日本の原風景と仏様に癒される大分「田染荘小崎」を歩いてみよう


2018.04.15

トラベルjp 旅行ガイド

大分県豊後高田市の「田染荘(たしぶのしょう)」は、墾田永年私財法が制定されてから宇佐八幡宮が支配する根本荘園のひとつとして最も重要視されていた荘園です。後に、田染荘全体は時代の流れとともに大きく移り変わっていくのですが、ここ小崎(おさき)地区だけは、水田や集落の形が14~15世紀のまま残されてきました。この美しい原風景の中に点在するお堂や石仏、修験場などの文化財を見ることができます。
まずは荘園を見渡せる眺めの良い展望台へ
田染荘小崎地区へは、豊後高田市中心部から車で20分ほど。案内表示に従いながら農免農道を走っていきますと、「間戸(まど)の岩屋」と呼ばれる奇岩が忽然と現れます。
世界農業遺産のひとつで、平成22年には「田染荘小崎の農村景観」として国の重要文化的景観にも選定されました。
間戸の岩屋は麓まで車で行けます。「朝日・夕日観音入口」と書かれてある立札が目印。良く整備された山道を5分ほど登ると、展望台に辿りつきます。
四季や時間帯で表情を変える日本の原風景
展望台には、千年の歴史を刻む日本の原風景が待っています。ゆるゆると曲がりくねった畦道や小川の曲線、木々を渡る風の音や鳥のさえずり、澄みきった空気に癒されることでしょう。
この水田には、一枚一枚きちんと名前がつけられており、宇佐八幡宮などに残されている絵図や文献資料などと照合することができるのだそうです。
季節や天候、時間帯によっても異なる美しさをみせる田園の風景。特に、写真愛好家の方へお薦めしたいのは、水を張った田植えの時期や青々と茂る夏、黄金色に輝く稲穂が頭を垂れる秋などです。
アドビシステムズ(株)が主催した「日本遺産」フォトコンテストで、最優秀賞に選ばれた作品も、田植え時期の「田染荘夕景」を題材にしたものでした。
また、展望台の麓に見える台薗(だいそん)集落は、鎌倉時代に集落の原型が出来あがっていたそうです。ここは、春になると桜や花桃、チューリップ、菜の花などが集落一帯に咲き乱れ、訪れる人の目を癒してくれます。お寺や古民家カフェもありますので、お花見がてら散策するのにちょうど良いかもしれませんね。
好奇心を掻き立てるスピリチュアルなスポットへ
展望台から裏手の東側(展望台は西側)にまわると、切り立った岸壁に数人がようやく渡れる広さの龕に観音様が祀られています。「朝日観音」と呼ばれ、焼き仏のお姿・表情は悲しげながらも、どこか優しげに思えます。
「夕日観音」は展望台からさらに上へ登った高い場所にあります。こちらも焼き仏の観音様を中心に数体の石仏が祀られています。
間戸の岩屋を降りてから、隣接する「二宮八幡社」へ向かうと、そこには石造仁王が向かい合うように立っています。通常、仁王像は山門や仁王門の中に安置され、その殆どが木彫りなのですが、大分県は石造りの仁王像が多いことが最大の特徴です。特に国東半島では、田染石と呼ばれる柔らかい凝灰岩が地元で多く産出され、中世以前より優れた石工集団が複数存在していたことから、独特な石造文化が現在まで継承されてきました。
不思議な伝説が残る穴井戸観音
二宮八幡社から5分ほど歩いたところに「穴井戸観音」と呼ばれる不思議なスポットがあります。苔むした石段を上がって行くと龕に嵌めこむように建てられたお堂があり、ここにも観音様が祀られています。
さらに奥には深い洞窟があり、お堂の脇から電気をつけて中に入れるようになっています。
ひっそりと静まり返った洞窟内には、無数の石仏が安置され、コウモリが羽ばたくという独特な雰囲気。時折、天井から「ピチャン!」と雫が落ち、その音に緊張感は高まるばかりです。
また、洞窟の途中には横穴があり、15km先の海辺にある「権化の鼻」に繋がっているとも云われています。
洞窟の奥には、「濡れ観音」と呼ばれる観音様が雫に打たれながら、足元の石鉢に水を集めています。この水は、国東半島の寺院を開いたとされる仁聞菩薩がのどを潤し疲れを癒したことから、「仁聞の隠れ水」或いは「知恵の水」と呼ばれ、飲むと知恵がつくとも云われています。
天井から滴る雫は年中絶えることはなく、雫が止まると干ばつになると云われています。そして、干ばつが起きると、仏像を外に出して祈祷すると雨を降らせてくれる「水の神様」として村人から大事に崇められてきたそうです。
隠れたスポットはまだまだ他にも
「垢離場(こうりば・くりば)」と呼ばれる渓流の岩を掘ってつくられた直径2m、深さ2mの水溜り場で、かつて山岳仏教の修験者達が身を清める場所でした。現在でも田染荘の祭礼で身を清める行事が続けられています。
垢離場から200mほど山道を登っていくと、「大山岩屋観音」と呼ばれる岩肌を掘ってつくられた龕に辿りつきます。石造の観音様や地蔵、狛犬などが祀られています。
癒しの原風景と多くのスピリチュアル・スポットがともにある「田染荘小崎」はいかがでしたでしょうか。
この他にも御田植祭、収穫祭(稲刈り交流会)、ほたる鑑賞会、荘園領主制度、農家民泊など様々な取り組みが行われているこの地域は、何度訪れても飽きることがありません。 

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田染荘
place
大分県豊後高田市田染小崎2132-1
phone
0978262168
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