日本庭園とは一味違う? 江戸の草庭「向島百花園」に行こう


2018.08.04

LINEトラベルjp 旅行ガイド

近年の外国人旅行客にとりわけ人気なのが、和の情緒あふれる日本庭園です。刈り込まれた松の木、曲線美を生かした池、庭石に和風建築……国内外を問わず多くの人はそんな風景をイメージすることでしょう。が、今回紹介する向島百花園は、日本庭園でありながらまるで違う雰囲気で、下草のふんだんに生えた素朴な場所。しかしながら江戸時代より続く歴史ある憩いの庭なのです。長く愛され続ける向島百花園の魅力に迫ってみましょう。
庶民の憩いの場として愛されてきた、日本の草庭
東京都内にある浜離宮恩賜庭園などの日本庭園は、その多くが元々は江戸の大名もしくは財閥などの名家の庭園でした。江戸~明治時代の名家の庭は、それぞれの家の力を示すステータスのような存在であり、それだけにデザインや植物、庭石などにも徹底的にこだわり、高価なもの、珍しいものなどを多く取り入れてきたのです。また、いつ見ても豪華な雰囲気を損ねないためか、常緑の松などが主体となっています。
その点、この向島百花園は江戸時代のとある骨董商が草花を観賞するために自ら造り、一般庶民に開放してきた庭です。贅沢とは程遠く、場所によっては“草ぼうぼう”といわざるを得ないような場所も……。しかしながら、質素な雰囲気の中に季節ごとの花が咲く庭園は、敷居の高さを感じさせず、いつまでも佇んでいたくなるような安らぎをもたらしてくれます。季節の花や実を楽しめることから、限られたスペースながらも四季の移ろいも実感できることでしょう。
植えられている植物の種類が多彩で、季節ごとに見所が変わるのが向島百花園の魅力の1つです。例えば春なら、まずサクラの花が随所で開花。その後はツツジが咲き誇り、それとほぼ同時にフジ棚がたっぷりと花を咲かせます。フジ棚にはベンチも設置されていますので、花の真下に腰を下ろしてゆっくりとお花見を楽しめますよ。
自然の山野さながらに、秋には秋の花が咲く向島百花園。
秋の最大の見所として名高いのが、全長約30メートルにもおよぶ大きな「萩のトンネル」。秋の七草の1つとして馴染み深いハギ(萩)を竹を編み上げて造ったトンネルにたっぷりと這わせています。見頃は9月頃。同時期には他の七草も見頃を花期を迎えていることでしょう。
植物の「秋ならではの姿」をお見逃しなく!
一般的な日本庭園と違って芝生広場がほとんどなく、下草が豊富なのが特徴の向島百花園。真夏から秋にかけてはまさしく山野草の最盛期で、園内の随所で可愛らしい花を見かけます。
写真はダンギク(段菊)、丸っこい毛玉のような花が段々状に咲き連なるユニークな形で、名前に反してシソの仲間です。ここは江戸時代から続く庭園だけに日本由来の花が多く、このダンギクも九州の山地でたくましく自生しているそうです。
野山の植物の中でもとりわけ人気が高い「秋の七草」。草庭である向島百花園ではカワラナデシコやオミナエシ、キキョウなどの七草が園内各所で見られ、風情を感じさせてくれることでしょう。「秋」とはいっても実際には真夏から咲き始め、ススキなどの一部を除けば晩夏にちょうど見頃を迎えます。
写真は二重咲きのキキョウ。園芸品種として改良されたもので、通常の星型の花が少しズレて2つ重なったような形をしています。近年、自生のキキョウはめっきり姿が見られなくなってしまいましたが、ここでは他の草花と一緒に自然に近い感じで開花しますので、山野草ファンの方にもなかなか人気です。
秋といえば実りの季節。向島百花園でも写真のザクロやアケビなどの果実が実り、花々と相俟って秋らしい雰囲気を演出してくれます(もちろん採って食べてはダメですよ(汗))。このほか、棚からぶら下がるずんぐりとしたヒョウタンの実なども見所。花だけじゃない見所を、散策しながらぜひ探してみてくださいね。
向島百花園に江戸~東京の新旧文化が集う!?
多くの東京の日本庭園では、昔ながらの日本らしい催しや体験教室などを実施しており、向島百花園も決して例外ではありません。これは春の催しになりますが、来園者が季節の俳句を書き込めるノート。毎年東屋に設置されているようで、書き込むのも閲覧するのも自由です。優秀な作品は翌年の春に掲示されますので、松尾芭蕉の気持ちになって挑戦してみるのもいいかも?
