徳島・幻の四国新幹線未成線隧道と渦潮の鳴門公園回遊


2018.04.18

トラベルjp 旅行ガイド

1973年、旧運輸省は四国新幹線を基本計画新幹線として告示しました。それに基づき、徳島県鳴門市と淡路島を結ぶ本州四国連絡橋の大鳴門橋は道路・鉄道併用橋として建設されました。そのため橋台には未貫通の新幹線用隧道が二基あり、他所には橋脚基部も残っています。それらは渦潮を望む鳴門公園遊歩道沿いに点在しており、大鳴門橋内の遊歩道「渦の道」と合わせ、鳴門海峡の風景を楽しみながら巡ることができます。
竜宮城に近未来トンネル?
四国新幹線のルートは計画当初、明石海峡大橋から大鳴門橋を通って瀬戸内海を渡った後、神戸淡路鳴門自動車道から一旦南に逸れ、再び進路を西向きに戻し、高松へと向かう予定でした。しかし大鳴門橋建設途中で四国新幹線の計画が頓挫してしまい、橋台部の隧道(トンネル)は未貫通のまま、橋は竣工してしまいます。
橋の先(南)で高速道とルートが分かれる地点付近の新幹線橋脚設置予定部分には、その土台であるコンクリートの基部が造られたまま放置される形になりました。このように未完成のまま終わった鉄道路線のことを「未成線」と言い、鉄道業界では廃線跡と同じジャンルで扱われます。
この探訪のアプローチに車を利用した場合、これらの遺物を巡るのに適した駐車場は鳴門公園第四駐車場になりますが、風光明媚な公園の遊歩道を回遊するため、公園手前にある「網干(あぼし)休憩所」駐車場を基点に巡ります。バス利用時は「亀浦」バス停で降車し、階段を下りると目の前に橋脚基部があります。
車利用時、網干休憩所から北上していき、復路に利用する公園遊歩道分岐をやり過ごすと左手に、まるで「千と千尋の神隠し」に出てきそうな外観の建物が現れますが、地元では「竜宮城」と呼ばれています。これはその向かいにある大塚国際美術館を運営する大塚製薬グループの福利厚生施設兼迎賓館なのです。
高速道高架下の交差点を右折するとまもなく前方左手に、鳴門海峡の渦潮観潮船「うずしお汽船」の事務所がある分岐が現れますが、その事務所方向に折れます。そして亀浦港南岸に注目して下さい。
高速道の橋梁橋脚と道路との間に、一辺数メートルほどの箱型コンクリート構造物があるのですが、これが新幹線の橋脚基部の一つなのです。港を挟んだ対岸にも同様のもの(写真)があります。高速道の橋脚より一回り大きな基部は、まるで近代遺産の遺跡のようでもあります。
鳴門公園第四駐車場から階段を上がって「亀浦」バス停に出ると左折します。第三駐車場の上には第二駐車場がありますが、その東向かいの高速道橋梁の橋台部に注目して下さい。フェンスが設置された四角い穴があるのですが、これこそ新幹線の隧道なのです。この地点で既に若干高速道ルートから逸れ始めているのですが、在来線のトンネルとは形状が全く異なり、「近未来トンネル」のようでもあります。
一基目を上回る特大トンネル
フェンスからトンネルの奥を覗くと、湿気によりカビの生えた未貫通コンクリート壁が。現行の新幹線のトンネルを側で見る機会はありませんが、こちらの方は間近で見ると大きさが際立っています。
トンネルの北方からまた階段を上がると第一駐車場に出ます。そこから南の「大鳴門橋架橋記念館エディ」(2018年4月リニューアルオープン)まで歩いていくと、館の東向かいから「奇妙な」遊歩道が分岐して下っています。
この人影もない遊歩道を2分ほど下ればヤブに阻まれますが、そのヤブを数十秒かき分けた先に二基目の新幹線トンネルが現れるのです。一基目のトンネルより一回り大きく、地面からトンネル底部までは人の背丈を遙かに超える高さです。
トンネルの正面には、大鳴門橋内に整備された遊歩道「渦の道」入口が見えていますが、自然豊かな公園を回遊するため、エディ前まで戻った後、高速道上を通る遊歩道の陸橋を渡ります。渡った先からは公園の最高所、鳴門山(98.7m)を目指しますが、徒歩か「エスカヒル鳴門」で登ります。後者は高低差34m、全長68mを誇る有料エスカレーター。
鳴門山の山頂展望台からは渦潮が渦巻く鳴門海峡から淡路島(写真)、播磨灘、紀伊水道を360度見渡すことができます。
四国新幹線の鉄橋保線路予定空間が遊歩道に
鳴門山からは北東の遊歩道を下って大鳴門橋を間近に望める千畳敷観潮台に出た後、北端のホテル(ホテル鳴門海月)の駐車場から遊歩道に入り、公園突端の孫崎を一周し、千畳敷観潮台に戻って来ます。それから道路を南西に進み、人気の「渦の道」に入りますが、この遊歩道の空間は本来であれば、四国新幹線の保線路に利用されるはずでした。
渦の道は海上からの高さ45m、全長450m。ガラスで覆われている箇所もあれば、吹き抜け箇所もあり、海峡の荒々しい風を肌で感じることができます。同じ本州四国連絡橋の明石海峡大橋内の遊歩道と比べると、上の高速道を走る車の振動がダイレクトに伝わり、ある種、迫力を感じます。
渦の道の路面は何ヶ所か、ガラス張りの箇所があり、その上に乗るとスリルを味わえます。
渦の道から海峡を見下ろしていると、いくつも消えては現れる渦潮。観潮船がその渦に吸い込まれそうなくらい接近しています。
鳴門海峡とは対照的な優しい海
渦の道を歩き終えると、エディ南の「お茶園展望台」を目指します。お茶園は徳島藩主・蜂須賀公が茶屋を設けて観潮した場所。当時を偲ぶクロマツも景勝に彩りを添えています。
観光客の多くはお茶園から第一駐車場へと引き返していくのですが、ここから南の尾根に付けられた遊歩道からもまた違った景色を望むことができます。
途中、木造のテラス型展望所があるのですが、ここからは鳴門海峡とは対照的な穏やかな海が広がっています。特に波打ち際近くの海の透明度には目を見張ります。
更に下っていくと視界に網干休憩所周辺の千鳥ヶ浜が広がってきます。鳴門山南麓から陸続きの網干島を結ぶ海岸に形成された白砂の浜で、歴史小説家・吉川英治の代表作「鳴門秘帖」の舞台でもあります。
千鳥ヶ浜からは大鳴門橋も望めるので、透明度の高い海を愛でながら網干島まで散策した後、駐車場に戻るといいでしょう。バス利用者はすぐ近くの「大塚国際美術館前」バス停へ。 

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大鳴門橋
place
兵庫県南あわじ市から徳島県鳴門市まで
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うずしお汽船
place
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-63
phone
0886870613
opening-hour
8:00-16:30の間、30分ごとに運…
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鳴門公園
place
徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池
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