蔵の中に温泉!?宮城「湯元不忘閣」の貸切風呂は癒しの極致


2017.04.03

LINEトラベルjp 旅行ガイド

蔵王連峰の山懐に抱かれた秘湯、青根温泉。「湯元不忘閣」は、伊達政宗をはじめ、歴代仙台藩主が保養地として愛した由緒ある宿です。ノスタルジックな佇まいを残しながらも、美しく洗練された癒しの空間がこの宿の魅力。明治時代の蔵を一棟丸ごと改装した貸切風呂「蔵湯」はその代表で、宿泊すれば無料で入浴できるのもうれしいポイント。湯のあふれる音だけが滔々と響く、温泉好きなら一度は入っておきたい名物風呂です。
伊達政宗が名付けた「不忘閣」
東北新幹線白石蔵王駅から遠刈田温泉行きのバスで約40分、終点で送迎車に乗り換え約10分。標高500メートルの高原に、6軒の温泉旅館と1軒の日帰り温泉施設があるだけの小さな温泉街に辿り着きます。そこが青根温泉。「湯元不忘閣」は青根といえばこの宿、ともいうべき、代名詞となっている老舗旅館です。
開湯は1528年。伊達政宗から湯守を命ぜられたのが始まりで、藩主専用の湯治場であった「青根御殿」と「御殿湯」が今も名残を留めています。宿の名は、青根御殿に滞在した政宗が感激と喜びを忘れまいと、「不忘」と名付けたのが由来。文化財に指定された建物も多く残り、歴史の息遣いがそこかしこに感じられます。
いちばん奥の蔵に秘密の貸切風呂が…
湯元不忘閣で楽しみなのが、多彩なお風呂めぐり。まずは、こちらに来たら絶対入りたい蔵の中の貸切風呂「蔵湯浴司(くらゆよくす)」をご紹介します。
「蔵湯浴司」の看板のある廊下の扉を開けると、明治初期に建造された「なまこ壁」の蔵が3つ並んでいます。蔵には、伊達家ゆかりの品々が納められているそう。温泉は、突き当りの穀蔵として利用されてきた蔵にあるので、こちらで外履きに履き替えて向かいます。
入口の重厚な扉を開けると、蔵一棟丸ごとが浴室になっていて、なんとも贅沢。余計なものは置かず、淡いライトに照らされて浮かびあがるヒノキ風呂と、脱衣かごがあるのみ。天井の見事な梁組みや土壁の美しさに自然と目が奪われます。
ヒノキ風呂に体を沈めると、聞こえるのはお湯が滔々と満ちる音だけ。立ち上る湯気が高い天井に吸い込まれるように延びていっては消える…。そんな様子を眺めているだけで、心と体がほぐれていくのを感じます。積み重ねられた時に思いを馳せながら、ゆっくりと湯浴みを楽しみましょう。
日帰り入浴は受けていないので、宿泊者だけに許された空間。空いていればいつでも無料で貸切にできるのもうれしい特権です。
かつての共同湯をよみがえらせた大湯も
こちらは1546年に伊達藩主の御殿湯としてつくられた「大湯」です。2006年まで共同浴場として利用されてきましたが、老朽化を理由に閉鎖されていました。歴史ある湯船を風化させてはならないと、古代伝統工法による復元工事で復活。男湯と女湯を分けていた仕切りは取り除かれ、宿泊者専用で男女入れ替え制で楽しむ大浴場になっています。
古い石組みの湯船は、伊達政宗が入浴した450年以上前と変わらぬまま。そう思うと、石の肌触りも優しく感じます。
館内には貸切風呂がもうひとつ。先々代の湯守の名を引き継いだ「亥之輔の湯」は、背の低い潜り戸の先にある小さな露天風呂。ここは少しだけ湯温が熱めになっていて、外の風を感じながら入るのにちょうどよい加減です。
ほかにも、伊達藩一門が利用した男女別の「御殿湯」、優しい自然光が差し込む石造りの「新湯」などのお風呂があります。貸切以外は時間帯で男女が入れ替わるようになっていて、すべてのお風呂に入浴できるようになっています。
仙台の山の幸と海の恵みを目でも楽しく
趣ある旧館の個室でいただく夕食。仙台油麩や仙台黒毛和牛など地の素材の美味しさと、季節の演出で目でも楽しめる会席料理です。伊達の家紋が入ったうつわでいただく椀物や、地元川崎町の評判の蕎麦屋さんから毎日届く十割蕎麦も心に残ります。
食後や湯上がりには、自由に利用できる喫茶室「喫茶去 金泉堂」へ。お茶やコーヒーが自由に飲めるだけでなく、冷えた地酒やひと口サイズの味噌こんにゃく、あんドーナツなども無料で振る舞われています。さりげなくも太っ腹なもてなしがうれしくなりますね。
翌朝は女将の案内で「青根御殿」を見学
藩主専用の湯治場だった「青根御殿」。明治時代に一度焼失しましたが、昭和初期に昔の面影そのままに再建されました。桃山式、総青森ヒバ造りの建物は、お殿様が滞在するにふさわしい風格を漂わせます。
この青根御殿、普段はカギが掛けられて中に入れないのですが、宿泊者限定で朝食後の時間帯に見学会が設けられています。なかなかない機会ですので、宿泊したらぜひ参加しましょう。
女将自らの案内で、建物の装飾や展示された貴重な資料の解説をしてくれます。伊達のお殿様がここでどんなふうに滞在していたのか、興味深い話がいっぱい。狩野派の筆による掛け軸など、伊達家ゆかりの美術品の数々も見応えがあります。
湯元不忘閣は多くの文人に愛された宿でもあります。山本周五郎の小説『樅ノ木は残った』のモデルになったと言われるモミの木も青根御殿から眺めることができます。
お殿様が座る上段の間からは、正面に仙台や松島の海まで見渡せます。自らの領地をこの青根御殿から眺め、なにを思ったのか。歴史に思いを馳せてみるのもよいでしょう。 

read-more

この記事を含むまとめ記事はこちら