実はニンニク入り!? 工場見学に行ってわかった「うなぎパイ」の秘密


2023.02.13

食楽web

食楽web●調査内容:全国にその名を知らしめる「うなぎパイ」。まことしやかに語られる、数多くのトリビアを確かめに、浜松にあるうなぎパイファクトリーに行ってきた 浜松の銘菓「うなぎパイ」。バターが香るサクサクのパイ生地に、縁どられた砂糖の食感と味わいがアクセントとなり、地元・浜松はもちろん東海エリア屈指の銘菓として、全国にその名を知られている人気のお菓子です。 そんな「うなぎパイ」には「実はにんにくが入っている!」など、数多くの秘密があり、有名なお菓子である分、情報が錯綜しているのも事実です。そこで今回は、うなぎパイファクトリーを訪ね、これらの秘密を製造販売元・春華堂担当者に、一挙まとめて聞いてきました!「うなぎパイ」はどうして誕生した? きっかけは「何気ない旅先での会話」浜松にある「うなぎパイ」の製造販売元・春華堂まで行ってきました そもそも「うなぎ」と「パイ」という斬新な組み合わせは一体どのようにして誕生したのでしょうか? それは、旅先での何気ない会話がきっかけだったそうです。「当社の二代目社長が旅先で出会った人から『どこから来たか』と尋ねられた際に『浜松』と答えたところ、相手の方は浜松がどこにあるのかわからなかったそうです。そこで、二代目社長が『浜名湖の近くです』と補足をすると、『ああ、うなぎの美味しいところですよね』と返されたそうです。常々『浜松らしいお菓子』を作りたいと日々考案していた二代目社長は、この会話からヒントを得て、名物『うなぎ』をモチーフにした浜松らしいお菓子をつくろうと考えたそうです」(春華堂・担当者) 今でこそ、全国にその名を知られる「うなぎパイ」ですが、誕生した昭和36年以前には、魚介類をモチーフにした甘いお菓子は皆無。すべてが手探りの中で、二代目社長と当時の職人は試行錯誤を重ね、開発に勤しんだと言います。1枚の「うなぎパイ」の生地は、なんと9千層で成り立っていた!ずっと見ていても飽きないとにかく広い工場 浜松にあるうなぎパイファクトリー。ここでは、「うなぎパイ」の製造工程を見学することができると聞き、担当者に直接話を聞きながら案内してもらいました。 工場での最初の工程は、生地作りから始まるのですが、生地の「仕込み」と「仕上げ」が企業秘密だそうで非常に大事な部分なんだそう。40~50名いる熟練の「うなぎパイ」職人が、手わざで生地を毎日練り上げ、折り重ねているそうです。「原材料の小麦粉、水、バター、そしてうなぎの粉を職人の手わざで練り上げ、折り重ね、約9千もの層にしていきます。誕生時から今に至るまでずっと職人による手わざを継承しており、その日の気温や湿度によって材料の混ぜ方や折り方を調整するのですが、その技術を習得するには『10年の鍛錬が必要』とされています。生地を切る際も、定規などを使わずに目分量でちゃんと均等に切るというのも職人技の一つです。仕上げの工程では砂糖も手計で加え、めんぼうで押込み折り重ねています」(春華堂・担当者) 折り重ねられた生地は、12メートルあるオーブンで約10分かけて焼き上げます。この工程もまた実に繊細で、その日の気温や湿度によって、オーブンの温度を調整するなどし、安定した品質を守り抜いているそうです。あのシンプルで美味しい味わいには、様々な秘密が隠されていました。にんにくを入れたきっかけは浜松餃子インスパイア説!!まさに「うなぎの蒲焼」のごとく塗られていく秘伝のタレ オーブンで焼き上がったところで、ついに秘伝のタレを塗る工程に入ります。噂通り、この秘伝のタレの中には、確かににんにくが入っているとのこと。 前述の「うなぎパイ」開発時、職人が試作において「今ひとつ美味しさに深みが欠ける」と悩んでいたそうです。そこで二代目社長が、当時ブームだった「浜松餃子」をヒントに「にんにくを少し使ってみたらどうか」と提案。果たして、ずっと悩みの種だった「味の深み」が解決したのだそう。「ただし、秘伝のタレのレシピは、工場内の職人の中でも数名しか知らないと言われています。私も『うなぎパイ』ににんにくが入っている、という事実は知っていますが、その細かいレシピなどは知らされていません」(春華堂・担当者)工場で作られる「うなぎパイ」は日産なんと約20万本!焼きあがった「うなぎパイ」を一品一品細かく検品し、規定に満たないものはお徳用として直営店舗限定で販売しているのだそう また、この工場では「うなぎパイ」の生地の仕込みから形成、焼き、検品、梱包ま全てを行っており、日産にして約20万本になるそうです。