WITH HARAJUKU HALLの「Chocomoo EXHIBITION -OUR SECRET PARTY」をレポート ラブとピースの宝箱を開け


2020.09.06

OMOHARAREAL

2020年8月某日、WITH HARAJUKU HALLにて9月28日(月)まで開催中の「Chocomoo EXHIBITION -OUR SECRET PARTY- Supported by WITH HARAJUKU」のオープニングイベントに潜入! アーティスト本人によるライブペイント・ゲストによる生演奏を含む、盛りだくさんな “パーティー” の様子をレポートする。   展示風景より     Who’s Chocomoo?   Chocomoo(チョコムー)氏は京都出身のイラストレーター。モノトーンで描かれた、ポップでストリートな雰囲気のイラストを見たことがある人も多いかもしれない。ミュージシャンAIのアルバムジャケットを手がけたり、森永社のチョコレート「DARS」のパッケージデザインや、イタリアの自動車メーカーFIAT社とのコラボなど、活躍の幅はかなり広い。まさに、今をときめくイラストレーターのひとりと言えるだろう。  ちなみに……気になる方のために先に解説しておくと、Chocomooというペンネームはチョコレート飲料に由来しているとのこと。なんとも、とっつきやすい。   今回はChocomoo氏にとって過去最大規模となる個展で、新作を多く含める全73点が一挙に公開されるチャンス。しかも会場は、2020年6月にオープンしたばかりの「WITH HARAJUKU(ウィズ原宿)」だ。話題の場所×気鋭のイラストレーターの展覧会、これはテンションが上がる。   会場となるホールは、複合商業施設WITH HARAJUKUの3階に。アートの展覧会ほか、展示会やイベントなども開催される多目的空間だ。     パーティーへようこそ   エントランスには、開催祝いとして寄せられた、企業や芸能人らの名入れ提灯・うちわが並んでいる。静かにアートを鑑賞する展覧会というより、“パーティー” や “祭り” を連想させる、ノリのいい幕開けだ。     会場内に足を踏み入れると、まず開放感に驚く。作品を展示する屏風のようなパネルは最小限の木材で構成され、視線も空気もよく通る。換気を促すための設えだと思われるが、床が砂のようなブラウンなのも相まって、まるでビーチハウスのようなリラックスしたムードだ。   展示は4つのチャプター+その他で構成されている。作品の下部・パネルの骨組みにチャプタータイトルが記されているので、鑑賞のヒントにしてみよう。    「THAT’S A PARTY」は2019年韓国での個展に出品された作品群だ。画面には白黒のポップなモチーフがリズミカルに配置されている。前向きなメッセージがダイレクトに散りばめられ、言葉たちが読むより先に “入ってくる” ような印象を受ける。   色彩も構図も一転して、こちらは本展のために制作された新作のチャプター、「DIARY OF A MOMENT」。Chocomoo氏のトレードマークであるモノクロの作風から飛翔し、原色を使った新しい表現に挑んでいる。イメージを即興的にパッチワークした画面とは異なり、より具体的なワンシーンを描いているのが特徴だ。絵画として計算し尽くされた構図が際立ち、見応えのあるチャプターだった。   会場には、イラストに囲まれて撮影できるフォトスポットが大々的に用意されている(せっかくならモノトーンのファッションで行けばよかったと後悔……)。そして、奥の壁に掲げられた作品は《LIVE PAINT》。余白の残るキャンバスに取材陣が注目する中、Chocomoo氏が登場。場内にポップな洋楽が流れ出した。     揺れるリズムで伝えたいこと   ここでは会期中にアーティスト本人によってライブペイントが行われ、それによって作品が完成するのだそう。登場日を定めずゲリラ的に現れるそうなので、遭遇できたらかなりラッキー!     創作時は必ず音楽と一緒に描くというChocomoo氏。ビートに合わせるようにマジックを滑らせる手元から目が離せない。目の前で塗られた「WE LOVE YOU」の文字の黒は、しっとりと艶やかだった。   描かれた文字も、鉛筆も、グラスのネックも、線がゆらゆらと揺れているのがChocomoo作品の特徴のひとつ。それはアーティスト本人の言葉を借りると、音楽に乗って “踊っている” のだそう。   やがてマイクを持ったChocomoo氏が、ひとつの作品を取り上げて思いを語ってくれた。 本展の中でも最も大きいサイズの作品、《THANK YOU》だ。   《THANK YOU》(2020年)   「(この作品は)こういう状況になっちゃって、自粛期間中に制作した作品でもあります。一番のテーマは、医療関係の方や、皆さんの前に立って働いてくださった方に感謝の気持ちを伝えたいなっていうところから始まって。ダイレクトに描くのではなくて、“お礼として音楽のフリーパーティーが開催される” っていうイメージで仕上げました。」   描かれているのはその(想像上の)パーティーのポスター、木、地球などのモチーフだ。ポスターが画中画のような奥行きを生んでいて面白い。Chocomoo氏は「今の状況を反映したものにできたかな、と思っています」と、軽くはにかみながら締めくくった。   横書きに慣れ親しんだクセで、鑑賞者の視線は自然と左上→右下へと流れていく。「FOR YOU」で始まったメッセージは「EVERYTHING WILL BE ALL RIGHT」で結ばれる。足跡が向かう扉の向こうに待っているのはPEACEのマークだ。それは誰もが今、とても言ってほしかった言葉だし、同時に、大切な誰かに言いたい言葉でもあるのではないだろうか。   白黒のキャンバスと鍵盤と   残るチャプターは「COLLABORATION WITH BOBBY GROSSMAN」と「MUSIC IS LOVE」。