金堂リニューアル完了!大阪・奥河内の金剛寺は文化財の宝庫


2018.07.28

トラベルjp 旅行ガイド

文化財の街として知られる大阪府河内長野市。その中でも、貴重な建築物や仏像など数多く残るのが、奥河内の名刹・金剛寺です。
南朝ゆかりのお寺でもあり、境内には史跡も多く、歴史好きな方にもおすすめ。特に、南朝天皇と北朝上皇が同時期に暮らした珍しい場所として知られます。
近年、金堂の解体修理完了にご本尊の帰還と、ホットな話題が続く文化財の宝庫、金剛寺。その見どころを一挙ご紹介します。
二天の守る楼門の先、閑静な中にたたずむ美しい伽藍
金剛寺は、河内長野市の西部にあるお寺で、真言宗御室派の大本山。創建は奈良時代の天平年間とされ、また、弘法大師空海が修行したとも伝わる、奥河内の名刹です。
その長い歴史の中で、幸いにも大きな兵火に遭わなかったこともあり、境内には、鎌倉時代の伽藍がほぼそのままの形で残されています。
境内に入ると、まず目に入るのが豪壮な赤い楼門。左右には、仏敵からお寺を守護すべく、持国天と増長天の二天が鋭い眼光で仁王立ち。
楼門と持国天・増長天は、いずれも国重要文化財の指定を受けています。
二天の守る楼門をくぐった先は、山を背にして広がる閑静な空間。ここには、平安・鎌倉の頃からの伽藍が残ります。
正面に見える朱色の建物は金堂と多宝塔。解体修理を終えて生まれ変わったその姿は、伽藍の中でひときわ目立ちます。背後の山の緑とのコントラストも美しいですね。
静けさ漂う中にたたずむ、歴史を感じさせる伽藍。ここは、金剛寺の中でも、ゆっくりと時間をかけて巡りたい場所です。
New金堂&帰ってきた国宝三尊、そして、スタイル抜群の多宝塔
伽藍の中心は金堂。正面(桁行)七間、側面(梁間)七間のどっしりとした構造で、オーソドックスな形の仏堂です。国の重要文化財の指定を受けています。
最近まで、大規模な解体修理が行われておりましたが、ようやくリニューアル完了。鮮やかな朱色のお堂に生まれ変わりました。
ただし、文化財の解体修理は現状維持が基本。修理を終えたこの金堂も「まっさらの新品」という感じでは決してありません。
装いを新たにしつつも、従来の構造や装飾はしっかり維持。歴史の重みを感じさせる"New"金堂です。
金堂内へお参りする前に、ちょっと頭上を見上げてみましょう。ひさし下の柱や横材、組物に描かれた図柄が美しいですね。精巧な彫刻も鮮やかに復活です。
金堂内陣には3体の大きな仏さま。中央にご本尊の大日如来、向かって右に不動明王、左に降三世明王。三尊とも2017年に国宝に指定されました。
金堂工事の間は、京都・奈良の国立博物館に預けられておりました国宝三尊。金堂リニューアル完了でようやく帰還、久々に三尊の揃い踏みです。
内陣の中はやや薄暗いですが、それでも、三尊の表情はよくわかります。特に左の降三世さまの表情が特徴的。怒りのお顔ながらもどこか可愛げです。
金堂の隣に立つ二層の塔は多宝塔、真言宗などの密教のお寺によくある仏塔です。よく見ると、下層は四角形で上層は円形。上下二層で形が異なるのが多宝塔の特徴です。
この塔の創建は平安時代。国内の多宝塔の中で最も古い部類に入り、国の重要文化財の指定も受けています。金堂と同様、多宝塔も解体修理が行われ、色鮮やかに蘇りました。
四角の下層と円形の上層、そして、2つの屋根の大きさのバランスが絶妙で、スタイル抜群!正面から見るのもよいですが、背後の山にちょっと登って見下ろすように眺めるのもおすすめです。
南朝の仮宮も置かれた金剛寺、天皇の「お月見場所」も残ってる!
さて、金剛寺は、鎌倉時代末期以来、後醍醐天皇とその後継皇統の南朝と深い関係を保ったことから、「南朝ゆかりのお寺」として知られます。
中でも、南朝二代天皇の後村上天皇は、一時期、この金剛寺に行宮(仮宮)を置いて暮らしました。その跡は、今も金剛寺に残されています。
その1つが食堂。元々はお坊さんが食事などをするお堂ですが、後村上天皇はこの食堂を「正庁」として使用しました。入母屋屋根の正面に付けられた、曲線的な唐破風(からはふ)が、このお堂の個性を際立たせています。
金堂すぐ後ろの御影堂は、真言宗の宗祖、弘法大師の「御影」を祀るお堂です。
この御影堂の東側(金堂側)に、何やら後からくっつけたような建物が突き出しています。これは観月亭。その名の通り、「お月さまを観る」ための場所ですが、後村上天皇もここでお月見をされたそうですよ。
金堂の真後ろですが、少し高い位置にある観月亭。目の前の金堂に邪魔されることなく、お月見を楽しめそうです。
伽藍だけ見て帰らないで!本坊・庭園もお見逃しなく
金堂などの伽藍とは別に、金剛寺にはもう1つ、ぜひとも訪れておきたい場所があります。それは、楼門から少し北に離れたところにある本坊です。
ここの庭園は一見の価値あり。伽藍だけ見て帰ってしまうのはもったいないです。
本坊の表門をくぐると、正面には立派な大玄関。また、足下では、ちっちゃくてかわいいカエルさんがお出迎え。
中には美しい日本庭園が広がります。日本庭園にもいろいろな様式のものがありますが、ここのお庭は、池や小川などの水を使わずに表現する「枯山水」です。
ただ、枯山水といっても、京都・龍安寺のような石組と白砂だけの庭とは違います。草木や苔をふんだんに使用、自然の色が目立つのが特徴ですね。
どの角度からみても絵になるこの庭園、ずっと眺めていても飽きず、時間が過ぎるのも忘れてしまいそう。また、春から夏にかけては新緑、秋は紅葉、冬は雪化粧と、季節によって、異なる装いを楽しませてくれます。
最後に、庭園の奥に立つ「北朝御座所」をご紹介します。
先に、南朝の後村上天皇が金剛寺に行宮を置いたことをお話ししましたが、実は、同時期、南朝と対立した北朝の皇族(三上皇と親王)も金剛寺で暮らしていました。
といっても、北朝の上皇方は、ご自分の意志でここに来たわけではありません。南朝に身柄を拘束されて、ここに軟禁されていたのです。そのお住まいとなったのが北朝御座所です。
建物の中にも入れます。10畳ほどの部屋がいくつもある広い空間で、ふすま絵や欄間の彫刻なども見事。格式の高さを感じます。北朝とはいえ仮にも天皇になられた方々、金剛寺や南朝の人々に丁重に扱われたことがうかがいしれます。 

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天野山 金剛寺
rating

4.0

15件の口コミ
place
大阪府河内長野市天野町996
phone
0721522046
opening-hour
[拝観時間]9:00-16:30
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