淡麗系ラーメンの超新星が環七沿いに登場!ラーメン官僚も頬が落ちた『らぁめん ご恩』の絶品ラーメンとは?


2022.05.03

食楽web

食楽web 今回ご紹介するのは、2022年3月6日に環七(環状七号線)沿いにオープンした『らぁめん ご恩』。正確には、浅草橋の居酒屋『あいちゃん』のランチタイムを間借りし、2021年7月12日に営業を開始した『らぁめん ご恩』が独立し、路面店として新規開業に至ったものです。 間借り営業時代から、『ご恩』で店主・大澤剛氏が提供するラーメンは大好評。今回の独立店舗についても、早くも数多くのラーメンマニアが足を運び、「間借り時代も相当なものだったが、それにも増して味に磨きがかかっている」という主旨の感想が多く呟かれていました。 舌が肥えたマニアたちが揃いも揃って賛辞を贈る1杯とは、一体どのようなものなのか…? 激しく興味をそそられ、私も新規開業から1週間後のタイミングで、食べに行ってまいりました。白い壁に褐色の扉まわり。看板は、麺を箸で持ち上げた状態のラーメンのイラストの下に、『らぁめん ご恩』の屋号。ソフトで上品な外観は、「車内からでもラーメン店と分かるかどうか」に重きが置かれていた往年の環七人気店とは一線を画す ロケーションは、野方駅(西武新宿線)と高円寺駅(JR総武・中央線)の中間地点より、わずかに野方駅寄り。大澤店主が「昔から、ここで店を持つことが憧れだった」と言う環七(環状七号線)沿いに佇む、白を基調とした店舗が『らぁめん ご恩』です。 野方駅自体が、環七通りからほど近いため、同駅からのアクセスがシンプルかつ明快。駅から環七通りに出るまで2分程度歩き、環七に出たら高円寺方面に向かってひたすら真っすぐ(5分強)行けば、やがて道の右手に『らぁめん ご恩』が出現します。店舗内観。女性客、ファミリー客など、幅広い層のお客さんにラーメンを食べてもらいたいという大澤店主の思想がにじみ出ています 同店のすぐ近くには名店『十八番(おはこ)』があり、野方側からアプローチするなら、格好の目印になるはずです。そのほか、『ご恩』の近傍には、全国的な知名度を誇る有名店『野方ホープ』の本店も鎮座。空前のラーメンブームが花咲いた80~90年代ほどの盛り上がりはないものの、やはり環七沿いは都内の花形エリアのひとつ。全国レベルの店が当たり前のように佇む光景を眺めていると、環七に憧れを抱く大澤店主の気持ちも理解できる気がしました。 さて、私は営業開始の40分ほど前に店頭へ到着。それから10分後にはお客さんが続々と並び始め、営業開始直前の段階で、行列客の数は10名以上に及んでいました。このコラムが世に出る頃には、私が足を運んだ時点よりさらに知名度が上がり、行列が延びている可能性があるので、時間に余裕を持って来訪するのがオススメです。メニュー表。券売機はなく、お品書きを見て口頭で注文する方式 現在、『らぁめん ご恩』で提供している麺メニューは、「らぁめん(塩)」「らぁめん(醤油)」「四川担々麺」の3種類。また、サイドメニューとして「チャーハン」「半チャーハン」「ねぎチャーシュー丼」「鶏ねぎ塩丼」も提供。ハーフサイズのチャーハンを用意してくれているのは、ありがたい心遣いですね。 ちなみに、私と同ロットのお客さんたちが注文していたのは、おおむね「特製ご恩らぁめん(塩)」または、「らぁめん(塩)とサイドメニュー」といったところ。しかし「塩」「醤油」ともに気になり、どちらか一方を選択する勇気が持てなかった私は「塩」と「醤油」の両方を注文。1人1杯制(※)であれば、1杯食べてからもう一度列の最後尾に並び直すつもりでしたが、オーダーはすんなり通って、1回で2杯提供してもらえることに。「連食していただいても全く構いませんよ」と、店主から優しいお言葉をいただきましたが、この場合、2杯とも同じタイミングで提供されます。これから『ご恩』に行って連食しようとお考えの人は、2杯とも美味しく食べられるかを熟慮の上、2杯頼むか1杯ずつ頼むかを決めるのがオススメです。(※)1人1杯制:行列客が少しでも早く着席しラーメンが食べられるよう、 客1人当たりのラーメン提供杯数を1杯に限ること。その場合、2杯以上のラーメンを食べたい人は1杯目を食べた後、再び行列の最後尾に並び直し、改めて2杯目を注文することになる店主の人柄と丁寧な仕事ぶりが伝わる美しい「らぁめん」「らぁめん(塩)」850円 さて、注文した「らぁめん」の完成を待ちます。大澤店主は『ご恩』の前に、小金井市で『無坊』という、当時からマニアだった人で知らない者はいない名店を立ち上げ、店主を務めていた経験がある、腕利きのラーメン職人。カウンター越しに見える店主の所作も堂に入ったもので、1杯1杯、しっかりと丁寧に手順を踏みながら創られていることが分かります。 大澤店主の手際の良さに心を奪われているうちに、「塩」と「醤油」が完成。奥様の手によって、うやうやしく提供されました。「塩」「醤油」ともに、スープが透き通った清湯タイプ。 トッピングは、チャーシュー(豚肩ロース&鶏ムネ肉)、メンマ、ネギのみと、至ってシンプル。チャーシュー、メンマの形状は美しく、色合いも艶やか。一定以上の経験を重ねてきたラーメンマニアであれば、提供されたラーメンを見ただけで、店主の仕事ぶりが極めて緻密かつ真摯であることが分かると思います。 味も、ビジュアルから伝わるとおり。いや、ビジュアル以上にハイレベルです。