日本初公開となる「COLLABORATION WITH BOBBY GROSSMAN」の作品群は写真家ボビー・グロスマン氏とのコラボレーションで、著名人のモノクロ肖像写真の上に、各人物に相応しいイラストを描いたものだ(アンディ・ウォーホル氏のポートレートには、もちろんスープ缶のイラストが踊っている)。この一角のみ写真撮影は不可なので、実際に会場で出会うのを楽しみにしてほしい。   「MUSIC IS LOVE」は、Chocomoo氏にとってかけがえのないものである “音楽”、そしてそれが与えてくれるものを表現したシリーズ。影響を受けた音楽のレコードジャケットが具体的に描かれ、一見して音楽への深い愛情を感じることができる。音楽好きなら「あれか!」とピンと来たり、共感することがあるかもしれない。   この作品群に限らず、「MUSIC IS LOVE」は氏のアートすべてに通ずるテーマだという。それを実感させてくれる作品が、会場の中央で存在感を放つ《LovePiano 5号機》だ。   《LovePiano 5号機》   LovePianoは、YAMAHA社が製作しているフルペイントを施したピアノのシリーズだ。期間限定で公共空間に設置され、誰でも自由に弾くことができる。本展では、Chocomoo氏が手がけた鮮やかなイエローの5号機が展示される。右手に用意されているのは、 LovePiano用の手指消毒剤。足元のペダルを踏み込むと鍵盤が消毒剤のポンプを押す、遊びゴコロのある造りだ。     展覧会オープニングを記念し、ゲストとしてピアニスト・作曲家のよみぃ氏が登場。よみぃ氏はチャンネル登録者数約106万人の人気Youtuberで、これまでにすべてのLovePianoを演奏してきている。マイケル・ジャクソン「Heal the World」など2曲がその場で披露された。   ピアノを埋め尽くすのは「I want to say thank you」「Love what you do」といったポジティブな言葉、揺れる音符、微笑むハートだ。そして奥の大スクリーンでは、Chocomoo氏がイラストを描く姿がちょうど重なる。弾く手と描く手がシンクロし、手元から ♪ や ♡ が溢れて広がっていくのが見えるような気がした。    物販コーナーには、ライブのツアーグッズを思わせるオリジナルグッズたちがズラリ。特に、会場スタッフたちも身につけている「洗えるマスク」が話題になりそうだ。カラフルな総柄ものから、ワンポイントデザインのシンプルなものまで揃っていて可愛い。不便なはずのマスクすら「どの柄にしようかなぁ」とワクワクさせるとは……恐るべし、Chocomooパワー。  100万回のポジティブを君に   Chocomoo作品は構図の妙もさることながら、画面の中に踊る “言葉” の力が印象的だ。フォントとして可愛いだけではなく、なぜか書かれていることを無視できないのだ。インタビューによると、氏の原点には書道があり、モノクロへのこだわりもそこに由来しているという。この魅力は、文字を生かす書道の間合いと、止まる事のないミュージックへの愛に裏打ちされているのだろう。   正直、最初は少しだけ気恥ずかしかった。作品のどれを取っても、I love youやThank youなど、愛情に満ちたポジティブな言葉が画面を占めている。けれど「わかった、もういい……」といくら言ってみても、Chocomoo作品は優しさと感謝の手を緩めない。なぜならそれは、どこまでいっても、きっと本当に大切なことだからだ。   展示会場より。左手前の作品タイトルは《I HATE YOU》と珍しくネガティブだが、よく見れば「HATE」の文字は「LOVE」で出来ていた。乙女心である。   ただ1回のポジティブと、100回のポジティブは重みが違う。やがてスカしていた心は捕まり、もう素直になるしかない。こんなにタフなエールをくれて、ありがとうという思いが最後に残るのだ。   会場の外に出ると、深呼吸したくなるようなウッドデッキが広がっている。愛すべき原宿の空だ。LOVEを心身いっぱいに取り込んだ後は、エスカレーターで街の活気の中へと降りていこう。   「Chocomoo EXHIBITION -OUR SECRET PARTY- Supported by WITH HARAJUKU」は9月28日(月)まで、WITH HARAJUKU HALLにて開催される。これは楽しんだもの勝ちのパーティーだ。どなた様も肩肘張らず……この夏、線と一緒にゆらゆらと揺れてみてはどうだろうか。   Text:Mika Kosugi   ■概要Chocomoo EXHIBITION -OUR SECRET PARTY- Supported by WITH HARAJUKU開催日時:2020年8月20日(木)~9月28日(月)開催時間:10:00~19:00※入場は閉館の30分前まで※会期中無休開催場所:WITH HARAJUKU HALL住所:東京都渋谷区神宮前1丁目14番30号3階 入場料<前売券> 一般1,000円、高校生・専門学生・大学生800円、中学生600円(税込)販売期間:2020年6月20日(土)10:00~8月19日(水)23:59<当日券> 一般1,200円、高校生・専門学生・大学生1,000円、中学生800円(税込)販売期間:2020年8月20日(木)0:00~9月28日(月)17:00※電子チケットは9月28日(月)18:00まで※小学生以下のお客様のご入場は無料となります。※学生券をご購入頂きました方は入場時に学生証をご提示ください。  

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WITH HARAJUKU HALL
place
東京都渋谷区神宮前1丁目14-30
phone
0358431791
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