暑い季節には、できれば日傘を差したいもの。でもせっかくの日本庭園で洋物の傘というのは雰囲気が合いませんよね。向島百花園では入口で写真のような和傘を期間限定で無料貸出しており、日差しの厳しい夏~初秋には心強い味方となってくれます。
ちなみにここは様々な木が所狭しと生え、東屋やハギのトンネルなど、直射日光を遮ってくれるコンテンツがたくさん。面積も広過ぎることがないので、お年寄りや体力に自信がない方でも気軽に散策を楽しめるようになっています。起伏があまりないのも嬉しいポイント!
和の情緒あふれる庭園ながら、池の彼方に見えるのは紛れもなく東京スカイツリー! 墨田区というだけあり、かなり大きく見えます。2012年にスカイツリーがオープンして以降は、手前に池を据えたこのアングルが来園者から一番人気だそうです。新旧の文化が融合した風景を、ぜひ皆さんも写真に収めてみてくださいね。
江戸の草庭を訪れる、小さな生きものたちをクローズアップ
隅田川と荒川、東京を代表する2つの河川に挟まれた向島百花園には、四季を通じて水鳥がよく飛来します。写真はカルガモのつがい。このほか、アオサギやコサギなどのサギの仲間、そして運がよければカワセミが飛来することもあります。実のなる樹木も多く植栽されているため、小鳥の飛来も期待できることでしょう。散策しながらぜひ探してみてください。
何度も言うように、向島百花園は“草庭”です。園路にはみだすくらいの勢いで旺盛に葉を茂らせるススキなどは、バッタの仲間にとっては貴重な食べ物兼隠れ場所となります。写真はウスイロササキリ。淡い緑色をしたキリギリスの仲間で、ススキの隙間などに身を隠しながら「シリシリシリシリ……」と涼しげな声で鳴いています。鳴き声はよく聞こえますが、臆病なのか恥ずかしがりやなのかすぐに葉の裏に隠れてしまうので、姿を見るのはちょっと大変。変に葉を掻き分けて植物を傷めてしまうのもよろしくないので、見られたらラッキーくらいの気持ちでそっと覗き込んでみましょう。
これはハギの花で蜜を吸うウラナミシジミ。他にもオミナエシやヒヨドリバナなど、夏~初秋にかけて咲く花の中には、チョウに好まれるものがたくさんあります。活発に飛び回るチョウをじっくり観察したり撮影できるのは、基本的に食事の時だけ。もし飛んでいるチョウを見かけたら、近くにある花の前で張り込みしてみるのもいいでしょう。
写真のチョウは開帳3センチ程度の小さな物ですが、他にもタテハチョウやアゲハチョウなどの大型のものもよく飛来します。植物の多様性に満ちた向島百花園は、昆虫もまた多様なものが暮らしているのです。
春限定のお楽しみコンテンツも
かつて江戸時代にも武家を中心に園芸文化が広まり、中でも特に人気が高かったのがサクラソウでした。やがて庶民の間でも愛されるようになり、幕末より約150年が経過した今もなお、鉢植えで大切に育て、品評会などを催す文化が脈々と受け継がれています。
春、向島百花園でもズラリと並ぶサクラソウの花鉢をご覧いただけます。王道のピンク色から、コントラストのついたもの、レースのようなお洒落な花型のものまで、多彩な姿をお楽しみください。
これはエビネの仲間。春から初夏にかけて林床部に咲く自生ランの一種です。いわゆる胡蝶蘭のような華やかさには欠けるものの、野生の種は近年著しく減っており、その希少価値も相俟って山野草ファンにはとても人気です。向島百花園では、自然の林に近い環境で地植えされており、ナチュラルな雰囲気を堪能することができます。 

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向島百花園
place
東京都墨田区東向島3
phone
0336118705
opening-hour
9:00-17:00(入園は16:30まで)

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