「スープの素材ですが、お肉屋さんにお願いして、当日朝にさばいた鶏の手羽先を毎日取りに行っています。加えて、鶏の持ち味である五感に訴えかける滋味を味わい尽くしてもらいたいので、鶏肉も使います。それら以外の素材は、鶏の邪魔になると考え、一切使いません」(大澤店主・以下同)手間暇かけて作られた美しいスープ 入手した鶏素材を丹念に6時間かけて炊き上げ、その後、急速冷凍。冷凍することで風味の幅が拡がり、奥行きも格段に増幅するそうです。「今はあまりお金がかけられない状況で、ブランド鶏や地鶏は高価なので使えませんが、代わりに、手間だけは惜しまずかけようと、この店を開業する際に決意しました」 豊満なうま味がじわりと味蕾に沁み入り、芳醇な薫りがふわりと鼻腔をくすぐるスープは、すする度に頬が落ちそうになるほど。一度、レンゲを動かし始めたら最後、飲み干すまで、その手を止めることができなくなる、逸品中の逸品です。左が塩ダレ、右が醤油ダレ スープだけではありません。タレも、大澤店主の経験とこだわりが余すところなく詰め込まれたものです。「塩ダレは、『無坊』時代の塩ダレをブラッシュアップしたものです。より深みのある風味を出すため、ブレンドする塩の種類を増やしています」と大澤店主が語るとおり、モンゴル岩塩、沖縄、赤穂など産地を異にする塩を絶妙なバランス感覚でブレンドし、昆布、干し海老で風味を整えた塩ダレは、スープに潜む「鶏」の存在感を際立たせ、浮き彫りにする役割を全うしています。「らぁめん(醤油)」850円 また、大澤店主が大の醤油ラーメン好きで、開発に当たり、塩に勝るとも劣らぬほどの力を入れたという醤油ダレは、柔和な甘みと気品のあるうま味を合わせ持ち、舌上で、スープ中の鶏とピタリと一体化します。「醤油ダレは、都内唯一の木桶仕込みの醤油蔵元であるあきる野市の『近藤醸造』の『キッコーゴ醤油』を使っています。東京の醤油を使うことにこだわった結果、ようやく探し出した醸造所なんですよ」。 鶏を引き立てる「塩」と、鶏に寄り添う「醤油」。タレだけで、ここまでベクトルが異なる味を創り出す店主の技量の高さ、素材に対する見識の深さに、脱帽するしかありません。歯切れの良い特徴のある麺がラーメンの味をより美味しくさせている 麺は、1932年に豊島区池袋で創業した老舗『松本製麺所』のもの。「以前、あるお店でラーメンを食べたとき、自分の店でも使いたい! と強く興味を惹かれた麺と出合いまして。気になって色々と調べてみたところ、『松本製麺所』と判明、そちらの麺を使っています」。同製麺所の麺は、店主にとってまさに理想的なものだったとのこと。 淡麗スープに合わせる麺としては、やや太めのストレート。ツルンと滑らかな触感と、ザクリと歯切れの良い噛み心地とが、高い次元で共存。スープの持ち味を損なわず、それでいて麺自体にも確固とした存在感がある傑作です。 まず「塩」からいただき、次に「醤油」。気が付けば、2杯ともペロリと完食していました。「この『ご恩』という屋号は、これまでお世話になった人達やお客様に、丹精込めた1杯を提供することで、恩を返したいとの意味を込めたもの。これからも初心を忘れずに、一人ひとりのお客様に真心を尽くした1杯を提供していきたいと思います」と大澤店主。 テーブル席が用意され、接客も実にきめ細やか。お子様連れのファミリー客にも、自信を持ってオススメできる優良店。未訪の方はぜひ万難を排して足を運んでもらえればと思います。大澤 剛氏のプロフィール・2002年に小金井市に創業し、多磨エリア屈指の実力店として名を馳せた『無坊』の初代店主。・2010年に『無坊』を閉め(※)、大澤氏自身は飲食業から離れるが、ラーメンとは関係のない別の仕事に就いているときに奥様と出逢い、「再びラーメン職人の道に戻り、自分が作ったラーメンでお客様に喜んでもらうことで、妻を幸せにしたい」と一念発起する。・2021年7月、別の飲食店が営業していない時間帯を活用した「シェアレストラン」のシステムを活用し、浅草橋に『ご恩』を間借りオープン。・今般、店主憧れの環七通り沿いに空き物件が発生したことを知り、2022年3月、実店舗を開業。店主の様々な人生経験が凝縮された1杯は、味覚のみならず心をも潤す、円熟味のある味わいだ。(※)『無坊』自体は、その後別経営で復活。さらに紆余曲折があり、現在は『担々麺 無坊』という屋号を冠した担々麺専門店となっている。●SHOP INFO店名:らぁめん ご恩(らぁめんごおん)住:東京都中野区大和町1-13-7TEL:非公開営:11:00~15:00休:火曜、第2・4水曜●著者プロフィール田中一明「フリークを超越した「超・ラーメンフリーク」として、自他ともに認める存在。ラーメンの探求をライフワークとし、新店の開拓、知られざる良店の発掘から、地元に根付いた実力店の紹介に至るまで、ラーメンの魅力を、多面的な角度から紹介。「アウトプットは、着実なインプットの土台があってこそ説得力を持つ」という信条から、年間700杯を超えるラーメンを、エリアを問わず実食。47都道府県のラーメン店を制覇し、現在は各市町村に根付く優良店を精力的に発掘中。 

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らぁめん ご恩
place
東京都中野区大和町1-13-7
opening-hour
11:00-15:00※売り切れ次第終…
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