奈良に春を告げる伝統行事・東大寺 二月堂「修二会」


2018.02.25

トラベルjp 旅行ガイド

東大寺二月堂の修二会(しゅにえ)は、752年(天平勝宝4年)に東大寺を開山した良弁僧正(ろうべんそうじょう)の高弟、実忠和尚(じっちゅうかしょう)によって創始されました。それ以来、途絶えることなく毎年行われ、2018年(平成30年)で、1267回を迎えます。古都・奈良に春の訪れを告げる「不退の行法」として欠かすことなく続けられてきた修二会をご紹介致します。
東大寺 二月堂「修二会」とは
修二会は、正式名称を「十一面悔過法会(じゅういちめんけかほうえ)」といい、人間の様々な過ちを二月堂のご本尊である、十一面観世音菩薩の前で、懺悔することを意味しています。人々に代わって懺悔することにより、五穀豊穣や天下泰平など人々の幸福を祈ります。
現在では、曜日に関係なく、3月1日より2週間にわたって行われていますが、もとは旧暦の2月1日から行われていましたので、二月に修する法会という意味を込めて「修二会」となったのです。また「二月堂」の名前もこのことに由来しています。
修二会の、2018年の日程は、3月1日(木)~15日(木)です。なお、二月堂周辺(二月堂裏参道全域を含む)は、三脚、一脚、脚立、ストロボの使用が禁止されています。撮影希望の場合は、第2拝観席の西端区域で行いましょう。写真は、第2拝観席から見た二月堂です。第2拝観席では、仮設トイレも設置されます。撮影に当たっては、お互いに場所を譲り合って、三脚はひとり1脚とし、また、無人で機材による場所取りも控えましょう。
行法を行うのは、練行衆(れんぎょうしゅう)と呼ばれる、11名の僧侶です。毎年、良弁僧正の命日となる12月16日に、翌年の修二会を勤める11名の僧侶と役割が発表され、年が明けて2月20日より別火(べっか)入りというそれぞれの住坊(塔頭)とは別に、共同生活の宿所に入ります。
別火では、声明(しょうみょう)その他を稽古し、3月1日からの本行に臨みます。3月1日からの本行の2週間、毎夜、二月堂を明るく照らす「お松明」は、練行衆が二月堂に上堂するときの道明かりです。
二月堂の回廊を駆け抜ける「お松明」
お松明は、1日6回の法要の内、初夜と呼ばれる19時頃に、案内人である童子がお松明を担いで、練行衆の足元を照らし、その後、舞台を駆け抜けます。その際、滝のように降り落ちる火の粉は、無病息災をもたらすと言われています。そのため、二月堂の周辺にはたくさんの参拝客が集まります。
二月に上堂する練行衆の道明かりとして灯される「お松明」は、通常10本ですが、3月12日だけは、すべての練行衆が上堂するので、11本のお松明があげられます。また、3月12日は、ひときわ大きい「籠松明」があげられ、本行中、1度しかない「お水取り」の儀式も行われるので、非常に混雑し、交通規制も実施されます。
ほかに、3月12日以外でも、土曜、日曜日は、非常に混雑します。ゆっくり見たいという方は、平日に訪れることをおすすめします。
修二会で有名な「お水取り」は、3月12日だけ行われる儀式です。お水取りは、その日の深夜、二月堂の前の若狭井(わかさい)という井戸から観音様にお供えするお香水(こうずい)を汲み上げる儀式をいいます。このお水取りが終わると、奈良では春がやってくるといわれるほど親しまれている行法です。
なお、お水取りの儀式で汲まれるお香水は、若狭(福井県)から来ているとされています。その根拠は、修二会の創始者である、実忠和尚が、全国の神々の名前を唱え勧請した時、魚釣りに興じていて参集に遅れた若狭の国の「遠敷明神(おにうみょうじん)」が、遅参のお詫びに、二月堂のほとりに清水を湧き出させ、観音様に奉ったからと伝えられています。これがお水取りの始まりです。
なお、若狭井は、閼伽井屋(あかいや)と呼ばれる建物の中にあり、一般には公開されていません。お水取りの儀式においても、限られた人だけ中に入れることになっています。
二月堂の参詣所で修二会の歴史を知ろう
お松明が終わったら、余韻の残る二月堂に参詣しましょう。お松明の時間は、3月1日~11日の通常期間は、19時開始で、時間は約20分です。使われるお松明は10本です。「お水取り」と重なる3月12日は、19時半開始で、時間は約45分です。お松明は11本で、通常松明とは違い、巨大な籠松明が使われます。最終日の3月14日は、18時半開始で、時間は約10分、お松明は10本です。短い時間でお松明が連続して上がっていくのが特徴です。
二月堂の前では、修二会で使う、奉納された十数本の太い真竹が並べられています。真竹には「世界平和」や「家内安全」などの字が書き込まれています。これらの真竹は、お松明の柄として使われ、先端には枯れ杉葉などの束がついています。
二月堂の参詣所では、修二会の歴史と、お松明で使われる、展示用に特別に製作された、通常松明と籠松明の先端が展示されています。3月12日以外に使用される通常松明は長さ6~8m、重量40kg、3月12日だけに使用される籠松明になると、長さ8m、重量70kgにもなります。松明の製作は、毎朝、担ぐ童子が、自分の松明は自分で、二月堂の前の「良弁杉」の下の広場で製作します。
奈良市内のビュースポットでもある「東大寺二月堂」
二月堂は、基本的に24時間参詣が可能です。普段は、日が暮れると静かな回廊内も、修二会の期間中は大勢の参詣客で賑わいます。
二月堂の回廊の正面以外の、北、東、南には瓜の形をした大きな燈籠が吊り下げられ、独特の風情を漂わせています。
また、二月堂は、奈良市内の夜景を眺めることのできる絶好のビュースポットでもあります。参詣を終えたら、聳え立つ良弁杉と東大寺大仏殿の彼方にきらめく奈良市内の夜景を楽しみましょう。
東大寺絵馬堂茶屋で暖かい食事を頂く
修二会の後は、二月堂の前にある「東大寺絵馬堂茶屋」に入ってみましょう。修二会期間中は、21時過ぎまで営業しています。
東大寺絵馬堂茶屋でのおすすめは、茶粥です。冷えた身体にとても温まりますよ。このように東大寺二月堂で行われる修二会は、「火の儀式」であると同時に連綿と続く、宗教行事です。冬の奈良を訪れたなら、その粛々と行われる荘厳な行法を見学して、春の訪れを感じ取ってみて下さい。
<東大寺絵馬堂茶屋の基本情報>
住所:奈良市雑司町407
電話番号:0742-26-3326
営業時間:10:00~16:00(修二会期間中は21:00過ぎまで営業)
アクセス:近鉄奈良駅から徒歩約25分 二月堂前 

read-more
二月堂
place
奈良県奈良市雑司町406-1 東大寺内
phone
0742225511
opening-hour
[参拝]終日可
すべて表示arrow

この記事を含むまとめ記事はこちら