前述した通り、熟練のうなぎパイ職人たちが生地作り、焼く工程など「商品の肝」となる部分のほとんどを行っています。一方、機械で効率よくできる作業は、オートメーション化するなど、きっちり作業を分けて製造していることがよくわかりました。 圧巻の製造工程が見られる工場を有する「うなぎパイファクトリー」は、この他にも「うなぎパイ」の秘密を学べるミニシアター、「うなぎパイ」を使ったオリジナルスイーツや地元の食材を使ったお食事をいただける「うなぎパイカフェ」などもあり、観光スポットとしても人気です。「夜のお菓子」とは一体……誤解を逆手にとって売上がうなぎのぼり!今や箱入りでお馴染みですが、かつては瓶入りだったとか。「うなぎパイ」に入っているという「にんにくの謎」が解けましたが、さらなる疑問も浮かびました。それは「うなぎパイ」のキャッチフレーズ「夜のお菓子」です。 果たして「夜のお菓子」とは、どんな意味が込められているのでしょうか? 精力増強効果のある「うなぎ」「にんにく」と結びつけ、あらぬ解釈をしてしまう人も多いようですが、実はこのキャッチフレーズ、当時の社長の願いが込められて付けられたものだそうです。「発売当時、浜松は高度経済成長で女性の社会進出が進んだ時代でした。忙しくも家族が揃う夕食の団らんの時間を大切にすることが美徳された時代で、『一家団らんのひとときをうなぎパイを囲んで過ごしてほしい』と願いを込め、その時間を表す『夜のお菓子』と名付けました」(春華堂・担当者) このキャッチフレーズによって、勝手な憶測が一人歩きしてしまうところもあったというわけですが、実際のところ「うなぎパイ」6本分に含まれるビタミンAは、蒲焼100gに含まれる栄養分に相当し、「元気回復」「夏バテ対策」「視力保持」などの効果も期待できると言われており、栄養価の高いお菓子としての一面も持っているそうです。 また、パッケージもあらぬ解釈を逆手にとって当時の栄養ドリンクカラーであった「赤」「黒」「黄色」の3色を基調としたものに切り替えることで、売り上げが「うなぎのぼり」に伸びていったそうです。デフォルトの「うなぎパイ」だけでない、ハイグレード商品もあった上から順番に「うなぎパイV.S.O.P.」「うなぎパイナッツ入り」「うなぎパイ」 近年ではデフォルトの「うなぎパイ」に加え、さらに大人向けの「真夜中のお菓子」と謳った「うなぎパイV.S.O.P.」も登場。高級ブランデーとマカダミアナッツを使用した最高級パイで、ほのかに香るブランデーの香りがたまりません。 ちなみに”V.S.O.P.”とはブランデーの等級を表す言葉で、Very(非常に)Superior(優秀な)Old(古い)Pale(透き通った)という意味。 また、他にもアーモンドやナッツ、セサミなどをふんだんに使った「うなぎパイナッツ入り」、食べやすいミニサイズではちみつとナッツが入った「うなぎパイ ミニ」など、様々なニーズに応じた、バリエーションがあります。調査結果:「うなぎパイ」には確かににんにくが入っていた!そして、1枚のパイにはいくつもの秘密が隠されていた!「うなぎパイ」ファンなら持っておきたいうなぎパイファクトリーで見つけたキャリーケース デフォルトの「うなぎパイ」は、ほど良い甘さでくどくない一方、どういうわけかヤミツキ感がある印象です。これに対し、高級ラインの「うなぎパイV.S.O.P.」は、さらにその味わいをグッと奥深くしており、より大人の味わいになっていました。また、「うなぎパイナッツ入り」は、ナッツの食感が楽しく、デフォルトよりもさらに香ばしさを増した味わい。 いずれも一口食べるたびにクセになる味わいですが、この美味しさは、ここまでに紹介したような、いくつものトリビアが重なりあい成り立っていることが判明。うなぎパイファクトリーでは、長年愛されている浜松銘菓の知られざる秘密を知ることができました。試行錯誤の歴史と職人の手わざが作りあげる「うなぎパイ」で、楽しい夜のひと時を過ごしてみてはいかがでしょうか。(撮影・文◎長岡ユミ・松田義人)●DATAうなぎパイファクトリー住:静岡県浜松市西区大久保町748-51TEL:053-482-1765営:10:00~17:30https://www.unagipai-factory.jp/ 

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うなぎパイファクトリー
place
静岡県浜松市西区大久保町748-51
phone
0534821765
opening-hour
10:00-17:30
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