文学の着物を見る」では、谷崎自身の美に対するこだわりも知ることができる展示品もあります。特に本そのものを飾る装丁。挿絵へのこだわり。谷崎との出会いで装丁挿画、挿絵を多く手がけた棟方志功との交流や限定500部で発刊された『蘆刈』など、谷崎の美意識を窺い知ることができる展示が本館「山本記念展示室」に並びます。
大昭ロマン溢れる美術館で文学とアートに耽る
大正・昭和期を色濃く感じられる本館には、姉妹での花見の場面がモデルとなった松子、信子、恵美子、重子の写真を基に再現されて展示さています。館内を見まわせば調度品から大正・昭和の意匠が感じられ、まさに「大昭ロマン」の世界とも言えます。
着物の展示で注目したいのは着こなしと胸元にチラリと見える半衿から履物まで、細部にわたるスタイリング。監修である大野らふ氏が着付けから着物の角度まで、手がけているとのこと。着付けにも姉妹それぞれの個性を垣間見ることができます。
本館から左手へと進むと、温かな陽光が差し込むガラス張りの渡り廊下へと繋がります。別荘の主、加賀氏が大きな功績を残した蘭栽培が行われていた温室へと繋がる廊下が安藤忠雄設計の山手館「夢の箱」へ繋がっています。
広々とした空間に、個性豊かな色彩を放って21着の着物が並ぶ様子は思わず声が漏れてしまうほどの美しさ。自筆原稿や作品の挿絵などと一緒にそれぞれの着物の表現を鑑賞できます。
谷崎文学の中でも女性の“妖しさ”や“変貌”は魅力の一つと言えるのではないでしょうか。目に見えてその女性の変化がわかりやすいのが『痴人の愛』ナオミの装い。カフェで見つけた十五歳のナオミを見初めて育てようとする内、少女から男を翻弄する妖婦へと変わっていく姿がその装いからもうかがえるように思えます。
美術館を彩る自然の美
美術館へは阪急大山崎駅前から徒歩約20分。JR山崎駅から徒歩約15分。急こう配の坂道はありますが、各駅よりご高齢の方を優先とする無料送迎バスの運行もあります。美術館庭園入口の停留所からレンガ造りのトンネルを抜けると豊かな自然が出迎えてくれます。
約5500坪の庭園は春には桜、夏には鮮やかな新緑、秋にはカエデやイチョウが美術館周辺を彩り、多くの人が訪れます。紅葉は例年、11月頃から見ごろを迎えます。
展覧会「谷崎潤一郎文学の着物を見る」で、アート・文学・自然と三つの美に出会える「アサヒビール大山崎山荘美術館」。日常を忘れて、美の世界に耽るひとときを過ごしてください。 

アサヒビール大山崎山荘美術館
rating

4.0

34件の口コミ
place
京都府乙訓郡大山崎町銭原5-3
phone
0759573123
opening-hour
10:00-17:00(入館は16:30まで)

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